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Lab values · Published

クロニジン抑制試験

Clonidine suppression test

別名
クロニジン負荷試験clonidine suppression test
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePharmacology
トピック
内科学 S-14:褐色細胞腫・傍神経節腫薬理学 A6:α2作動薬およびイミダゾリン受容体作用薬
関連疾患
褐色細胞腫

🧠 全体像は、をわずかに超える境界域にとどまり、生理的な上昇なのか腫瘍性の分泌なのか判断がつかないときに使うである。原理は単純で、生理的に亢進したカテコールアミン分泌は中枢からのを抑えれば低下するが、の腫瘍細胞は神経支配から独立して自律的に分泌しているため抑制されない。「抑制されない」こと自体が腫瘍の存在を支持する所見になる。

何を見ているか

は中枢性のα2作動薬で、中枢のを低下させ、からのノルアドレナリン放出を抑える。不安・・生理的ななど、神経を介して二次的にカテコールアミンが上昇している患者では、この中枢抑制によって末梢のノルアドレナリン放出が減り、血中ノルも低下する。

一方、の腫瘍細胞は神経支配を受けずにカテコールアミンを合成・放出しており、が働きかける神経性の調節経路の外側にある。腫瘍からの分泌はこの中枢抑制の影響を受けないため低下しない。「抑制されるかどうか」という一点が、生理的な上昇と腫瘍性の分泌を鑑別する軸になる。

⭐ 測定対象は血漿ノルであり、カテコールアミンそのものではない1。この検査で見ているのは「血中カテコールアミン濃度が下がるか」ではなく、あくまでであるノルの挙動である点は、判定の読み方に直結する。

手順

項目 内容
β遮断薬を検査の少なくとも48時間前に中止する1
安静 臥位で20分以上安静にしてから投与前(基礎値)の採血を行う1
投与 300 µg/70 kgを単回する1
採血 投与前と、投与3時間後に血漿ノルを採血する1
中止基準 投与前血圧が110/60 mmHg未満の場合は施行を見合わせる1

投与前・投与後を通じて臥位を保ち、この間は血圧を監視する。絶食は必須ではないが、施設によっては他の生化学検査と同時に行うため準絶食下で実施されることもある。

判定基準

投与3時間後の血漿ノルを上回ったまま、かつ投与前値からの低下が40%未満であれば異常と判定し、を支持する所見とする1。逆に、を下回るか、投与前値から40%以上低下すれば正常抑制とみなす。

報告されている診断精度は感度97%・特異度100%だが、この数値は前向き試験で検証されたものではない1。単一のに過度に依存せず、臨床像・の絶対値・画像所見と合わせて総合的に判断する。

⚠️ 測定上の注意

  • 低血圧・失神が主要な副作用である。 そのものがであるため、投与後はを維持し血圧を継続的に監視する。投与前血圧が110/60 mmHg未満なら施行を見合わせる1
  • β遮断薬など干渉しうる薬剤は事前に中止する。 ・利尿薬もカテコールアミン代謝や血圧に影響しうるため、可能な範囲でしてから施行する。
  • 境界域でしか使わない検査である。 の数倍に達する明らかな高値では不要(この段階で画像診断へ進んでよい)。逆に内であれば施行する意味がない。
  • 腫瘍の存在確率が低い境界域では、より経過観察が選ばれることもある。 家族歴・症状・画像所見から腫瘍のが低いと判断される境界域陽性では、を追加する代わりに、一定期間後の再検査で小さな腫瘍の増大を確認する「と再検査」の方針を取ることがある1
  • 偽陰性になりうる状況:腫瘍が小さくカテコールアミン産生量が少ない場合や、既にに抑制されている場合は、腫瘍性の上昇でも低下率が40%を超えて見かけ上「抑制」と判定されることがある。
  • 偽陽性になりうる状況:重症の慢性ストレス状態や、他の要因で中枢のに反応しにくくなっている場合は、腫瘍が無くても低下率が不十分に見えることがある。

位置づけ:次に進むべき検査

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma free metanephrines'>血漿遊離メタネフリン</span>または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary fractionated metanephrines'>尿中分画メタネフリン</span>"] --> B{"上昇の程度"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal (ULN)'>基準上限</span>の数倍以上"| C["局在診断へ進む"]
    B -->|"境界域"| D["採血条件・薬剤・ストレスを見直して再検"]
    D --> E{"それでも境界域"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonidine suppression test'>クロニジン抑制試験</span>"]
    E -->|"いいえ(正常化)"| G["経過観察"]
    F --> H{"投与3時間後の低下が40%未満か"}
    H -->|"はい(異常)"| C
    H -->|"いいえ(正常抑制)"| G
    C --> I["CT/MRI・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MIBG scintigraphy'>MIBGシンチグラフィ</span>・<br>68Ga-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DOTATATE'>DOTATATE</span> PETなどで局在"]

陽性であれば、この検査だけで局在は分からないため、CT/MRIによる解剖学的局在診断、あるいは多発・転移・遺伝性が疑われる場合はといった核医学的な機能画像へ進む。はあくまで「腫瘍性かどうか」を判定する生化学的なであり、局在の情報は与えない。

まとめ

  • は、が境界域で判断がつかないときに使うであり、明らかな高値・正常値では不要。
  • 原理は「生理的な上昇はで抑制できるが、腫瘍からの自律的分泌は抑制できない」という一点。
  • 測定対象は血漿ノルで、カテコールアミンそのものではない。
  • 判定は投与3時間後のノルを上回ったまま、かつ投与前値から40%未満の低下であれば異常。感度97%・特異度100%と報告されるが前向き試験による検証はない。
  • 低血圧・失神が主要な副作用で、投与前血圧が110/60 mmHg未満なら施行を見合わせる。β遮断薬は少なくとも48時間前に中止する。
  • 陽性であれば局在診断(CT/MRI、、68Ga- PETなど)へ進む。この検査自体は局在情報を与えない。

出典

  1. 1.Pheochromocytoma and Paraganglioma: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society(J Clin Endocrinol Metab、Lenders JW et al.)・2014)クロニジン抑制試験のプロトコル(β遮断薬を48時間前に中止、臥位安静後の基礎値採血、クロニジン300 µg/70 kg単回経口投与、投与3時間後に血漿ノルメタネフリンを再採血、投与前血圧110/60 mmHg未満は施行見合わせ)と、判定基準(投与3時間後のノルメタネフリンが基準上限を上回りかつ投与前値から40%未満の低下で異常)、報告されている感度97%・特異度100%だが前向き試験による検証はまだないこと、腫瘍の事前確率が低い境界域陽性では負荷試験の代わりに待機と再検査の方針を取りうることを確認した。閲覧 2026-08-04