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Drug Atlas · B30 Other / その他 · 必修

BCGワクチン

BCG vaccine

分類
Vaccines / ワクチン
商品名(日本)
乾燥BCGワクチン
商品名(EU)
TICE BCG
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryUrology
トピック
27: TuberculosisN-04: Superficial bladder cancer
承認適応
結核膀胱癌

🧠 全体像:BCGはMycobacterium bovis由来の株という同じ生物学的実体が、まったく異なる2つので使われるという点が学習上の核心である。1つは結核・感染症への(の単回接種)、もう1つは膀胱の癌(NMIBC)への免疫療法である。米国では両者は法律上・製品上も別物として扱われ、結核予防用のと、治療用のBCG LIVE(TICE BCGなど)は互換性がない——添付文書は「BCG LIVEは癌予防のためのワクチンではなく、結核予防にはを使うべき」と明記する1。

2つの用途の対比

用途 対象・接種経路 目的・有効性の実際
結核・感染症の 健康な新生児への単回皮内注射(<1歳0.05 mL・>1歳0.1 mL)2 乳幼児の・など重症・播種性の病型を減らすが、そのものや成人の肺結核を完全には防がない。有効性は・年齢層・病型で一貫しない2
NMIBCの免疫療法 高リスク・CISを含む患者への(導入:週1回×6週。維持:1年・高リスク1〜3年)13 化学療法より有効性が高く、再発予防に加え筋層浸潤への進行リスクを下げる3。SWOG 8507試験では維持療法により中央値が35.7か月→76.8か月に延長した4

⭐ 同じ弱毒生M. bovis株が、結核では「免疫を仕込んで将来の感染に備える」ワクチンとして、では「腫瘍局所に強い炎症反応を起こしてを呼び込む」免疫療法として使われる——目的もも評価指標もまったく違う。

機序

flowchart TD
    A["弱毒生M. bovis株(BCG)を投与"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='route of administration'>投与経路</span>"}
    B -->|"皮内注射(結核予防)"| C["局所リンパ節でM. tuberculosisと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応</span>する細胞性免疫が誘導される"]
    C --> D["将来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>曝露時に播種性病型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculous meningitis'>結核性髄膜炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miliary tuberculosis'>粟粒結核</span>)を防ぐ効果が中心"]
    D --> E["⚠️ 肺への感染そのもの・成人の肺結核は防ぎきれない"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravesical instillation'>膀胱内注入</span>(NMIBC治療)"| F["膀胱粘膜・腫瘍局所でBCGが定着し強い局所炎症を惹起"]
    F --> G["好中球・マクロファージ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T lymphocyte'>Tリンパ球</span>が動員され<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor-associated antigen, TAA'>腫瘍関連抗原</span>への免疫応答が増幅"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual tumor'>残存腫瘍</span>細胞・微小<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual lesion'>遺残病変</span>への細胞性免疫による攻撃"]
    H --> I["再発予防・進行リスク低下"]

💡 どちらの用途も「生きた弱毒菌を使って強い細胞性免疫を引き出す」という同じ原理に基づく。 結核予防では全身に播種する重症型を防ぐ「記憶」を作ることが目的で、感染そのものの完全な阻止は目指していない。一方NMIBC治療では、膀胱という限局した臓器に直接強い炎症を起こし、腫瘍局所の免疫を活性化することが目的である。

適応

領域 使いどころ
感染症・ 結核高負荷国・高リスク設定での新生児への単回接種(感染症・の予防効果も報告される)2
泌尿器科・腫瘍 膀胱(CIS)の治療・再発予防、切除後の高リスクTaT1腫瘍の再発予防1

用法・用量

  • 結核予防:単回皮内注射。<1歳は再構成ワクチン0.05 mL、>1歳は0.1 mL2。・IGRAが陰性でも再接種は推奨されない(追加的有用性の根拠が乏しいため)2
  • NMIBC治療:として週1回×6週の。腫瘍寛解が得られなければこの導入を1回繰り返すことがある。維持療法はで1年(3・6・12か月)、高リスクで1〜3年(3・6・12・18・24・30・36か月の各時点で週1回×3週)が推奨される13

禁忌・注意

  • 結核の禁忌:免疫不全者・免疫抑制療法中の患者(子宮内・母乳を介した曝露を含む)、妊娠中。HIV感染小児は原則接種しないが、中で臨床的・免疫学的に安定していれば接種する2
  • NMIBC治療の禁忌:免疫抑制患者(AIDS・白血病・免疫抑制療法中を含む)、、・尿路感染症・の合併、妊婦1
  • ⚠️ ・は致死的になりうる。 発生時は速やかに感染症専門医へ相談し、・リファンピシン・による多剤療法を行う(は無効であり用いない)1
  • ⚠️ BCG LIVE(治療用)と(結核予防用)は互換性がない。 誤って結核予防目的にBCG LIVEを用いない1

副作用

頻度 内容
一般的(結核予防) 接種部位の(発赤・、)、
一般的() 、頻尿、軽度の血尿、
重篤・まれ ・(致死的になりうる。多剤療法を要する)1

まとめ

  • BCGはM. bovis由来の株で、結核予防のワクチンと(NMIBC)治療の免疫療法という2つの異なる用途を持つ。
  • 結核予防は新生児への単回皮内注射で、重症・播種性病型(・)を減らすが感染そのものや成人肺結核は防ぎきれず、再接種は推奨されない。
  • NMIBC治療は週1回×6週の導入と、リスクに応じた1〜3年の維持療法(週1回×3週を複数の時点で反復)からなるで、化学療法より有効性が高く進行リスクも下げる。
  • ⚠️ 米国では両用途の製品は互換性がなく別物として扱われる。
  • ⚠️ ・は致死的になりうる合併症で、・リファンピシン・(除く)による多剤療法を要する。
  • いずれの用途でも免疫不全者・妊婦には禁忌である。

出典

  1. 1.TICE BCG (BCG Live) for Intravesical Use: Prescribing Information(U.S. National Library of Medicine DailyMed(Merck添付文書)・2026)2026年2月改訂版の本文で、適応が膀胱上皮内癌(CIS)の治療・再発予防、および切除後の高リスクTaT1乳頭状腫瘍の再発予防であること、本剤(BCG LIVE/TICE BCG)は癌予防のためのワクチンではなく、結核予防にはBCG LIVEではなくBCGワクチンを用いるべきと明記されていること、禁忌が免疫抑制患者(AIDS・白血病・免疫抑制療法中含む)・活動性結核・発熱性疾患や尿路感染症・肉眼的血尿の合併・妊婦であること、播種性BCG感染・BCG敗血症による死亡例が報告されており感染症専門医への相談とイソニアジド・リファンピシン・エタンブトール(ピラジナミドは無効)による多剤抗結核薬療法を要すること、標準的な導入療法が週1回×6週の膀胱内注入、維持療法が最低6〜12か月の月1回投与であることを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.Summary of the WHO Position Paper on BCG vaccines: WHO position paper – February 2018(World Health Organization・2018)WHO公式サマリーPDFの本文で、BCGが*M. bovis*由来の弱毒生ワクチンであり、その有効性がワクチン株や年齢層・病型によって一貫しないこと、結核高負荷国・高リスク設定では出生時に全ての健康な新生児へ単回接種を推奨すること、標準接種は<1歳では再構成ワクチン0.05 mL・>1歳では0.1 mLの皮内注射であること、ツベルクリン反応またはIGRAが陰性であっても再接種の追加的な有用性を示す根拠が乏しく再接種を推奨しないこと、免疫不全者・免疫抑制療法中の患者には禁忌であること、HIV感染小児は原則接種しないが抗レトロウイルス療法を受け臨床的に安定していれば接種すること、妊娠中は接種しないことを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.EAU Guidelines on Non-muscle-invasive Bladder Cancer (Ta, T1, and Carcinoma in Situ)(European Association of Urology・2026)高リスク・CISを含む筋層非浸潤性膀胱癌に対しBCG膀胱内注入免疫療法が化学療法より有効性が高く、再発予防に加え筋層浸潤への進行リスクを下げる効果が期待されること、維持療法の期間は中間リスクで1年・高リスクで1〜3年とされる一方、2〜3年目の上乗せ利益は費用・副作用・BCGの供給と天秤にかけるべきとされていることを確認した閲覧 2026-09-29
  4. 4.Maintenance bacillus Calmette-Guerin immunotherapy for recurrent TA, T1 and carcinoma in situ transitional cell carcinoma of the bladder: a randomized Southwest Oncology Group Study(The Journal of Urology(Southwest Oncology Group)・2000)SWOG 8507試験(週1回×6週の導入療法後、660例に維持療法の有無を無作為化・550例で解析)で、維持療法群(導入開始から3・6・12・18・24・30・36か月の時点でそれぞれ週1回×3週の膀胱内・経皮投与)の無再発生存期間中央値が76.8か月と、維持なし群の35.7か月より有意に延長したことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-29