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Lab values · Published

高解像度食道内圧検査

High-resolution esophageal manometry

別名
HRM食道内圧検査高解像度食道マノメトリー
臓器系
消化器
科目
Internal MedicineSurgery
トピック
内科学 G-01:食道・胃疾患外科学 B/06:食道憩室とアカラシア外科学 S-05:食道良性疾患の診断と治療(アカラシア・憩室・食道裂孔ヘルニア・胃食道逆流症)

🧠 全体像は、嚥下障害の精査で内視鏡が構造病変を除外した後に進むの生理学的評価である。1本のカテーテルに並ぶ多点圧センサーが咽頭から胃までを同時に記録し、圧を色で表した時空間プロット(Clouseプロット)として表示する——どこで・いつ・どれだけの圧が生じたかは一目で分かるが、なぜその圧パターンが生じているか(神経性かか)まではHRM単独では分からない。判定はを起点とする階層的な分類()に従うが、⚠️ IRP高値だけではを確定できない

どう測るか

  • 経鼻的に留置する多点圧センサーカテーテルを用い、1回の留置(LES)・胃までを同時記録する。の内圧検査はセンサー数が少なく、カテーテルを引き抜きながら数点ずつ測る必要があったのに対し、HRMは引き抜き操作なしに食道全長を一度に捉える。
  • 記録した圧を位置(縦軸)×時間(横軸)×圧(色)の時空間プロットとして表示し、蠕動を線ではなく面として読む。
  • 標準プロトコルは仰臥位での5 mL水嚥下10回が基本で、では座位での5 mL水嚥下5回以上を追加し、体位による偽陽性を減らす1
  • 補助検査として、(2 mLの水を短間隔で5回連続嚥下させ、嚥下抑制からの回復力=蠕動を評価する)と(100 mL以上、できれば200 mLを一気に飲ませ、単発嚥下では見逃す(EGJ)の通過障害や痙攣を誘発する)を行うことがある1

主要な指標

指標 何を表すか
嚥下後10秒の観察窓のうち、最も弛緩した4秒間のEGJ平均圧。LESのを評価する中心指標1
遠位食道収縮の振幅××長さ(20 mmHgを超える部分)。収縮の勢いを表す1
(DL) UES弛緩から収縮点(CDP)までの時間。短縮は早期(痙攣性)収縮を示す1
の破綻 20 mmHg等圧線の途切れ。大きいほど蠕動が弱い(・失敗嚥下の判定に関わる)

シカゴ分類による判定

⭐ 現行版は(2021年改訂)で、の異常が無いことを確認してからを見るを取る。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IRP'>統合弛緩圧</span>は異常高値か"] -->|"はい"| B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal body'>食道体部</span>の蠕動は"}
    B -->|"100%消失"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='achalasia'>アカラシア</span>I型・II型"]
    B -->|"有意な蠕動を欠き<br>20%以上が早期・痙攣性収縮"| C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type III achalasia'>アカラシアIII型</span>(痙攣型)"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='achalasia'>アカラシア</span>の基準を満たさない<br>(仰臥位・座位ともIRP異常)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastroesophageal junction, GEJ'>食道胃接合部</span>流出障害<br>(EGJOO)"]
    A -->|"いいえ(正常)"| E{"正常では見られない<br>収縮パターンか"}
    E -->|"早期収縮が20%以上"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DES'>遠位食道痙攣</span>"]
    E -->|"DCIが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercontractile esophagus'>収縮亢進食道</span>"]
    E -->|"いずれも無し"| H{"統計的な正常域を<br>外れる蠕動異常か"}
    H -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systolic'>収縮不良</span>が優位"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IEM'>蠕動不全</span>"]
    H -->|"無し"| J["正常"]
診断 判定の骨子2
I型 IRP異常+蠕動100%消失。有意な内圧上昇を伴わない
II型 IRP異常+蠕動100%消失+嚥下の20%以上で
IRP異常+嚥下の20%以上で早期・痙攣性収縮+有意な蠕動を欠く
仰臥位・座位ともIRP異常+仰臥位で嚥下の20%以上に内圧上昇+の基準を満たさない
IRPは正常+嚥下の20%以上で早期収縮(DL4.5秒未満かつDCI 450 mmHg・s・cm以上)
(ジャックハンマー食道) IRPは正常+嚥下の20%以上でDCIが8000 mmHg・s・cm超
IRPは正常+が70%超、または収縮消失嚥下が50%以上

⚠️ EGJOOは単独では「臨床的に不確定」な診断にとどまる。 は、嚥下障害・などの症状に加え、(できれば13 mmの錠を併用)またはによる支持的所見を確認するよう求めている2

の亜型はに関わる——III型(痙攣型)は長いを要するため)が優先され、I・II型ではHellerのいずれも選択肢になる。詳細はを参照。での様所見は痙攣性収縮(DESやIII型)を示唆する間接所見だが、造影だけでは両者を区別できず確定はHRM側が担う。

⚠️ 測定上の注意

  • 内視鏡でを除外してから行う検査である。 内視鏡・画像検査で(腫瘍・など)が確認された時点で、そのものが適用できなくなる——構造病変があると様のIRP上昇・蠕動消失を来しうるため2
  • の失敗(両括約筋を同時に捉えられていない位置ずれ)、検査中の体位、嚥下の質(会話・空嚥下・不完全な水嚥下の混入)は測定値を直接歪める。
  • IRPは機器(メーカー)と体位でが変わる。 仰臥位のIRP上昇はEGJOOを過剰診断しやすく、座位での再検で偽陽性の多くが消える1
  • ⚠️ IRP高値だけでを確定してはいけない。 機能性流出障害、オピオイド使用(μ・κ受容体作動によりIII型様の早期収縮パターンと関連するため、可能なら服薬を中止した状態で検査する)、腫瘍による)のいずれも除外して初めて確定診断が成立する2

経時変化とモニタリング

後の効果判定にHRMを用いることがあるが、単独では判定しない。 反復の(食道排出の客観評価)を治療後にも行い、その改善度は症状評価単独より治療の長期成功をよく予測するとされる3後はIRPが正常化してもの蠕動までは回復しないことがあり、HRM所見・Eckardtスコアを組み合わせて評価する。

まとめ

  • HRMは経鼻カテーテルで咽頭〜胃を同時記録し、Clouseプロットとして表示する検査で、内視鏡による構造病変の除外が前提となる。
  • 標準プロトコルは仰臥位5 mL水嚥下10回+座位5 mL水嚥下5回以上。マルチラピッドスワロー・急速飲水負荷を補助的に用いる。
  • 主要指標はIRP(EGJ)・DCI(収縮の勢い)・DL(収縮のタイミング)・破綻(蠕動の途切れ)。
  • 現行の(2021年)は階層的で、I〜III型を頂点に、EGJOO・DES・・蠕動不全(IEM)を鑑別する。
  • IRP高値だけではを確定できず、機能性EGJOO・オピオイド使用・)の除外が必須。EGJOOは単独では不確定で、やFLIPによる支持的所見を要する。
  • 治療効果判定には・症状スコアを併用し、HRM単独の所見では判断しない。

出典

  1. 1.Esophageal motility disorders on high-resolution manometry: Chicago classification version 4.0(Neurogastroenterology & Motility・2021)Table 1・Table 3・本文で、IRPの異常上限が体位・機器で異なること(仰臥位Medtronic 15 mmHg以上、仰臥位Laborie/Diversatek 22 mmHg以上、座位Medtronic 12 mmHg以上、座位Laborie/Diversatek 15 mmHg以上)、アカラシアI型(IRP異常+蠕動100%消失)・II型(+嚥下20%以上で汎食道性加圧)・III型(IRP異常+嚥下20%以上で早期・痙攣性収縮かつ有意な蠕動を欠く)の診断基準、食道胃接合部流出障害(仰臥位・座位ともIRP異常+仰臥位で嚥下20%以上のボーラス内圧上昇+アカラシア基準を満たさない)が単独では臨床的に不確定とされ症状とタイムドバリウム嚥下〔13 mmのバリウム錠の併用が望ましい〕またはFLIPの支持的所見を要すること、遠位食道痙攣(IRP正常+嚥下20%以上で早期・痙攣性収縮、遠位潜時4.5秒未満かつDCI 450 mmHg・s・cm以上)、収縮亢進食道(IRP正常+嚥下20%以上でDCI 8000 mmHg・s・cm超)、蠕動不全(IRP正常+無効嚥下70%超または収縮消失嚥下50%以上)の各基準、内視鏡・画像で機械的閉塞が確認された時点でこの分類自体を適用できないこと、オピオイド使用がIII型アカラシアと関連するため可能なら服用を中止した状態で検査すべきことを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Chicago classification version 4.0© technical review: Update on standard high-resolution manometry protocol for the assessment of esophageal motility(Neurogastroenterology & Motility・2021)標準プロトコルが仰臥位5 mL水嚥下10回に続けて座位5 mL水嚥下5回以上を追加すること、統合弛緩圧(嚥下後10秒の観察窓内で最も弛緩した4秒間のEGJ平均圧)・遠位収縮積分(20 mmHgを超える収縮の振幅×持続時間×長さ)・遠位潜時(UES弛緩から収縮減速点までの時間)の定義、マルチラピッドスワロー(2 mLの水を短間隔で5回連続嚥下させ嚥下抑制からの回復=蠕動予備能を見る)と急速飲水負荷(100 mL以上、望ましくは200 mLを一気に飲ませEGJ通過障害や痙攣を誘発する)の目的、仰臥位で診断された食道胃接合部流出障害の多くが座位での再検で偽陽性と判明することを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Chicago Classification Version 4.0 and Its Impact on Current Clinical Practice(Gastroenterology & Hepatology(Joel E. Richter, University of South Florida Morsani College of Medicine)・2021)POEMや空気圧拡張術などの治療後は反復のタイムドバリウム嚥下(TBE)で食道排出の改善を評価すること、TBEが空気圧拡張術後の長期成功を症状評価単独より良く予測するとされることを確認した閲覧 2026-08-04