スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Eckardtスコア

Eckardt score

臓器系
消化器
科目
Internal MedicineSurgery
トピック
内科学 G-01:食道・胃疾患外科学 B/06:食道憩室とアカラシア
構成:症状
嚥下障害胸痛体重減少
適用疾患
アカラシア過収縮性食道

🧠 全体像:は、の重症度と治療効果を、嚥下障害・逆流・胸痛・体重減少という4つの症状項目だけで追跡する、患者の訴えに基づくシンプルな指標である。各項目を0〜3点で採点し合計0〜12点とし、3点以下への低下を治療成功()の目安とする。(PD)・(LHM)・のいずれの治療後にも共通して使われる、いわば「版の」である。⚠️ ただし内視鏡・・タイムドのようなを置き換えるものではない。

目的と適用場面

内容
目的 の症状重症度を数値化し、治療前後で比較する
対象 と診断され、PD・LHM・・注射などの治療を受ける(受けた)患者
使う場面 治療前の重症度評価、治療後のでの症状改善の追跡、での指標
評価しないもの そのものの診断(内圧検査・造影・内視鏡の代わりにはならない)、食道の排出障害のな程度

もとはで確定診断された患者をで治療した研究(Eckardt VF, 1992年)で導入されたで、Vantrappen分類やModified Achalasia Dysphagia Scoreに代わって、過去10年ほどでほぼすべての治療研究の標準指標として使われるようになった1。

構成要素と配点

⭐ 4項目は均等に重み付けされ、いずれも0〜3点の4段階で採点する1。

嚥下障害

0点 1点 2点 3点
なし 時々 毎日 毎食

逆流

0点 1点 2点 3点
なし 時々 毎日 毎食

胸痛

0点 1点 2点 3点
なし 時々 毎日 毎食

体重減少

0点 1点 2点 3点
なし 5kg未満 5〜10kg 10kg超

合計は0〜12点2。💡 4項目のうち嚥下障害だけでスコアの大部分を説明できるとされ、胸痛・体重減少はむしろ尺度としての性能を下げる要因とされている(詳しくは「限界」節)1。

⚠️ 「逆流」はでは酸逆流とは限らない。 の逆流はが開かないために食道内に停滞した未消化・非酸性の食物が戻ってくるものであり、胃酸の逆流()とは機序が違う(は効かない)。採点時に「がないから0点」と読み替えないこと。

解釈とカットオフ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='achalasia'>アカラシア</span>治療後に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Eckardt score'>Eckardtスコア</span>で経過を追う"] --> B["嚥下障害・逆流・胸痛・体重減少を<br>各0〜3点で採点"]
    B --> C["合計点(0〜12点)を算出"]
    C --> D{"合計点は3点以下か"}
    D -->|"はい"| E["治療成功(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical remission'>臨床的寛解</span>)"]
    D -->|"いいえ(4点以上)"| F["不十分な治療効果<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='retreatment'>再治療</span>を検討"]
    F --> G["⚠️ ESやHRM単独では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment failure'>治療失敗</span>と断定せず<br>タイムド<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barium esophagography'>バリウム食道造影</span>で再評価する"]
合計点 意味・対応
0〜1点 病期0 無症状
2〜3点 病期I 軽症。多くの治療研究で「治療成功」の基準(≦3点)に含まれる
4〜6点 病期II 中等症。4点以上は「不十分な治療効果」の目安1
6点超 病期III 重症

(Stage 0〜III)は合計点をさらに4段階に区分したもので、0〜1点=病期0、2〜3点=病期I、4〜6点=病期II、6点超=病期IIIとする2。⭐ 実務で最も使われるのは病期そのものより合計3点以下か否かというで、・LHM・PD・()のいずれの研究でも「ES≦3」を臨床的成功の定義として繰り返し用いている1。

アカラシア以外での使われ方

ESはの治療研究のために作られ、の検証もを対象に行われている。一方で、同じく嚥下障害と胸痛を主症状とする痙攣性・性のの試験でも、症状の測定にESが流用されている。 代表例がに対するの試験(23例)で、3か月時点の症状評価にESが用いられ、群とシャム群で改善が同等という結果になった3。

⚠️ 「使われている」ことと「その疾患でが検証されている」ことは別である。 以外の運動障害でESを読むときは、①体重減少の項目がその病態では動きにくいこと、②でも大部分の情報が嚥下障害項目に由来すること(後述)の2点を踏まえ、内圧所見・食道排出の客観評価と併せて解釈する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ ES単独、または単独ではと断定しない。 治療後の食道排出は内圧所見と乖離することがあり、症状の評価にはタイムド(TBE)を第一選択とすることが推奨17として明記されている1。

⚠️ ・の検証は限定的である。 は、が()の検証に求める3段階の手順(患者インタビューによる項目生成→集団での運用→構造化インタビューでの再検証)が確立する前に、の意見をもとに作られた尺度である。後年の系統的な再検証では・がいずれも限定的と評価され、スコアのばらつきの大部分が嚥下障害項目だけで説明され、胸痛・体重減少項目はむしろ尺度全体の性能を下げていると指摘された1。

⚠️ の確定診断には使わない。診断はによるが担い、はあくまで診断後の重症度・治療効果の追跡指標である。

まとめ

  • は、嚥下障害・逆流・胸痛・体重減少の4項目を各0〜3点で均等に採点し、合計0〜12点での症状重症度を数値化する。
  • 合計点は0〜IIIにも区分されるが(0〜1/2〜3/4〜6/6点超)、実務では合計3点以下=治療成功というが最も広く使われる。
  • PD・LHM・・など、治療法を問わず指標として使われる標準的なである。
  • ・の検証は限定的で、スコアの大部分は嚥下障害項目だけで説明されるとされる。
  • 以外(など痙攣性の運動障害)の試験でも指標として流用されるが、それらの疾患でが検証されているわけではない。
  • ES単独やHRM単独でと断定せず、タイムドなどと組み合わせて評価する。診断そのものには使わない。

出典

  1. 1.ACG Clinical Guidelines: Diagnosis and Management of Achalasia(American College of Gastroenterology(Vaezi MF, Pandolfino JE, Yadlapati RH, Greer KB, Kavitt RT)・2020)eScholarshipに置かれた著者最終稿(Am J Gastroenterol 115:1393-1411の author manuscript)の全文で次を確認した。ESは嚥下障害・逆流・胸痛の3主症状に、栄養を保てるかの指標として体重減少を加えた4項目からなり、4項目は均等に重み付けされ各0〜3点で採点され合計0〜12点となること(原文:'Each of the 4 components are equally weighted and scored from 0 to 3 for a cumulative range of 0–12')、合計3点を超えることが『不十分な転帰』とされること(原文:'a threshold value of greater than 3 is considered to be a suboptimal outcome')、ESの普及が専門家の意見に基づいたものでVantrappen分類やModified Achalasia Dysphagia Scoreに代わって用いられるようになったこと、ESがFDAの患者報告アウトカム(PRO)妥当性検証の3段階手順が定まる前に作られた尺度であること、Taftらの再検証で信頼性・妥当性が限界的(marginal)と評価され『スコアの大部分が嚥下障害項目だけで説明できる』とされ胸痛・体重減少項目がむしろ尺度の性能を下げるとされたこと、そして推奨17がES単独または高解像度食道内圧検査単独で治療失敗を定義しないよう推奨し、治療後の持続・再燃症状の評価には時間測定バリウム食道造影(TBE)を第一選択とすることを確認した。urlは規約に従いDOIを掲げているが、逐語で照合したのは著者最終稿である。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Evaluation of Esophageal Achalasia: From Symptoms to the Chicago Classification(Arquivos Brasileiros de Cirurgia Digestiva(Laurino-Neto RM, Herbella F, Schlottmann F, Patti M)・2018)Eckardtスコアの4項目(体重減少・嚥下障害・胸痛・逆流)それぞれの0〜3点の採点基準、合計点0〜1が臨床病期0、2〜3が病期I、4〜6が病期II、6点超が病期IIIに対応する病期分類を確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Botulinum toxin for the treatment of hypercontractile esophagus: Results of a double-blind randomized sham-controlled study(Neurogastroenterology & Motility・2019)抄録のMethods・Resultsで、シカゴ分類で定義された過収縮性食道運動障害のうち有意な嚥下障害または胸痛を有する23例を無作為化した二重盲検シャム対照試験において、**3か月時点の症状評価にEckardtスコアが用いられた**こと、症状改善は両群で同等でありボツリヌス毒素はシャム手技に優らなかったことを確認した。全文は未取得で、確認したのは抄録の範囲にとどまる。閲覧 2026-09-06