内科学

内科学 · L-44

胃食道逆流症・嚥下障害の鑑別

GERD and Differential Diagnosis of Dysphagia

前提:病態
食道の病理
前提:正常
消化管の運動機能とその調節
疾患
Plummer-Vinson症候群遠位食道痙攣過収縮性食道血管輪食道胃接合部流出障害食道輪輪状咽頭筋障害
症状
胸やけ呑酸嚥下障害嚥下痛
検査値
機能的内腔イメージング
画像所見
コークスクリュー食道嚥下造影検査嚥下内視鏡検査
スコア
Los Angeles分類

🧠 全体像:は逆流が煩わしい症状または合併症を生じる状態である。嚥下障害は症状で、口腔咽頭性か食道性か、固形食だけか液体もかを聞き分け、内視鏡・造影・内圧検査を選ぶ。

GERD

一過性弛緩、、腹圧上昇、低下などが関与する。典型症状はと酸逆流で、食後・臥位で悪化する。、嗄声、症状は非特異的で、GERD以外の原因も先に評価する。H. pyloriはGERDの一般的な直接原因とはみなさない。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heartburn'>胸やけ</span>・酸逆流"] --> B{"嚥下障害・出血・体重減少・貧血など"}
    B -->|"あり"| C["上部内視鏡を優先"]
    B -->|"なし"| D["8週程度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proton pump inhibitor'>PPI</span>試験"]
    D --> E{"反応良好"}
    E -->|"はい"| F["最小<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective dose'>有効量</span>へ調整"]
    E -->|"いいえ"| G["服薬法・別診断を確認"]
    G --> H["内視鏡±逆流モニタリング"]
    H --> I["未証明GERD:原則<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proton pump inhibitor'>PPI</span> offでpH検査"]
    H --> J["証明済みGERDの難治症状:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proton pump inhibitor'>PPI</span> onでpH<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impedance'>インピーダンス</span>"]

症状、リスク、難治例ではを行う。内視鏡が正常でもGERDを否定できず、確定が必要なら携帯型pH検査またはpHを用いる。

💡 Lyon consensus 2.0(2024)が「どこからがか」の数値を決めている。 食道内pH/pHの(AET)は>6%での確定、<4%は否定的所見で、その間は不確定帯として症状関連指標や補助所見を加えて判断する1。内視鏡側では、グレードB以上の食道炎・生検で確定した・がGERDの確定的証拠になる。グレードAだけでは確定にしない——健常者の5〜7.5%にも見られるためである1。 2022も同様にグレードAは単独で確定診断に不十分、グレードCはほぼ常に確定的とし、グレードC/Dでは無期限の維持療法またはを勧め、この段階で中止下の逆流モニタリングを診断目的に行わないとする2。

検査はGERD単独の診断目的には用いず、狭窄・解剖・に使う。内圧検査はGERDを直接診断せず、運動障害評価や前に行う。

治療

  • ・肥満では減量し、就寝前2〜3時間の食事を避け、夜間症状ではを行う。個人で再現性のある誘発食品・喫煙を調整する。
  • は通常食前30〜60分に服用し、症状・食道炎に応じ8週程度使用する。反応不十分なら、時刻、診断を見直してから増量・変更する。
  • ⚠️ 「抵抗性」を名乗る前に、GERDが証明されているかで道が分かれる。 適正用量・適正服用でも症状が残る例では、まず服薬タイミングとを潰す。そのうえでGERDがに未証明ならを中止して(off )pH検査を行い、逆流そのものが本当にあるかを問う。すでにGERDが証明済みで難治なら、継続下(on )のpHで残存酸逆流・非酸逆流・逆流過敏・を切り分ける12。
  • 長期治療は重症、など適応を明確にし、最小とする。
  • に逆流が確認され、内科治療を望まない/不十分な選択例では、などを専門評価する。

合併症には、出血、、、腺癌がある。

💡 の間隔は「一律」ではなくなった。 2022年の改訂は、スクリーニングに非内視鏡的手法(嚥下型細胞採取デバイスなど)を認め、短分節の間隔を緩和した。異形成の扱いは推奨の強さが2段に分かれる——高異形成・では「術よりを推奨」(強い推奨、エビデンスの質は中等度)だが、確認済みの低異形成では「高異形成・への進展リスクを下げるためを提案し、確認済み低異形成に対するも許容される代替とする」(条件付き推奨、エビデンスの質は中等度)である。やのルーチン使用は、データ不足として推奨が出せなかった3。

⚠️ 低異形成を「推奨」と書くと、許容されている選択肢(厳重な)が消える。 低異形成は病理医間のが低く(低異形成42%・異形成不確定23%に対し、非異形成79%・高異形成71%)、市中診断の低異形成293例を専門病理医パネルが再判定した研究では73%が格下げされ、低異形成が確認されたのは27%にとどまった。だからこそはここを条件付きに置き、患者と相談して治療か監視かを決める形にしている3。詳細はを参照。

嚥下障害の鑑別

特徴 口腔咽頭性 食道性
訴え 飲み込み開始困難、鼻への逆流、むせ、 飲み込めるが胸・頸部でつかえる
出現時期 嚥下直後 嚥下数秒後
主な原因 脳卒中、Parkinson病、ALS、重症筋無力症、筋疾患、、 狭窄・癌・・、、攣縮、強皮症
危険 誤嚥、肺炎、 、癌、穿孔

原因を運動障害と構造異常に分ける

部位 運動・神経筋性 構造性・閉塞性
口腔咽頭 脳卒中、Parkinson病、、・外傷、、Guillain–Barré、重症筋無力症、、炎症性筋障害、強皮症 、、頸部手術後、放射線・薬物性、感染、骨棘、深頸部病変、
食道 、・疾患、強皮症などの運動低下 食物、、好酸球性・感染性・、、、憩室、
食道外圧迫 ― 甲状腺腫、・リンパ節、、・、

固形食のみで始まり進行するなら機械的狭窄、固形・液体の両方が初期から困難なら運動障害を示唆する。急速進行、体重減少、貧血、、出血、高齢発症、食物完全栓塞は緊急/早期評価を要する。唾液も飲み込めないは緊急内視鏡の適応である。

口腔咽頭性はまたはで誤嚥と安全なを評価する。食道性は上部内視鏡と生検を第一にし、は粘膜が正常に見えても生検する。高度やZenker、疑いでは検査が補完し、構造病変がなければを行う。

⚠️ の診断から反応性の項目が外れた(2018年)。 かつては「に反応すればではなくPPI反応性食道好酸球増多」と切り分けていたが、2018年のAGREE国際合意はこの区別を廃止した。現在の診断要件は、①食道機能障害の症状、②食道生検で当たり好酸球≥15個(約60個/mm²)、③食道好酸球増多を来す他疾患の包括的評価——の3点で、治療試験は診断要件ではなく肢という位置づけになった4。

💡 内圧検査の読みは(2021)に従う。 第4版は(EGJOO)の扱いを厳しくし、内圧所見だけのEGJOOは常に臨床的に不確定とみなして、確定にはタイムドやFLIPの支持的所見を求める。IRPの異常上限は体位(仰臥位/座位)と機器で違うこと、内視鏡・画像でが確認された時点でこの分類自体を当てはめられないことも明記されている5。

まとめ

  • 典型GERDで症状がなければ適切な試験、症状があれば内視鏡を優先する。
  • 嚥下開始時のむせは口腔咽頭性、嚥下後のつかえは食道性を示唆する。
  • 固形のみか液体もか、進行性かを確認し、内視鏡・造影・内圧検査をて使う。
  • 数値の正本は、逆流がLyon consensus 2.0(AET >6%/<4%)、が好酸球≥15個/HPF、運動障害がである145。

出典

  1. 1.Updates to the modern diagnosis of GERD: Lyon consensus 2.0(Gut(国際ワーキンググループ)・2024)食道内pH/pHインピーダンスの酸曝露時間(AET)が6%超で病的逆流を確定し4%未満は否定的所見であること、Los Angeles分類グレードB以上の食道炎・生検確定バレット食道・消化性狭窄がGERDの確定的証拠であること、グレードA食道炎は健常者の5〜7.5%にも見られ単独では確定的証拠にならないこと閲覧 2026-08-25
  2. 2.ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease(American College of Gastroenterology・2022)グレードAは単独でGERD確定診断に不十分であること、グレードCはほぼ常にGERD確定的であること、グレードC/Dでは無期限の維持療法または逆流防止手術を推奨しPPI中止下の逆流モニタリングを診断目的に行わないこと、非びらん性GERD(NERD)の診断はPPI中止下の内視鏡でのみ確定できること閲覧 2026-08-25
  3. 3.Diagnosis and Management of Barrett's Esophagus: An Updated ACG Guideline(American College of Gastroenterology・2022)全文(PMC10259184のHTML。ブラウザUA付きcurlで200。Europe PMCのfullTextXMLは500を返す)で確認した。改訂の主な変更点は、バレット食道スクリーニングに非内視鏡的手法を許容したこと、短分節バレット食道のサーベイランス間隔を緩和したこと、内視鏡治療施設の症例数基準を設けたこと。⚠️ 異形成への内視鏡治療は推奨の強さが2段に分かれる——推奨17は逐語で "We recommend EET compared with esophagectomy in patients with BE with HGD or IMC (strength of recommendation: strong; quality of evidence: moderate)"、推奨18は逐語で "We suggest endoscopic therapy in patients with BE with confirmed LGD to reduce the risk of progression to HGD/EAC, with endoscopic surveillance of confirmed LGD as an acceptable alternative (strength of recommendation: conditional; quality of evidence: moderate)" であり、低異形成は suggest(条件付き)で内視鏡サーベイランスが許容される代替として並記されている。異形成判定の一致率は非異形成79%・高異形成71%に対し低異形成42%・異形成不確定23%で、市中診断の低異形成293例は専門病理医パネルの再判定で73%が格下げされ、低異形成が確認されたのは27%だった。化学予防やバイオマーカーのルーチン使用はデータ不足で推奨を出せなかった。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Updated International Consensus Diagnostic Criteria for Eosinophilic Esophagitis: Proceedings of the AGREE Conference(Gastroenterology・2018)好酸球性食道炎は食道機能障害症状と食道生検の高倍率視野当たり好酸球15個以上(約60個/mm²)、および食道好酸球増多を来す他疾患の包括的評価により診断すると定め、PPI治療試験を診断要件から外した閲覧 2026-08-25
  5. 5.Esophageal motility disorders on high-resolution manometry: Chicago classification version 4.0(Neurogastroenterology & Motility・2021)高解像度内圧検査による食道運動障害の分類第4版。食道胃接合部流出障害(EGJOO)の内圧診断は常に臨床的に不確定とみなし、確定にはタイムドバリウム食道造影またはFLIPの支持的所見を要すること、IRPの異常上限は体位と機器で異なること、内視鏡・画像で機械的閉塞が確認された時点でこの分類自体を適用できないことを定めた閲覧 2026-08-25