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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

距骨骨軟骨損傷

Osteochondral lesion of the talus

別名
距骨骨軟骨病変OLT
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 32:足関節捻挫の診察・治療と足関節骨折の合併症解剖学 6.5:下肢:足関節と足
鑑別疾患
足根洞症候群腓骨筋腱脱臼・断裂
合併症
変形性足関節症
関連疾患
離断性骨軟骨炎
症状
疼痛腫脹
元疾患
足関節捻挫慢性足関節不安定症

🧠 全体像:は、のあとに痛みが引かない患者の主要な原因である。診断が遅れる理由は2つある。ひとつは急性期に隠れること——靱帯損傷の腫脹と痛みのほうが強く、その陰で見過ごされる。もうひとつは単純X線に写らないことが多いこと——のでも側面像でも所見が出ないか、がわずかに見えるだけのことがある1。だから「の症状が4〜6週で消えない」という時間の物差しが診断の入口になり、確認にはかが要る。そしてもうひとつ、痛みは軟骨からではなくから来る——この理解が、治療が「軟骨を貼る」だけの話にならない理由を説明する。

病態

は表面の60%超が軟骨で覆われる骨で2、そのと直下のがまとめて損傷したものがである。

外傷が主因だが全例ではない

患者のほぼ80%に外傷の既往がある2。外傷歴の比率は部位で異なり、外側病変では93〜98%、内側病変では61〜70%である1。つまり外側はの色合いが濃く、内側には非(虚血・など)の関与が相対的に大きい。10%は両側性である1。

なぜ痛むのか — 軟骨は痛みを出さない

⭐ には神経がない。痛みはから来る。 は適合性が高く、荷重するとされた軟骨が水をしたへ押し込む。これが局所の・高圧を生み、局所のを起こして緩徐にが育つ。歩行のたびに繰り返されるこの高い液圧が、高度に神経支配されたを刺激することが疼痛の主因と考えられている1。

💡 この機序が治療の形を決めている。 痛みの発生源がなら、治療も軟骨表面だけを扱っても足りない。まで穿孔して血流を呼び込む、をしてで埋める操作、軟骨が保たれている症例に裏側から穴を開けるが並ぶのはこのためである。

発生機序と部位

実験では、での強いでの外側縁がに押し付けられ、されて外側病変が生じた。内側病変は、にの軽度・・を加えることで再現された1。

外側病変 内側病変
形態 浅い楕円形 深い椀状
機転 捻転による圧迫と
外傷歴 93〜98% 61〜70%
大きさ・深さ 小さく浅い 面積が広く深い

(形態・機転・外傷歴は1、大きさと深さの比較は3による。)

⚠️ 「前外側と後内側」という古典的な教えは、現代の所見と合わない。 従来は大多数の病変が前外側または後内側に局在すると記述されてきた1。しかしを面積の等しい3×3の9領域に分けて424例428足のを検討した研究では、前後方向で最も多いのは中央()の80%で、前1/3は6%・後1/3は14%にすぎず、後内側と前外側の病変はまれにしか見つからなかった。最多はzone 4(内側・中央)の53%、次いでzone 6(外側・中央)の26%だった3。内側優位(62%対34%)と、内側病変のほうが広く深いという点は古典的記述と一致する3。この9領域は現在も病変の位置を記述する標準として用いられている2。

臨床像

⚠️ 急性期には靱帯損傷の陰に隠れる。 受傷直後は靱帯損傷による腫脹と疼痛が優勢で、はしばしば認識されない1。

⭐ 「4〜6週」が診断の物差しである。 靱帯損傷の症状が消えたあとも持続する腫脹・可動域制限・が残り、症状が4〜6週で消退しなければを疑う1。

症状 意味
荷重時・活動中・活動後の深部の疼痛 慢性例の典型。持続性または間欠性
・引っかかり 遊離した骨片の症状
反復する・不安定感 の併存
深部の腫脹・圧痛 病変側(内側または外側)の局所に出ることがある

⚠️ 診察所見が乏しいことを「異常なし」と読まない。 慢性例の多くは可動域が正常で、明らかな圧痛も腫脹も認めない1。身体所見の乏しさは除外の根拠にならない。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle sprain'>足関節捻挫</span>・骨折の後<br>荷重時の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep pain'>深部痛</span>が続く"] --> B["4〜6週を過ぎても症状が残る"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weight-bearing'>荷重位</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle joint'>足関節</span>単純X線<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mortise view'>mortise像</span>・側面像"]
    C --> D["所見なし、または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lucency'>透亮像</span>のみ"]
    C --> E["大きな病変なら陽性のことがある"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で病変と骨髄の反応、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligament'>靱帯</span>・腱の併存損傷を評価"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subchondral cyst'>軟骨下嚢腫</span>の大きさと骨性形態を評価"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthroscopy'>関節鏡</span>で直接観察し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligament'>靱帯</span>の安定性も同時に評価"]
  • 単純X線:のと側面像が基本2。所見が出ないかのみのことが多く、大きな病変では初回X線が陽性になりうる1。
  • MRI:多くの症例で追加し、病変の活動性と、併存する・腱損傷を評価する2。⚠️ のため病変が過大評価されやすい——での平均病変面積を0.85 cm²とする報告に対し、van Dijkらがで実測した連続50例では0.65 cm²だった1。
  • CT:の大きさなど骨性病変のに優れるが、軟骨の・病変の活動性・軟部組織の情報は乏しい2。
  • :関節全体を直視し、で病変を評価し、同時にの安定性も試験できるため、の決定には最も情報量が多い2。

分類

⚠️ 同じ病変でも「どの画像で見た分類か」で段階の意味が変わる。 単純X線・・それぞれに対応する分類が並存している。

Berndt and Harty分類(単純X線、1959年)2

Stage 所見
1 のの圧潰
2 の部分剥離
3 転位のない完全剥離(骨片は元の窪みに留まる)
4 転位した骨片

Hepple分類()2

Stage 所見
1 X線では変化がなく、で軟骨の損傷を認める
2 軟骨の剥離を伴わない骨折
3 転位のない骨片(Berndt and Hartyのstage 3に対応)
4 転位した骨片(同stage 4に対応)

このほか、Ferkelらがに読み替えた分類、Raikinらの9領域(位置の記述)がある2。

💡 Hepple分類のstage 1が「X線では正常」と明記していることに意味がある。 分類そのものが「単純X線では捉えられない段階が存在する」と宣言しており、これがX線陰性でへ進むという診療手順の根拠になっている。

治療

まず保存治療

偶発的に見つかった病変と、転位のない軟骨病変の症候例は保存治療の対象で、・、後足部の・があればを用いる。手術を考える前に少なくとも3か月の保存治療を勧める2。

手術

手技 位置づけ
(・ドリリング) 今日の手術治療の最も一般的な第一選択。不安定な軟骨を切除し、出血する骨までして穿孔する。があればしてで埋める2
に病変があるが表面のが保たれている症例。軟骨を温存したまま病変を治療する2
骨片の直接固定 骨片の直径10 mm以上・深さ3 mm以上が目安。前の急性転位例ではまず固定を考える2
・・AMIC の適応を超える大きな病変や例

⚠️ が作るのはであってではない。 得られる修復組織は本来のより力学的・生物学的に劣り、大きな病変ではに破綻しうる。この性質から適応のにが置かれ、1.07〜1.5 cm²という値が挙げられている2。

⚠️ 短期成績が良くても長期は別である。 後5年の時点で35%の悪化が示されている(Ferkelらの報告として総説が引用する数値)2。一方で、術後2週での開始が遅延荷重に劣らないと報告されており、期間を延ばすことが成績を良くするわけではない2。

経過

は概して良性で、38例の長期追跡で10年後に画像上の進行を認めたのは1例のみだった1。⚠️ 「無症状の病変を見つけたら手術」ではない——症状と機能で適応を決める。ただしや後足部のが残っているとへの負荷が偏り続けるため、不安定性とアライメントを同時に扱わないと病変だけ治しても再発する。

まとめ

  • は後に痛みが遷延する症例の主要原因で、急性期は靱帯損傷の陰に隠れる。
  • 症状が4〜6週で消退しなければ疑う。単純X線は所見が出ないかのみのことが多く、(病変の活動性・併存損傷)と(・骨性形態)で確認する。はで病変を過大評価しやすい。
  • 痛みは軟骨ではなく、反復する高い液圧で刺激されるから生じる。はの結果として緩徐に育つ。
  • 内側病変は深く広く外傷歴の関与が相対的に小さい、外側病変は浅く性で外傷歴がほぼ必発、という対比は成り立つ。一方「前外側と後内側」という古典的な部位分布は研究と合わず、実際は中央()が80%、最多は内側・中央のzone 4である。
  • 分類はBerndt and Harty(X線)・Ferkel()・Hepple()が並存する。Hepple分類のstage 1は「X線正常でのみ陽性」で、X線陰性例にへ進む根拠になる。
  • 転位のない症候例は少なくとも3か月の保存治療を先に行う。手術の第一選択はだが、得られるのはで、適応サイズの目安は1.07〜1.5 cm²、5年で35%が悪化する。
  • は概して良性なので、無症状の病変を見つけただけで手術しない。とを同時に扱う。

出典

  1. 1.Osteochondral defects in the ankle: why painful?(Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy・2010)距骨の骨軟骨欠損は治癒して無症状のまま経過することも、荷重時の深部痛と軟骨下嚢腫の形成へ進むこともあること、疼痛は軟骨病変そのものからではなく、歩行時の反復する高い液圧が軟骨欠損の下にある高度に神経支配された軟骨下骨を刺激することで生じると考えられること、足関節は適合性が高く荷重時に圧縮された軟骨が水を微小骨折した軟骨下骨へ押し込み局所の高流量・高圧をもたらして局所的な骨溶解と緩徐な軟骨下嚢腫形成を説明できること、外傷が最も重要な病因で外側病変では93〜98%・内側病変では61〜70%に外傷歴があること、10%が両側性であること、大多数の病変が前外側または後内側の距骨滑車に局在するとされ外側病変は浅い楕円形でせん断機転により内側病変は深い椀状で捻転による圧迫と軸圧を示すこと、急性期には靱帯損傷の腫脹と疼痛が優勢なため見逃されやすく荷重位のmortise像と側面像では所見が出ないか透亮像のみのことがあること、症状が4〜6週で消退しなければ骨軟骨欠損を疑うべきこと、ロッキングと引っかかりは遊離した骨片の症状であること、慢性例は活動中・活動後の持続性または間欠性の深部痛を呈し多くは可動域正常で明らかな圧痛も腫脹も認めないこと、MRIでの平均病変面積0.85 cm²は他文献からの引用値であり、著者らがCTで実測した連続50例の平均は0.65 cm²(0.5〜0.8 cm²)で、骨髄浮腫のためMRIでは病変が過大評価されやすいと述べていること、自然経過は概して良性で38例中10年後に画像上の進行を認めたのは1例のみであったこと閲覧 2026-09-02
  2. 2.Osteochondral lesion of the talus: still a problem?(EFORT Open Reviews・2022)距骨の60%超が軟骨で覆われること、距骨骨軟骨損傷の患者のほぼ80%に足関節外傷の既往があること、単純X線に基づくBerndt and Harty分類がstage 1=軟骨下骨の骨梁の圧潰、stage 2=骨軟骨片の部分剥離、stage 3=転位のない完全剥離、stage 4=転位した骨片であること、FerkelらがCTに、HeppleらがMRIに読み替えた分類を作り、Hepple分類ではstage 1がX線では変化なくMRIで軟骨の損傷を認めるもの、stage 2が軟骨の剥離を伴わない軟骨下骨骨折、stage 3・4がBerndt and Hartyの非転位・転位骨片に対応すること、Raikinらの9領域格子で中央内側が最も多いこと、偶発的に見つかった病変と転位のない軟骨病変の症候例は保存治療の対象で活動制限・部分荷重・後足部内反外反に対する矯正インソールを行うこと、症候性で非転位の病変には手術を考える前に少なくとも3か月の保存治療を勧めること、骨髄刺激(微小骨折・逆行性ドリリング)が今日の手術治療の最も一般的な第一選択であること、骨片の直接固定は骨片の直径10 mm以上・深さ3 mm以上が目安であること、骨髄刺激で得られる線維軟骨は本来の硝子軟骨より力学的・生物学的に劣り大きな病変では経時的に破綻しうるため適応の病変サイズのカットオフが1.07〜1.5 cm²とされること、術後2週での全荷重開始が遅延荷重に劣らないと報告されたこと、骨髄刺激後5年で35%の悪化が示されたこと(本総説は総説であり、次の数値はいずれも本総説自身の報告ではなく他文献からの引用である:患者の38%に足関節靱帯弛緩・足関節不安定症の患者の39%に骨軟骨損傷、骨髄刺激後5年で35%の悪化=Ferkelら、適応サイズのカットオフ1.07〜1.5 cm²、直接固定の目安である直径10 mm・深さ3 mm、術後2週での全荷重開始が遅延荷重に劣らないこと)閲覧 2026-09-02
  3. 3.Osteochondral lesions of the talus: localization and morphologic data from 424 patients using a novel anatomical grid scheme(Foot & Ankle International・2007)距骨滑車関節面を面積の等しい3×3の9領域に分けた格子で424例428足のMRIを検討したところ、内側滑車の病変が269件(62%)と外側の143件(34%)より多かったこと、前後方向では中央(赤道部)が345件(80%)と圧倒的に多く前1/3は25件(6%)・後1/3は58件(14%)にとどまったこと、最多はzone 4(内側・中央)の227件(53%)で次いでzone 6(外側・中央)の110件(26%)であったこと、内側1/3の病変は外側より面積が広く深かったこと、後内側と前外側の病変はまれにしか認められなかったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02