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機能的内腔イメージング

Functional lumen imaging probe

別名
EndoFLIPFLIP内腔機能イメージングプローブ
臓器系
消化器
科目
Internal MedicineSurgery
トピック
内科学 L-44:胃食道逆流症・嚥下障害の鑑別外科学 S-05:食道良性疾患の診断と治療(アカラシア・憩室・食道裂孔ヘルニア・胃食道逆流症)
関連疾患
食道胃接合部流出障害

🧠 全体像:機能的内腔イメージング(EndoFLIP)は、内圧検査が嚥下という能動的な収縮を見るのに対し、バッグを広げたときの受動的な広がりやすさを直接測る検査である。指標はただ1つ、(DI)=断面積÷拡張圧——「同じ圧をかけたときにどれだけ広がるか」。(EGJ)が硬くて開かないのか、開くけれど収縮の協調が崩れているのかを、内視鏡の場で即座に切り分けられる点が、内圧検査との住み分けの核心になる。

検査の原理と実施方法

カテーテル先端のバッグの中に、断面積を測る複数の電極対が並んでいる。バッグ内をで充満すると、電極間の(電気抵抗)がその位置の断面積に反比例して変化する仕組みを利用し、長さ方向の各点で断面積と圧を同時に測定する。

内視鏡下でをまたぐ位置にバッグを留置し、50 mL・60 mL・70 mLの順に段階的に充満させ、各段階を30秒以上保持しながら断面積・圧・の収縮パターンを記録するのが標準プロトコルである1。

flowchart TD
    A["内視鏡下でEGJをまたぐ位置に<br>FLIPバッグを留置"] --> B["50 mL→60 mL→70 mLの順に<br>段階的に充満(各30秒以上)"]
    B --> C["各段階でEGJの<br>断面積・拡張圧を測定"]
    C --> D["60 mL<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distended state'>充満時</span>のEGJ-DI<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='narrowest point (part)'>最狭部</span>の断面積÷拡張圧)を代表値とする"]
    B --> E["充満に対する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal body'>食道体部</span>の<br>収縮<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reaction patterns'>反応パターン</span>を記録"]

判読の指標と基準

指標 定義・基準
EGJ(EGJ-DI) その時点でのEGJの断面積を拡張圧で除した値。60 mLの値を代表値として報告する1
EGJ開大の 開大不良(REO):最大径12 mm未満かつEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg未満/正常開大(NEO):最大径16 mm以上かつEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg以上/それ以外はすべて不確定(IEO)——旧分類の境界域2区分を単純化した1
の閾値(の文脈) 60 mLのEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg未満、かつ最大EGJ径12 mm未満を開大不良とする2
の収縮反応 正常収縮反応(NCR)・減弱収縮反応(圧40 mmHg未満)・無秩序収縮反応(圧40 mmHg以上で非典型)・反応(SCR)・収縮反応消失(ACR)の5型1

異常パターンの意味

パターン 示唆される病態
EGJ開大不良(REO)+収縮反応消失(ACR) に典型的なパターン。内視鏡所見がを強く支持する場合はFLIP所見のみで診断してよい3
EGJ開大不良(REO)+収縮反応が残存 (EGJOO)型のパターン。内圧検査での確定診断の支持的所見として用いる2
EGJ開大が正常(NEO) 高いでEGJ流出障害を除外できる3
反応(SCR) の持続収縮または閉塞性収縮を示すパターン
の低下 の治療後もなお嚥下障害が残る例で、内視鏡・病理では説明できない機序を評価する目的で検討される3

⚠️ 実施上・判読上の注意

  • FLIPだけでを診断したり、抗逆流治療の要否を決めたりしない。 GERDの評価には向かない3。
  • 内視鏡所見がを強く支持しない場合、EGJ開大異常だけでと確定しない。 さらなる検査(内圧検査など)を要する3。
  • FLIPを検討する前に、高精度ので食道の(腫瘍・狭窄など)を先に評価しておく3。
  • ⭐ ・・など通常の内視鏡鎮静薬はFLIP所見に臨床的に意味のある影響を与えないと報告されている——鎮静を理由に検査を避ける必要はない3。
  • 新しい3区分のは旧来の4区分(境界域開大不良・境界域正常開大を含む)を単純化したものである。旧文献の境界域という表現を見たら、現行のIEO(不確定)に相当すると読み替える1。

次に進むべき検査 / 使い分け

(HRM)が能動的な嚥下時の収縮を評価するのに対し、FLIPは受動的な広がりやすさを評価する——両者は競合するのではなく補完する関係にある。HRM所見が境界域で閉塞症状がある例ではFLIPを補助的に用いる4。逆にHRMが実施できない・が出ない場面では、内視鏡と同時に施行できるFLIPが先に情報を出すこともある。

治療の場面でも役割がある——経口内視鏡下()やの術中に、切開が十分かをFLIPでその場で確認するという使い方が推奨されている3。治療後や逆流手術・後に閉塞症状が残る例の評価にも用いる。

まとめ

  • FLIPは平面法で断面積と拡張圧を同時に測り、EGJ(DI=断面積÷拡張圧)で「広がりやすさ」を評価する検査で、50→60→70 mLの段階充満が標準プロトコル。
  • EGJ開大はDallas Consensusで開大不良(REO)・不確定(IEO)・正常開大(NEO)の3区分に単純化され、60 mLのEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg未満が・の判定閾値になる。
  • 内視鏡所見がを強く支持すればFLIP所見のみで診断してよいが、支持しなければ開大異常だけで確定せず追加検査へ進む。
  • ⚠️ GERDの診断・抗逆流治療の要否判断にFLIPを使わない。鎮静薬は所見に臨床的な影響を与えない。
  • HRMが能動的収縮、FLIPが受動的を見るという補完関係にあり、・術では術中に切開の十分性を確認する目的でも用いられる。

出典

  1. 1.A Standardized Approach to Performing and Interpreting Functional Lumen Imaging Probe Panometry for Esophageal Motility Disorders: The Dallas Consensus(Gastroenterology・2025)FLIPカテーテルを50 mL・60 mL・70 mLの順に段階的に充満させ各段階を30秒以上保持するのが標準プロトコルであること、EGJ拡張性指数(EGJ-DI)がその時点でのEGJ最狭部の断面積を拡張圧で除して求める値であり60 mL充満時の値を代表値として用いること、食道胃接合部(EGJ)開大の判定を最大径12mm未満かつEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg未満の開大不良(REO)、最大径16mm以上かつEGJ-DI 2.0 mm²/mmHg以上の正常開大(NEO)、その中間をすべて不確定(IEO、旧称は境界域開大不良/境界域正常開大の2区分)とする3区分に単純化したこと、食道体部の収縮反応を、複数の明瞭な順行性収縮を認める正常収縮反応(NCR)、収縮はあるが圧が40 mmHg未満の減弱収縮反応、圧40 mmHg以上で非典型パターンの無秩序収縮反応、持続する下部食道括約筋収縮または閉塞性収縮を示す痙攣性収縮反応(SCR)、収縮を認めない収縮反応消失(ACR)の5型に分類することを確認した。閲覧 2026-08-28
  2. 2.Esophagogastric Junction Outflow Obstruction: A Diagnosis in Evolution(Gastroenterology & Hepatology (N Y)・2024)FLIPによる食道胃接合部の開大不良(真の生理的閉塞を示唆する所見)が、16 cmバルーン(EF-322N)を用いて60 cc充満時のEGJ拡張性指数2.0 mm²/mmHg未満、かつ最大EGJ径12 mm未満の2条件で定義されることを確認した。閲覧 2026-08-28
  3. 3.AGA Clinical Practice Update on Incorporating Functional Lumen Imaging Probe Into Esophageal Clinical Practice: Expert Review(American Gastroenterological Association (AGA) Institute / Gastroenterology・2025)FLIPを検討する前に上部消化管内視鏡で食道病変を高精度に評価すべきこと、嚥下障害・食道性逆流・食事関連胸痛など閉塞症状があり他の検査で結論が出ない場合にFLIPを検討すべきこと、プロポフォール・フェンタニル・ミダゾラムなど通常の内視鏡鎮静薬はFLIP所見に臨床的に意味のある影響を与えないと報告されていること、FLIPでの食道胃接合部開大が正常であれば高解像度内圧検査での食道胃接合部流出障害を陰性的中率高く除外できること、内視鏡所見がアカラシアを強く支持する場合はFLIP所見のみでアカラシアと診断してよいがそうでない場合は開大異常があれば追加検査を要すること、FLIP所見だけで胃食道逆流症の診断や抗逆流治療の要否を判断してはならないこと、経口内視鏡下筋層切開術(POEM)や腹腔鏡下Heller筋層切開術の術中に下部食道括約筋切開の十分性を確認する目的でFLIPを術中に用いることを推奨すること、治療後の好酸球性食道炎で嚥下障害が残るがその機序が高精度の上部内視鏡・病理でも明らかでない場合にFLIPを検討してよいこと(Best Practice Advice 7)を確認した。閲覧 2026-08-28
  4. 4.ACG Clinical Guidelines: Clinical Use of Esophageal Physiologic Testing(American College of Gastroenterology・2020)高解像度内圧検査の所見が境界域の閉塞症状例でFLIPを補助的に用いることを条件付きで推奨していることを確認した。閲覧 2026-08-28