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Lab values · Published

抗ミトコンドリア抗体

Anti-mitochondrial antibody

別名
AMA抗M2抗体AMA-M2抗ミトコンドリアM2抗体
臓器系
肝胆膵免疫・膠原病
科目
Medical Genetics and Immunology (Immunology)Pathology
トピック
免疫学 8.3:自己抗体のスクリーニング法病理学 C/44:胆汁うっ滞性肝症候群:PBC、PSC
関連疾患
原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎

🧠 全体像:(AMA)は、の複合体構成蛋白に対する自己抗体であり、(PBC)のきわめて特異的かつ鋭敏なマーカーである12。成人の原因不明の慢性胆汁うっ滞(ALP上昇など)において本抗体またはが陽性であれば、侵襲的なを省略してPBCと確定診断できる1。⭐ 診療上の最重要留意点は「の高さはや線維化進行度を反映せず、治療モニタリングの指標には使えない」ことと、「5〜10%存在するAMA陰性PBCを見落とさないための特異的・への進め方」にある12。

何を測っているか

ミトコンドリアはのを担うであり、その内膜にはピルビン酸やアミノ酸・有機酸を代謝する複数のが存在する。

  • 対応抗原とM2:にはM1からM9までの対応抗原が知られているが、PBCと直結し臨床検査として測定されるのはM2抗原に対する抗体(AMA-M2)である。M2抗原の本体は以下の3つの2-オキソ酸脱水素酵素複合体のE2サブユニット(ジヒドロリポアミド・アシルトランスフェラーゼ)である2。
    1. (PDC-E2):陽性例の95%以上が認識する主たる。
    2. E2サブユニット(BCOADC-E2)
    3. E2サブユニット(OGDC-E2)
  • なぜ全身のミトコンドリアにある抗原に対して胆管だけが破壊されるか:PDC-E2はのすべてののミトコンドリアに存在する。しかしPBC患者の小型上皮細胞(BEC)では、アポトーシス時にPDC-E2のリポイル化ドメインが切断を受けずにそのまま表面に提示され()、これが系や・B細胞を刺激して選択的な胆管破壊を誘導すると考えられている。

基準値と測定法

の測定には、スクリーニングに用いられる(IFA)と、組み換えM2抗原を用いる固相(ELISA法・CLEIA法など)がある。

検査項目 測定法 判定基準() 臨床的特徴
(AMA) (IFA)
(腎・胃)
20倍または40倍未満:陰性
40倍以上:陽性
上皮細胞質や胃質に微蛍光を認める。力価(20倍、40倍、80倍…)で報告される
(AMA-M2) ELISA法 / CLEIA法
(組み換えPDC-E2等の固相化)
7.0 index 未満:陰性
7.0 index 以上:陽性
M2抗原(PDC-E2等)に特異的な定量・。IFA法より感度・特異度に優れ、判定の客観性が高い2

陽性(高値)の意味と陰性の解釈

flowchart TD
    A["原因不明のALP上昇・胆汁うっ滞"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antimitochondrial antibody (AMA)'>抗ミトコンドリア抗体</span>(AMA/抗M2)"}
    B -->|"陽性(IFA 1:40以上 または M2抗体陽性)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary biliary cholangitis, PBC'>原発性胆汁性胆管炎</span>(PBC)の確定診断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver biopsy'>肝生検</span>は原則不要、超音波で胆道閉塞除外)"]
    C --> D{"AST/ALT高値・IgG高値が併存するか"}
    D -->|"あり"| E["PBC-AIH<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overlap syndrome'>オーバーラップ症候群</span>を考慮<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-smooth muscle antibody'>抗平滑筋抗体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver biopsy'>肝生検</span>を検討)"]
    D -->|"なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ursodeoxycholic acid'>ウルソデオキシコール酸</span>(UDCA)による標準治療開始"]
    B -->|"陰性"| G{"PBC特異的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antinuclear antibody, ANA'>抗核抗体</span>の測定<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-gp210 antibody'>抗gp210抗体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-sp100 antibody'>抗sp100抗体</span>)"}
    G -->|"陽性"| H["AMA陰性PBCと診断"]
    G -->|"陰性"| I["MRCPで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary sclerosing cholangitis'>原発性硬化性胆管炎</span>(PSC)除外<br>および<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver biopsy'>肝生検</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic nonsuppurative destructive cholangitis'>慢性非化膿性破壊性胆管炎</span>を確認"]

1. 陽性となる疾患

  • (PBC):患者の90〜95%が陽性を示し、特異度は98%を超える2。中年以降の女性に好発し、小型葉間胆管の肉芽腫性破壊(: CNSDC)をきたす。
  • PBC-:胆汁うっ滞(ALP優位)と(ALT優位・高IgG血症)の両方の特徴を併せ持つ病態。AMA陽性に加え、やがとなる。
  • (SSc、特に/CREST症候群):強皮症患者の約5〜10%にAMA陽性がみられ、無症候性またはPBCの合併頻度が高い。
  • ・:PBCに高頻度に併発する・自己免疫疾患において陽性を示すことがある。

2. 陰性例の解釈(AMA陰性PBC)

臨床的・生化学的・組織学的に典型的なPBCでありながら、AMAおよびが検出されない患者が約5〜10%存在する(かつてと呼ばれた病態を含む)1。

3. 肝機能正常(ALP正常)のAMA陽性者

無症候の検診などでAMA陽性が発見されることがある。

  • 前向き研究により、肝機能(ALP・ビリルビン)が完全に正常であっても、AMA陽性者の約16%/年が生化学的・臨床的なPBCを発症(化)することが判明している3。
  • 直ちに治療を開始する必要はないが、無症状であっても年1回程度のALP・γ-GTPの定期測定による長期が推奨される3。

⚠️ 測定上の注意

  • ⚠️ を治療効果判定やモニタリングに使わない。 (UDCA)などの治療がしてALPやビリルビンが正常化し、の進行が停止して予後が健常人と同等になっても、AMAや価は高値のまま持続することが多く、陰性化することは稀である。が下がらないことを理由に薬効不十分と判断してはならない。
  • ⚠️ IFA法での非特異的。 IFA法では他の自己抗体(や、)が共存する場合、細胞質蛍光の判定が困難になることがある。疑わしい場合は組み換えM2抗原を用いた固相測定法(ELISA/CLEIA)で確認する。
  • ⚠️ 急性のでの一過性弱陽性。 重症の、、などで、広範なに伴い一過性にのAMAが検出されることがある。数か月後の再検で消失することが多い。

経時変化とモニタリング

  • モニタリングの指標:PBCのや治療反応性の評価には、AMAではなく生化学的指標(ALP、γ-GTP、、AST/ALT、アルブミン)および・()を用いる。
  • :UDCA投与開始後1年時点でのALP低下(の1.67倍未満、あるいはParis基準・Toronto基準などの達成)が予後改善の指標となる。

まとめ

  • (AMA、特にM2に対する抗体)は(PBC)にきわめて特異的かつ鋭敏な自己抗体である。
  • 成人の原因不明の慢性胆汁うっ滞において、AMA陽性であればなしにPBCと確定診断できる。
  • 5〜10%のAMA陰性例では・やが診断に必須となる。
  • の変動は治療反応性やと相関しないため、治療モニタリングにはALPやビリルビンなどの生化学指標を用いる。

出典

  1. 1.EASL Clinical Practice Guidelines: The diagnosis and management of patients with primary biliary cholangitis(Journal of Hepatology(European Association for the Study of the Liver)・2017)成人における原因不明のALP高値などの胆汁うっ滞所見に加え、抗ミトコンドリア抗体(AMAまたはAMA-M2)陽性(IFA法で1:40以上等)があれば、肝生検を行わずに原発性胆汁性胆管炎(PBC)の確定診断が可能であること、AMA陰性例ではPBC特異的抗核抗体(抗sp100抗体、抗gp210抗体)または肝生検で確定することを確認した。閲覧 2026-10-25
  2. 2.A sensitive bead assay for antimitochondrial antibodies: Chipping away at AMA-negative primary biliary cirrhosis(Hepatology(Oertelt S, Rieger R, Selmi C, Invernizzi P, et al.)・2007)PBC患者における抗ミトコンドリア抗体(AMA)の標的抗原がピルビン酸脱水素酵素複合体E2サブユニット(PDC-E2)、分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体(BCOADC-E2)、α-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体(OGDC-E2)であり、組み換え抗原を用いた高感度アッセイにより従来のIFA法陰性例の一部でもAMAが検出され、診断感度95%超・特異度98%超を示すことを確認した。閲覧 2026-10-25
  3. 3.Large-scale characterization study of patients with antimitochondrial antibodies but nonestablished primary biliary cholangitis(Hepatology(Dahlqvist G, Gaouar F, Carrat F, et al.)・2017)肝機能正常(ALP正常)の健診・スクリーニングで発見された抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性者の大規模前向きコホートにおいて、年率約16%でALP上昇などのPBC発症(生化学的顕性化)がみられ、長期経過観察が推奨されることを確認した。閲覧 2026-10-25