微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 細菌

T. pallidum ssp. pertenue

分類
スピロヘータ / SpirochetesTreponema
性状
Gram陰性 (G−)らせん菌 Spirochete
科目
Medical Microbiology
トピック
2/29: Treponema genus

🧠 全体像T. pallidum ssp. pertenueと遺伝的にほぼ区別できないでありながら、性行為ではなく熱帯地域の小児ので伝播するの起因菌である。同じ生物学的な武器(でしか見えない、培養不能、が陽性になる)を持ちながら、と地理が違うだけで「性感染症」ではなく「小児の熱帯皮膚病」という全く別の臨床像になる点がこの菌を学ぶ意味である。

微生物学的な特徴

形態・染色性・培養不能という性質はと共通で、詳細はT. pallidum ssp. pallidumのノートを参照。T. pallidum内の間はゲノムレベルでの識別が難しく、地理的分布と臨床像から菌種を推定するのが実務的なアプローチになる。

感染経路と疫学

  • 非性行為感染:性器ではなく小児(多くは15歳未満)の皮膚どうしの直接接触で伝播する。を介した感染が中心で、ハエなど昆虫によるも報告される
  • 熱帯の湿潤地域(西アフリカ・中央アフリカ、東南アジア、太平洋島嶼、南米の一部)に分布する貧困・衛生インフラの乏しい地域の
  • WHOは撲滅対象の(NTD)の一つに指定しており、地域全体への(下記)による排除戦略が進行中

起こす疾患:フランベジアの病期

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-to-skin contact'>皮膚接触</span>感染<br>(小児、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open wounds'>開放創</span>から侵入)"] --> B["一次病変:mother yaw<br>隆起した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulation'>肉芽</span>腫性丘腫(フランボワーズ様)"]
  B --> C["数週〜数か月後<br>血行性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>に播種"]
  C --> D["二次病変:daughter lesions<br>多発する皮膚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periosteum'>骨膜</span>病変"]
  D --> E["未治療で数年後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tertiary'>三次</span>病変(少数例)"]
  E --> E1["破壊性の皮膚潰瘍・瘢痕"]
  E --> E2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periostitis'>骨膜炎</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='saber shin'>サーベル状脛骨</span>"]
  E --> E3["鼻・口蓋の破壊<br>(gangosa)"]
  • に隆起した腫性の丘腫が生じ、表面がフランボワーズ(木苺)様の外観を呈することが名称の由来
  • :数週〜数か月後、血行性・に播種した同様の皮膚病変が全身に多発する。による手指・の腫脹・疼痛(特に)を伴うことがある
  • 病変:未治療例の一部で数年後に生じる破壊性病変。皮膚の潰瘍・の進行によるなどの骨変形をきたすが、梅毒と異なり・中枢神経系は侵さない

診断

  • 臨床像(フランボワーズ様皮膚病変の分布・年齢・地理的背景)が診断の中心
  • による直接検出、PCRも利用できるが、確定診断の実務はと血清反応に依存する

⚠️ が陽性になり、梅毒との鑑別が問題になる。 ・トレポネーマ検査(TPHA/FTA-ABS)とも梅毒と区別できないため、流行地の患者では発症年齢(小児期)・性器病変の欠如・皮膚病変の分布から臨床的に鑑別する。のスクリーニングでの原因になりうる点も要注意。

治療と予防

まとめ

  • T. pallidum ssp. pertenueと遺伝的にほぼ同一だが、小児ので伝播するの起因菌である。
  • 病期は一次病変(フランボワーズ様のmother yaw)→二次病変(多発daughter lesions、)→未治療例の一部で病変(皮膚破壊・)と進むが、心血管・中枢神経系は侵さない点が梅毒と異なる。
  • が陽性になるため、流行地では発症年齢・病変分布から臨床的に鑑別する。
  • 治療は単回経口アジスロマイシンが第一選択で、WHOの地域撲滅戦略の柱になっている。