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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

距骨無腐性壊死

Avascular necrosis of the talus

別名
距骨壊死距骨骨壊死
臓器系
運動器
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
解剖学 6.5:下肢:足関節と足
合併症
変形性足関節症
症状
疼痛
画像所見
無腐性壊死
原因となる疾患
距骨骨折

🧠 全体像:を理解する一点は⭐ が「逆行性かつ限られた血流」で養われていることである。は60%超がに覆われ、血管が入り込める非関節面がきわめて乏しい。血流は・(洞様管の枝経由)・穿通の3系統だけで、大半が後内側から入って頸部を通り体部・へ向かう1。この構造ゆえに、頸部骨折()による転位・が最大の危険因子になり、転位・の程度をそのままリスクへ翻訳するHawkins分類が診療の中心に置かれる。一方で、と同じくステロイド・アルコールなど全身性の危険因子だけでも発症しうる点を見落とさない。

血流解剖:なぜ距骨は壊死しやすいのか

の60%超はで覆われており、血管が実際に骨へ入り込める非関節面の面積が乏しい1。血流は・(洞様管の枝を介して)・穿通の3系統からなり、大半が後内側から入って頸部を経て体部・へ向かうという逆行性の構造を持つ1。⭐ この逆行性・低の血流構造そのものが、をの好発部位にしている。

危険因子

機序群 代表的な危険因子
(血流経路の直接遮断) 頸部骨折・下・脛距(後述のHawkins分類)
医原性 に対する軟骨下形成術(subchondroplasty)や注入後——近年注目される問題1
全身性(血管の圧迫・) ステロイド使用、、(SLE)、鎌状赤血球症、、腎移植後、放射線照射、2型糖尿病1

⚠️ 外傷がなくても発症しうる。 と同じ全身性の危険因子(ステロイド・アルコール・SLE・鎌状赤血球症など)がでも報告されており、外傷歴のない股関節痛ならぬ「外傷歴のない痛」でもこの疾患を鑑別に残す。

Hawkins分類:外傷性の主因

頸部骨折の転位・の程度は、そのまま血流遮断の範囲を表し、のリスクを予測する(Hawkins分類)21。

Hawkins型 定義 のリスク
I 非転位 0〜13%
II のを伴う 20〜50%
III ・のを伴う 20〜100%
IV 下・脛距・のを伴う 70〜100%

⭐ 型が上がるごとにリスクが跳ね上がるのは、が増えるたびに血流経路がもう一つ断たれるからである。 頸部骨折の詳細(・治療・合併症)はを参照。

Hawkins徴候:血流が残っているかを教える所見

⭐ HawkinsはX線で「壊死していないこと」を示す所見である。 受傷後おおむね6〜12週で、のに透亮帯として現れる1。血流が保たれた骨は荷重を受けてが進み、この透亮帯を作る。壊死した骨は代謝が止まっているためこれが起こらない。

  • が出れば、ほぼ100%の症例でを除外できる1。
  • が出なければ、58%の症例でを意味する1——ただし欠如だけでは診断確定にならない。

病期分類:Ficat and Arlet分類

外傷の有無によらず、そのものの進行度はFicat and Arlet分類で評価する1。

病期 所見
I 単純X線正常
II 、
III crescent sign()
IV 変形、を伴う

診断

  • 単純X線での経過観察を受傷後6〜8週に行う。Hawkinsが12週を過ぎても出現せず症状があれば、MRIへ進む1。
  • MRIではT2の高信号帯、またはT1像の低信号帯としてが描出される(画像所見のはを参照)1。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='talus'>距骨</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='avascular necrosis (AVN)'>無腐性壊死</span>と診断"] --> B{"Ficat and Arlet病期"}
    B -->|"病期I〜II(早期)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-weight bearing'>非荷重</span>(3〜6か月)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracorporeal shockwave therapy'>体外衝撃波療法</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='core decompression'>骨髄減圧術</span>(有効率82〜91%)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone grafting'>骨移植</span>(成功率83.3〜90%)"]
    B -->|"病期III〜IV(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive stage'>進行期</span>)"| D["Blair<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tibiotalar joint'>脛距関節</span>固定術<br>脛<span class='jp-term jp-term-diagram' title='talocalcaneal joint'>距踵関節</span>固定術(癒合率85〜100%)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='talus'>距骨</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='total arthroplasty'>全置換術</span><br>人工<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle joint'>足関節</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='total arthroplasty'>全置換術</span>との併用"]
  • 早期(病期I〜II):(3〜6か月)、、(有効率82〜91%)、(成功率83.3〜90%)が選択肢になる1。
  • (病期III〜IV):Blair固定術・脛固定術(癒合率85〜100%)、、人工との併用が選択肢になる1。

続発症

未治療・進行例ではの変形・を経て、に至りうる。二次性ののの一つとしてが報告されている。

まとめ

  • は60%超がに覆われ、血管の入り込める面が乏しい。血流は3系統のみで大半が後内側から入る逆行性の構造を持ち、これがの好発を説明する。
  • 危険因子は(頸部骨折の転位・、Hawkins分類でI型0〜13%からIV型70〜100%までリスクが跳ね上がる)と、全身性(ステロイド・アルコール・SLE・鎌状赤血球症・・腎移植後・放射線照射・2型糖尿病)の2系統がある。外傷歴が無くても発症しうる。
  • ⭐ Hawkins(受傷後6〜12週の軟骨下透亮帯)は血流が保たれている証拠——出現すればほぼ100%壊死を除外でき、欠如は58%で壊死を意味する。12週を過ぎても出ず症状があればへ。
  • はFicat and Arlet分類(I〜IV)で評価し、早期(I〜II)は・・、(III〜IV)は・・人工が選択肢になる。
  • 未治療・進行例は続発性のに至りうる。

出典

  1. 1.Avascular Necrosis of the Talus: Diagnosis, Treatment, and Modern Reconstructive Options(Medicina(Kubisa MJ, Kubisa MG, Pałka K, Sobczyk J, Bubieńczyk F, Łęgosz P)・2024)PMC11509827として公開されている全文を閲覧した。距骨の60%超が関節軟骨で覆われ血管が入り込める非関節面が乏しいこと、血流が足背動脈・後脛骨動脈(洞様管の枝を介して)・穿通腓骨動脈の3系統からなり大半が後内側から入ること、この逆行性の血流構造ゆえに外傷後の虚血に弱いこと、外傷以外の全身性の危険因子としてステロイド使用・アルコール依存・全身性エリテマトーデス(SLE)・鎌状赤血球症・高脂血症・腎移植後・放射線照射・2型糖尿病が挙げられること、Ficat and Arlet分類が病期I(画像所見正常)・病期II(骨リモデリング・軟骨下嚢胞)・病期III(crescent sign)・病期IV(距骨変形・関節裂隙狭小化を伴う関節症)の4段階であること、距骨骨軟骨損傷に対する軟骨下形成術(subchondroplasty)やリン酸カルシウム注入といった処置後に生じる医原性無腐性壊死が近年注目される問題であること、Hawkins分類による無腐性壊死のリスクがI型0〜13%・II型20〜50%・III型20〜100%・IV型70〜100%であること、Hawkinsサインが受傷後おおむね6〜12週で距骨滑車の軟骨下骨に生じる透亮帯として現れその欠如が58%の症例で無腐性壊死を示す一方その存在はほぼ100%の症例で無腐性壊死を除外できること、単純X線での経過観察を6〜8週に行いHawkinsサインが12週を過ぎても出現せず症状があればMRIを行うべきでMRIではT2脂肪抑制像の高信号帯またはT1像の蛇行状低信号帯として描出されること、早期(Stage I〜II)の治療が非荷重(3〜6か月)・体外衝撃波療法・骨髄減圧術(有効率82〜91%)・骨移植(成功率83.3〜90%)であること、進行期(Stage III〜IV)の治療がBlair脛距関節固定術・脛距踵関節固定術(癒合率85〜100%)・距骨全置換術・人工足関節全置換術との併用であることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Talar Neck Fractures(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)距骨頸部骨折が全距骨骨折の約50%を占め全足関節・足部外傷の1%未満(近年は交通外傷の生存率向上により約2%へ増加)とまれであること、典型的な機転が高エネルギー軸圧を伴う足関節の強制背屈で脛骨前方の皮質骨が距骨頸部の弱い海綿骨を下方へ押し込み靱帯損傷を経て距骨下関節・脛距関節の脱臼に至ること、距骨への血流が後脛骨動脈47%・前脛骨動脈36%・腓骨動脈17%の3系統からなり後脛骨動脈の枝である足根管動脈が距骨頸部の中距踵関節面と後距踵関節面の間を尾側に走ることが骨折転位時に無腐性壊死のリスクを生むこと、Hawkins分類がI型(非転位、無腐性壊死0〜13%)・II型(距骨下関節脱臼を伴う、20〜50%)・III型(距骨下関節・脛距関節の脱臼を伴う、20〜100%)・IV型(さらに距舟関節脱臼を伴う、70〜100%)に分けられ転位・脱臼の程度が無腐性壊死のリスクを予測すること、Hawkinsサインが受傷後約6〜8週で距骨滑車の軟骨下骨に生じる透亮帯でありその存在が血流の温存を示し無腐性壊死への進行がまれであることを示すことを確認した閲覧 2026-09-07