微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 蠕虫

Dirofilaria repens

分類
線虫・組織 / Nematodes (tissue)Dirofilaria
科目
Medical Microbiology
トピック
4/36: Strongyloides stercoralis, Dirofilaria repens5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention5/18: Causative agents of arthropod-borne parasitic infections (list) and their diagnosis

🧠 全体像Dirofilaria repensD. immitisと同じくイヌを終宿主とし、ヒトはで成虫にならない点も共通する。だが寄生部位が違う——D. immitisがイヌの心臓・肺動脈に住み着くのに対し、本種はイヌの皮下組織に寄生するため、ヒトでも皮下・眼瞼周囲に移動性の結節を作る。「肺の孤立結節」のD. immitisに対し、本種は「動くしこり」——同属2種でこれほど病像が違う好例である。

微生物学的な特徴

  • 線虫(糸状虫)。D. immitisの近縁種で、イヌ(まれにネコ)の皮下組織・結合組織に寄生する。
  • ヒトでも同様に皮下組織・眼瞼周囲の結合組織へするが、ここでも成虫にならず幼虫のまま彷徨うにとどまる。
  • D. immitisと異なり肺動脈系へのはなく、心肺症状を来さない

生活環

flowchart TD
    A["イヌが蚊に刺され感染"] --> B["幼虫が皮下組織で発育し成虫化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microfilaria'>ミクロフィラリア</span>を<br>皮下・血中に放出"]
    C --> D["蚊が吸血時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microfilaria'>ミクロフィラリア</span>を<br>取り込み次のイヌへ媒介"]
    E["ヒトが蚊に刺された場合"] --> F["幼虫が皮下組織にとどまり<br>移行を続ける"]
    F --> G["成虫になれずに死滅、<br>または長期間幼虫のまま生存"]
    G --> H["局所の炎症性結節、<br>時に虫体が皮下を移動"]

病原性の仕組み

  • 幼虫が皮下組織・下を移動する際の局所炎症反応が病態の主体である。
  • D. immitisの幼虫が肺動脈で速やかに死滅するのと対照的に、本種の幼虫は生存したまま数か月〜数年にわたり組織内を移動し続けることがある——患者自身が「しこりが移動する」とすることがあるになる。
  • 眼瞼・へのでは腫脹・充血・を来す。

感染経路と疫学

  • 蚊が媒介し、イヌの皮下が流行する南欧・地中海沿岸、東欧、南西アジア、スリランカなどで人体症例が集積している。
  • ペットの海外渡航・輸入犬の増加に伴い、従来の非でも例が報告されるようになっている。

起こす疾患

ヒトの:移動性・非移動性の皮下結節、眼瞼・腫脹。まれに・陰嚢など特殊部位へのも報告される。

診断

  • 臨床像(「しこりが移動する」という病歴)と、摘出組織の病理学的同定による確定診断が基本。
  • 画像検査(超音波)で組織内の線状の虫体を描出できることがある。
  • 血清学的検査は種特異性が低く補助的な位置づけにとどまる。
  • 摘出前の臨床診断では・寄生虫以外の皮下腫瘤との鑑別が問題になり、「動くしこり」という病歴の聴取が鑑別の手がかりになる。
  • 好酸球増多を伴うことがあるが、必発ではない。

治療と予防

  • 外科的摘出で、虫体を確実に除去することを目的とする。
  • 薬物療法()の位置づけは確立していない。
  • 予防はイヌの定期と蚊対策——D. immitisと共通の対策になる。

まとめ

  • D. repensはイヌの皮下組織に寄生する糸状虫で、蚊が媒介する。ヒトはD. immitisと同じくで成虫にならない。
  • 寄生部位の違いから病像が対照的:D. immitisは「肺の孤立結節()」、本種は「移動する皮下のしこり」。
  • 幼虫は生存したまま長期間組織内を移動し続けることがあり、としてされるのが特徴的。
  • 確定診断・治療とも外科的摘出が中心で、薬物療法は確立していない。
  • 南欧・地中海沿岸で人体症例が集積しており、北米・アジア中心のD. immitisとは分布域も異なる。