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Disease Atlas · 神経 · 疾患

急性脳症

Acute encephalopathy

別名
感染関連急性脳症infection-triggered encephalopathy syndromes
臓器系
神経小児感染症
科目
NeurologyPediatrics
トピック
神経内科 G3-14:脳症の分類神経内科 G3-01:ウイルス感染による神経疾患神経内科 G1-09:代謝性意識障害小児科 2-41:乳幼児の発熱
鑑別疾患
ライ症候群熱性けいれん
治療薬
メチルプレドニゾロン
原因微生物
インフルエンザA型ウイルスヒトヘルペスウイルス6B型
症状
痙攣意識障害
検査値
血糖アンモニア肝酵素(AST・ALT)CRP
画像所見
拡散強調画像高信号血管原性浮腫
スコア
Glasgow Coma Scale (GCS)

🧠 全体像:「」は単一疾患ではなく、発熱性感染症を契機に急性に意識障害・痙攣をきたす一群の症候群の総称である。同じ「感染+発熱+脳症」という入口から、可逆性の軽症例(MERS)から致死率の高い重症例(ANE)まで、まったく異なる臨床経過をたどる複数の病型に枝分かれする。⭐ 鑑別の出発点は「これは単なるではないか」であり、の経過(早期の→数日後の遅発性痙攣)に気づけるかどうかが診断の鍵になる。ののように、基礎に代謝性の脆弱性を持つ体質が発症の一因となる例がある点も理解の軸になる1。

病態——3つの機序が重なって脳浮腫に至る

のは単一ではなく、複数の経路が重なって最終的にびまん性またはの脳浮腫・神経細胞障害に至ると理解されている。

機序 内容
ウイルス感染に対する過剰なでIL-6・などのが急増し、血液脳関門の透過性亢進とを介して脳浮腫を起こす。急性壊死性脳症(ANE)で最も明確に想定される機序
遷延するそのものがグルタミン酸を介したで神経細胞障害を起こす。型()(AESD)で中心的な機序と考えられ、早期のから数日後の遅発性低下(の障害)という時間差を説明する
代謝性の脆弱性 基礎になどの代謝性素因を持つ体質が、発熱・絶食によるで顕在化する。CPT2の(日本人に特異的なp.F352C)は、時に酵素活性が低下することで・脳症の誘因の一つと推定されている1

💡 3つの機序は排他的ではない。 同じ患児でと代謝性の脆弱性が重なって重症化することもあり、「どの機序が主体か」は病型によって傾向が異なるだけで、明確に切り分けられるわけではない。

臨床像——病型ごとに顔がまったく違う

日本のガイドラインは複数の病型(症候群)を包括的に扱う枠組みでを診療する2。代表的な病型を以下に整理する。

病型 臨床的特徴
型()(AESD) 発熱1日目のに続き、4〜6日目ごろに群発する二次性のけいれん(遅発性発作)を来すの経過が特徴。日本で最も頻度が高い病型とされる
急性壊死性脳症(ANE) 急速に進行する意識障害と両側対称性の視床病変を特徴とし、致死率・率が高い重症型
可逆性病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS) 軽度の意識障害・異常言動で発症し、の可逆性病変を特徴とする。予後は良好なことが多い
難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS) 難治性のが遷延する重症型
とは異なる機序(による肝の+脳浮腫)で、⚠️ アスピリン投与との関連が知られる別個の症候群だが、「発熱後の意識障害+」という臨床像が重なるため鑑別で必ずされる

⚠️ 「だと思っていたら実はだった」という経過が最も危険。 は通常単発・短時間での意識は速やかに回復するのに対し、を疑うべきはけいれん後の意識障害の遷延・24時間以上持続する発熱を伴う意識障害・の経過である。

診断

鑑別診断

  • :単発・短時間での意識回復が速やかであればに矛盾しない。けいれん後の意識障害遷延・の経過があればを疑う
  • :発熱後の意識障害という点は共通するが、機序(による肝の)と誘因((アスピリン)など剤との関連)が異なる独立した症候群
  • (・):で除外する
  • の急性発症:をはじめとする・などは、感染を契機に様の病像で発症しうるため、アンモニア・血糖異常や既往歴(反復する低血糖・)があればを検討する

治療

  • 支持療法(気道・呼吸・循環管理、に対する投与)が土台となる。
  • が想定される病型では、早期のが試みられる。
  • ⭐ 体温管理も検討の対象になる。 日本のガイドラインは、難治または6時間以上続く意識障害があり、かつ多臓器障害を疑わない発熱症例に対し、目標体温36℃とした早期(24時間以内)の体温管理療法(脳平温療法)を、AESDへの進展・リスクを低下させるものとして弱く推奨する(推奨度2、エビデンスの確実性D)2。
  • 代謝性の素因が疑われる場合は、原疾患(など)に応じたなどの急性期対応を並行する。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、発熱性感染症を契機に急性に意識障害・痙攣をきたす一群の症候群の総称。AESD・ANE・MERS・AERRPSなど臨床経過の異なる病型に分かれる2。
  • 機序は・・代謝性の脆弱性が重なり合う。のはこの3つ目(代謝性の脆弱性)の代表例1。
  • 「だと思っていたらだった」という見逃しを避けるには、けいれん後の意識障害の遷延との経過への注意が要る。
  • は臨床像が重なるが機序の異なる別個の症候群として鑑別する。
  • 治療は支持療法を土台に、病型に応じて・体温管理療法が検討される。

出典

  1. 1.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ(CPT2)欠損症(日本先天代謝異常学会・2025)diseases/cpt2-deficiency.mdのsourcesで確認済みのPDF全文の記載を、急性脳症との関連に限定して再掲する。`CPT2`の熱不安定性多型のうち日本人に特異的な`p.F352C`多型が、高体温時に酵素活性を下げることでインフルエンザ脳症・ヒトヘルペスウイルス6型脳症の誘因の一つと推定されていること、ただしこの多型自体はCPT2欠損症の病因となる変異とは別と考えるべきであることを確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.小児急性脳症診療ガイドライン2023(日本小児神経学会(Minds ガイドラインライブラリ)・2023)Mindsガイドラインライブラリの要旨ページに加え、本文PDF(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00757.pdf)をpdftotextでテキスト抽出して確認した。本ガイドラインが扱う主な病型として、けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)、難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)、急性壊死性脳症(ANE)、Dravet症候群に合併した脳症、可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)が挙げられていること、本ガイドラインに設けられた唯一のクリニカルクエスチョン(CQ1)が「体温管理療法(脳平温療法:目標体温36℃)を実施可能な施設において、急性脳症を疑う患児に対する本療法の実施はAESDへの進展、後遺症、重篤な有害事象を考慮した場合有用か」であること、CQ1の推奨がMinds 2020準拠のGRADEシステムで決定され「難治けいれん性てんかん重積状態、または6時間以上続く意識障害、かつ多臓器障害を疑わない(例:神経症状出現後6時間以内のAST<90 U/L)を満たす発熱症例に対し、36℃を目標体温とした早期(24時間以内)の体温管理療法は、AESDへの進展、後遺症リスクを低下させるため、実施することを弱く推奨する」(推奨度2=弱い推奨、エビデンスの確実性D=とても弱い)というものであることを確認した閲覧 2026-09-06