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Microbe Atlas · 細菌

T. pallidum ssp. pertenue

分類
スピロヘータ / SpirochetesTreponema
性状
Gram陰性 (G−)らせん菌 Spirochete
科目
Medical Microbiology
トピック
2/29: Treponema genus

🧠 全体像:T. pallidum ssp. pertenueはと遺伝的にほぼ区別できないでありながら、性行為ではなく熱帯地域の小児ので伝播するの起因菌である。同じ生物学的な武器(でしか見えない、培養不能、が陽性になる)を持ちながら、と地理が違うだけで「性感染症」ではなく「小児の熱帯皮膚病」という全く別の臨床像になる点がこの菌を学ぶ意味である。

微生物学的な特徴

形態・染色性・培養不能という性質はと共通で、詳細はT. pallidum ssp. pallidumのノートを参照。T. pallidum内の間はゲノムレベルでの識別が難しく、地理的分布と臨床像から菌種を推定するのが実務的なアプローチになる。

感染経路と疫学

  • 非性行為感染:性器ではなく小児の皮膚どうしの直接接触で伝播する。軽微な外傷(・)を介した感染が中心で、ハエなど昆虫によるも報告される
  • 患者の75〜80%は15歳未満、発症のピークは6〜10歳で、男女差はない1
  • 潜伏期は9〜90日(平均21日)1
  • アフリカ・アジア・ラテンアメリカ・太平洋の温暖湿潤な熱帯林地域に分布し、現在15か国が国とされる。多くは保健サービスから遠い農村で、貧困・低い社会経済状況・不十分な衛生が拡散を助ける1
  • ヒトが現時点で唯一のと考えられている——だからこそ撲滅が目標になりうる1
  • は撲滅対象の(NTD)の一つに指定しており、地域全体への(下記)による排除戦略が進行中

起こす疾患:フランベジアの病期

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-to-skin contact'>皮膚接触</span>感染<br>(小児、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open wounds'>開放創</span>から侵入)"] --> B["一次病変:mother yaw<br>隆起した肉芽腫性丘腫(フランボワーズ様)"]
  B --> C["数週〜数か月後<br>血行性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>に播種"]
  C --> D["二次病変:daughter lesions<br>多発する隆起性の黄色病変<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='long bone'>長管骨</span>・手指の疼痛と腫脹(指炎)"]
  D --> E["未治療で数年後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tertiary'>三次</span>病変(少数例)"]
  E --> E1["破壊性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin ulceration'>皮膚潰瘍</span>・瘢痕"]
  E --> E2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periostitis'>骨膜炎</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='saber shin'>サーベル状脛骨</span>"]
  E --> E3["鼻・口蓋の破壊<br>(gangosa)"]
  • :に隆起した(パピローマ)・肉芽腫性の丘腫が生じ、表面がフランボワーズ(木苺)様の外観を呈することが名称の由来。この病変には菌が充満しており感染性が高い。未治療ではし、潰瘍型になると診断が難しくなって血清学的確認を要する1
  • :初感染の数週〜数か月後、血行性・に播種して多発する隆起性の黄色病変が生じる。・手指の疼痛と腫脹(指炎。特に)を伴うことがある1
  • 病変:未治療例の一部で数年後に生じる破壊性病変。皮膚の潰瘍・、の進行によるなどのをきたすが、梅毒のと異なり・中枢神経系の病変は伴わないとされる

診断

  • 臨床像(フランボワーズ様皮膚病変の分布・年齢・地理的背景)が出発点になるが、臨床診断だけでは足りない
  • ⚠️ 臨床的にと誤認される潰瘍の約40%は、なHaemophilus ducreyiによるものである1。「熱帯地域の小児の=」と決めつけない
  • PCRが皮膚病変からの検出による確定診断の手段であり、アジスロマイシン耐性の監視にも用いられる。後と排除後ので重要になる1
  • による直接検出も可能だが、実務の中心は血清反応とである

⚠️ が陽性になり、梅毒との鑑別が問題になる。 ・トレポネーマ検査(//)とも梅毒と区別できないため、流行地の成人での解釈には慎重な臨床評価が必要とされる1。流行地の患者では発症年齢(小児期)・性器病変の欠如・皮膚病変の分布から臨床的に鑑別する。のスクリーニングでの原因になりうる点も要注意。

治療と予防

  • ⭐ 単回経口アジスロマイシン30 mg/kg(最大2 g)が推奨治療——注射を要さず地域全体へのに適することが撲滅戦略の前提になっている1。パプアニューギニアの小児250例の無作為化試験で、6か月後の治癒率はアジスロマイシン群96%(106/110)、群93%(105/113)、治療差 -3.4%(95%CI -9.3〜2.4)でが示された2
  • 単回筋注(10歳未満0.6百万単位・10歳超1.2百万単位)は「単なる代替」ではなく、アジスロマイシン後の臨床的が疑われる患者、またはアジスロマイシンを使えない患者に位置づけられている1
  • 治療4週後に再診する。 95%を超える例で臨床的に完全治癒しているのが通常で、が推定される場合は検査を行い、で治療する1
  • ⚠️ 単回投与でも耐性は出る。 パプアニューギニアのLihir島(人口16,092)でカバー率84%のを行った42か月のでは、活動性のが1.8%から18か月で0.1%まで下がったあと再増加し、42か月で0.4%になった。36・42か月の時点で同一村の5例がアジスロマイシン治療後に臨床的失敗を示し、23S遺伝子の2コピーともにA2059G変異()が検出された——T. p. pertenueのと一村内での拡散の最初の報告である3
  • ⚠️ ただし割合としてはまれである。同じ研究で後に確定した208例のうち23S rRNAを増幅できた186例(89.4%)の97.3%(181例)は野生型だった3。も耐性株の出現を「ごくまれだが潜在的な」と位置づけ、臨床の綿密な監視と生物学的を求めている1
  • 💡 再増加の主因は耐性よりも時に不在だった人での再活性化で、地域全体の負担の70%超がそこに由来した——の反復が必要でありうるとされている3。も、パプアニューギニアの研究をもとに6か月間隔で3回のを行うと1回だけの場合より活動性・潜伏性のが有意に下がると述べている1
  • 撲滅の方法は流行地の全住民へので、最低90%のカバー率を目標とする。①血清学的に確認された新規土着例が3年連続でない ②で証明される症例がない ③1〜5歳児の血清調査で3年連続して伝播の証拠がない の3基準で撲滅を判定する1
  • 患者のにはを行う。衛生教育も柱で、ワクチンはない1

まとめ

  • T. pallidum ssp. pertenueはと遺伝的にほぼ同一だが、小児ので伝播するの起因菌である。患者の75〜80%が15歳未満、ピークは6〜10歳、潜伏期は9〜90日(平均21日)。
  • 病期は一次病変(フランボワーズ様のmother yaw)→二次病変(多発daughter lesions、指炎)→未治療例の一部で病変(皮膚破壊・)と進むが、心血管・中枢神経系の病変を伴わないとされる点が梅毒と異なる。
  • が陽性になるため、流行地では発症年齢・病変分布から臨床的に鑑別する。⚠️ ただし臨床的にと誤認される潰瘍の約40%は*Haemophilus ducreyi*で、確定にはを用いる。
  • 治療は単回経口アジスロマイシン30 mg/kg(最大2 g)で、最低90%のカバー率を目標とするがの撲滅戦略の柱。筋注はアジスロマイシン失敗例・使用不能例に用いる。
  • ⚠️ 後にA2059G変異によるアジスロマイシン耐性株の出現が報告されており(割合としてはまれで、後のの97.3%は野生型)、治療4週後の再診と耐性監視が前提になる。再増加のより大きな要因は時に不在だった人での再活性化で、6か月間隔でのの反復が検討されている。

出典

  1. 1.Yaws(World Health Organization・2023)2023年1月12日更新の版を取得して確認した。患者の75〜80%が15歳未満の小児で発症のピークは6〜10歳、男女差はないこと。潜伏期は9〜90日で平均21日。現在15か国が風土病国とされ、アフリカ・アジア・ラテンアメリカ・太平洋の温暖湿潤な熱帯林地域に分布すること。ヒトが現時点で唯一の保有宿主と考えられており、伝播は軽微な外傷を介したヒト-ヒト接触であること。初期病変はパピローマ(疣状腫瘤)で菌が充満し、未治療では潰瘍化し、潰瘍型の診断はより難しく血清学的確認を要すること。二次フランベジアは初感染の数週〜数か月後に多発する隆起性の黄色病変、または長管骨・手指の疼痛と腫脹(指炎)として現れること。診断では TPPA と RPR がフランベジアと梅毒を区別できず、流行地の成人での解釈には慎重な臨床評価を要すること。⚠️ 逐語で「About 40% of ulcers clinically misidentified as yaws are caused by the unrelated H. ducreyi bacterium.」とあり、臨床的にフランベジアと誤認される潰瘍の約40%は無関係な Haemophilus ducreyi によること。PCR は皮膚病変のDNA検出による確定診断に用い、アジスロマイシン耐性の監視にも使えること。治療は逐語で「Azithromycin (single oral dose) at 30 mg/kg (maximum 2 g) is the preferred treatment.」で、ベンザチンペニシリン(単回筋注、10歳未満0.6百万単位・10歳超1.2百万単位)はアジスロマイシン後の臨床的治療失敗が疑われる患者、またはアジスロマイシンを使えない患者に用いること、治療4週後に再診すること、治療失敗が推定される場合はマクロライド耐性検査とベンザチンペニシリンでの治療を要すること。撲滅の方法は流行地の全住民へのアジスロマイシン30 mg/kg(最大2 g)集団投薬(total community treatment、最低90%のカバー率)で、撲滅の3基準は①血清学的に確認された新規土着例が3年連続でないこと②PCRで証明される症例がないこと③1〜5歳児の血清調査で3年連続して伝播の証拠がないこと。ワクチンは存在せず、患者の接触者には経験的治療を行うこと。2026-09-27に再取得し、次も確認した。治療4週後の再診では「Complete clinical healing will be observed in over 95% of cases.」。パプアニューギニアの研究をもとに、6か月間隔で3回の集団投薬を行うと1回だけの場合より活動性・潜伏性フランベジアの有病率が有意に下がるとする。「Emergence of azithromycin-resistant strains is very rare but represents a potential threat.」と述べ、臨床の綿密な監視と生物学的サーベイランスが必要だとし、マクロライド耐性フランベジアの代替としてリネゾリドの評価が進んでいることにも触れる。病変の多くは四肢に生じる。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Single-dose azithromycin versus benzathine benzylpenicillin for treatment of yaws in children in Papua New Guinea: an open-label, non-inferiority, randomised trial(The Lancet(Mitjà O, et al.)・2012)抄録で、パプアニューギニアのLihir Medical Centreで2010年9月〜2011年2月に行われた非盲検・非劣性無作為化試験であること、対象が血清学的に確認されたフランベジアの生後6か月〜15歳の小児で、経口アジスロマイシン30 mg/kg単回(124例)と筋注ベンザチンベンジルペニシリン50,000単位/kg単回(126例)に割り付けられたこと、主要評価項目が治療6か月後のRPR抗体価の2段階以上の低下(一次潰瘍例では2週以内の上皮化も)で定義される治癒率であること、per protocol解析で6か月後の治癒がアジスロマイシン群110例中106例(96%)、ベンザチンペニシリン群113例中105例(93%)で、治療差 -3.4%(95%CI -9.3〜2.4)となり非劣性の事前規定基準を満たしたこと、薬剤関連有害事象はいずれも軽度〜中等度であったことを確認した(抄録に主要評価項目の数値が載っている範囲)。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Re-emergence of yaws after single mass azithromycin treatment followed by targeted treatment: a longitudinal study(The Lancet(Mitjà O, et al.)・2018)PMCのオープンアクセス全文で確認した。パプアニューギニアのLihir島(人口16,092)で2013年4月〜2016年10月に42か月追跡した縦断研究で、アジスロマイシン集団投薬(カバー率84%)とその後の標的治療により活動性フランベジアの有病率が1.8%から18か月時点の最低0.1%まで低下したが、24か月以降に再増加し42か月時点で0.4%へ有意に上昇したこと。各時点で地域全体の負担の70%超が集団投薬を受けなかった人、または旅行歴のない住民の新規感染に由来したこと。36か月と42か月の時点で同一村から活動性フランベジア5例がアジスロマイシン治療後の臨床的失敗を示し、いずれも23SリボソームRNA遺伝子の2コピーともにマクロライド耐性を与えるA2059G変異をPCRで検出したこと(集団投薬後のPCR確定208例のうち23S rRNAが増幅できた186例(89.4%)中181例(97.3%)は野生型)。著者らは、WHO戦略が高度流行地域では長期的な排除を達成せず、主因は集団投薬時に不在だった人での再活性化であり、集団投薬の反復が必要でありうると結論し、アジスロマイシン耐性 *T. p. pertenue* の出現と1村内での拡散を初めて報告したことを確認した。閲覧 2026-09-27