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Imaging findings · Published

血管原性浮腫

Vasogenic edema

別名
血管原性脳浮腫vasogenic edema
臓器系
神経
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G3-07:脳浮腫病理学 C-104:頭蓋内圧亢進の病理(浮腫・ヘルニア・水頭症)
関連疾患
急性脳症高地脳浮腫転移性脳腫瘍膠芽腫

🧠 全体像:は、血液脳関門が壊れて水とタンパクが(細胞外腔)へ漏れ出た浮腫である。・T2/での見え方はと区別しにくいが、⚠️ ()と地図が両者を切り分ける決め手になる——はが上昇し(水分子の動きが自由になる)、はが低下する(細胞内へ水が閉じ込められ動きが制限される)。この対比は「=可逆的で軽症、細胞傷害性=不可逆的で重症」という単純な図式で覚えられがちだが、のように両者が同時に、しかも可逆的に共存する例外があり、単独の所見だけで重症度や予後を断定しない。

定義

は、血液脳関門の透過性が破綻し、イオン・アルブミン・IgGなどのがへ漏出することで生じる細胞外性の浮腫である1。水分は白質の細胞外腔に沿って広がるため、白質優位に分布する。これに対しは血液脳関門が保たれたまま、ナトリウムポンプの機能不全により水分が細胞内(特にアストロサイト)に蓄積する浮腫である1。

モダリティと写り方

の見え方 との対比
白質に沿う。から脳室周囲へ指状に広がるパターンをとりやすい もを示すためだけでは区別が難しい
T2/ 白質優位の高信号。皮質は比較的保たれる も高信号を示し、T2/だけでは両者を鑑別できない1
()・ 上昇(拡散が自由になる)、では低〜 は低下()、高信号——ここが両者を分ける決定的な所見。子癇の症例報告ではのが1.955×10⁻³ mm²/s、が0.98×10⁻³ mm²/sと実測されている2

⚠️ T2/の高信号だけを見て「」と判定しない。 両者は形態が似るため、鑑別には・の確認が要る2。

評価の進め方

flowchart TD
    A["T2/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR)'>FLAIR</span>で白質優位の高信号を認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>を確認する"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>は上昇か低下か"}
    C -->|"上昇"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vasogenic Edema'>血管原性浮腫</span>が主体<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood-brain barrier disruption'>血液脳関門破綻</span>の原因を検索"]
    C -->|"低下"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cytotoxic Edema'>細胞傷害性浮腫</span>の要素あり<br>虚血・低酸素などを検索"]
    D --> F{"原因は何か"}
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass lesion'>占拠性病変</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast enhancement'>造影効果</span>あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritumoral edema'>腫瘍周囲浮腫</span>・膿瘍を評価"]
    F -->|"急激な血圧変動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occipital lobe'>後頭葉</span>優位"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occipital lobe'>後頭葉</span>可逆性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encephalopathic syndrome'>脳症症候群</span>(PRES)を評価"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-altitude exposure'>高所曝露</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-altitude cerebral edema, HACE'>高地脳浮腫</span>(HACE)を評価"]
    E --> J["同一<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lesion (focal)'>病巣</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>低下所見が併存する場合<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vasogenic Edema'>血管原性浮腫</span>だけの病態と決めつけない"]

原因検索では、の有無(腫瘍・膿瘍・炎症を示唆)、分布(優位ならPRES、優位なら(HACE)や可逆性病変症候群〈MERS〉を含む鑑別)、臨床経過(急性の血圧変動、歴、の有無)を組み合わせる。

紛らわしいもの・限界

  • との混同。 T2/だけでは区別できず、上昇()か低下(細胞傷害性)かを・で必ず確認する2。
  • ⚠️ 「=なし」という単純化が破れる例がある。 (HACE)では、・にT2/高信号とを伴うの要素が高頻度に併存する——8例全例でを認め、うち7例が+に一致した。しかもこのはと同様に可逆的で、臨床的な完全回復と一致する3。「=不可逆的な壊死」と機械的に読まない。
  • ⚠️ 画像所見は臨床経過に遅れるだけでなく、誤解を招くことがある。 HACEで初回から10日以内に再検査した5例では、全例で臨床的には改善している最中にもかかわらずがむしろ完全消退前に増悪した。「画像で浮腫が増えている=臨床的に悪化している」と読み違えない3。
  • は可逆的浮腫とは別の指標。 HACEでは浮腫が完全に消退したあとも、だけが数か月〜数年にわたる永続的な痕跡として残る。浮腫の可逆性との残存は別の経過をたどる3。
  • で検出感度が変わる。 は3Tの強調画像で検出され、1.5Tのでは見えないことがある3。陰性所見を「病変なし」と即断せず撮像条件を確認する。

まとめ

  • は血液脳関門の破綻による細胞外性・白質優位の浮腫。(血液脳関門は保たれ細胞内の浮腫)とは・T2/だけでは区別できない。
  • 鑑別の決め手は・:は上昇、は低下(症例報告での実測値は1.955×10⁻³ mm²/s、細胞傷害性0.98×10⁻³ mm²/s)。
  • ・分布・臨床経過を組み合わせて原因(、PRES、など)を絞る。
  • ⚠️ では8例全例にを認め、うち7例がを中心に併存し、しかもそれが可逆的である——「=不可逆」という単純化は例外がある。
  • ⚠️ 画像所見は臨床経過に遅れて動くだけでなく、臨床的改善中に浮腫がむしろ悪化して見えることがあり、誤解を招きうる。
  • は浮腫とは別の経過をたどり、浮腫消退後も永続的な痕跡として残る。検出には3T撮像が有利。

出典

  1. 1.Cerebral Edema(StatPearls / NCBI Bookshelf・2023)血管原性浮腫が血液脳関門の破綻によりイオン・タンパクが血管外腔へ流出し浸透圧勾配で水分が細胞外(血管周囲)へ引き込まれる浮腫で白質優位に分布すること、代表的な原因が脳腫瘍の腫瘍周囲浮腫であること、細胞傷害性浮腫がナトリウムポンプ機能不全により細胞内に水分が貯留する浮腫で外傷性脳損傷や脳卒中が代表的原因であり損傷後数分以内に生じうることを確認した。2023年7月3日最終更新。⚠️ 本文は拡散強調像(DWI)・ADC(見かけの拡散係数)による鑑別や灰白質優位という記載を含まない(全文25,508字中「ADC」「diffusion」「DWI」「gray matter」いずれも0件)。DWI/ADCによる鑑別はkoch-ajnr-eclampsia-dwi-vasogenic-cytotoxic-2001で別途裏付ける。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Diffusion-weighted Imaging Shows Cytotoxic and Vasogenic Edema in Eclampsia(American Journal of Neuroradiology(Koch S, Rabinstein A, Falcone S, Forteza A)・2001)子癇の1例で血管原性浮腫と細胞傷害性浮腫が同一患者に共存した症例報告で、血管原性浮腫のADCが1.955±0.12×10⁻³ mm²/s、細胞傷害性浮腫(左頭頂葉灰白質)のADCが0.98±0.02×10⁻³ mm²/s(参考として正常白質0.707±0.08×10⁻³ mm²/s・正常灰白質0.859±0.06×10⁻³ mm²/s)であり、血管原性浮腫は正常組織よりADCが上昇し細胞傷害性浮腫はADCが低下するという対比を実測値で示したこと、追跡MRIで細胞傷害性浮腫の領域が脳梗塞へ進行したことを確認した。1例の症例報告であり、この対比を大規模に検証したものではない。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Acute and Evolving MRI of High-Altitude Cerebral Edema: Microbleeds, Edema, and Pathophysiology(American Journal of Neuroradiology(Hackett PH, Yarnell PR, Weiland DA, Reynard KB)・2019)高地脳浮腫(HACE)患者8例・26回のMRI検査を対象にした研究で、8例**全例**が拡散制限(細胞傷害性浮腫を示す所見)を認め、うち7例は脳梁膨大部+皮質下白質に一致したこと(別の集計であるFLAIR/T2高信号の分布は5例が脳梁膨大部+皮質下白質・2例が皮質下白質のみ・1例が脳室周囲白質)、血管原性浮腫と細胞傷害性浮腫のいずれの所見も可逆的で臨床的な完全回復と一致したこと、初回から10日以内に再検査した5例では**全例で**臨床的に改善している最中にもかかわらず白質浮腫がむしろ完全消退前に増悪したこと(画像所見は臨床経過に遅れるだけでなく誤解を招きうる)、全例で微小出血がみられ3T磁化率強調画像で検出され1.5Tグラジエントエコーでは検出されなかったこと、微小出血は2.5か月〜10年の経過観察で永続的な痕跡として残存したこと、古典的なモデルでは血管原性浮腫は軽度とされるが本研究では出血性転化を伴う血管内皮機能不全へ進行しうる点で非典型的であることを確認した。閲覧 2026-09-02