スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Danis-Weber分類

Danis-Weber classification

別名
Weber分類
臓器系
運動器
科目
Traumatology and Orthopedics
トピック
外傷学 33:足関節骨折の種類と治療
適用疾患
Maisonneuve骨折足関節骨折

🧠 全体像:は、(遠位)のがどの高さにあるかだけでをA・B・Cの3型に分ける、単純X線だけの分類である。基準線は(≒の高さ。文献による言い方の違いは「分類基準」の節を見る)で、遠位=A、同=B、近位=C。点数を足す採点表ではないので配点も閾値もない。⭐ 使い方の要点は2つある。ひとつは骨折が上がるほど靱帯結合が損傷している可能性が高くなること。もうひとつは、⚠️ 分類だけで安定性は決まらないことである——この分類はしか見ておらず、の内側(と三角靱帯)を完全に見落としている。安定性を決めるのは内側であって、の高さではない。

目的と適用場面

内容
目的 骨折のを靱帯結合との位置関係で表し、靱帯結合損傷の可能性を見積もる
対象 のうちにがあるもの
使う材料 単純X線(正面・側面・)のみ。・症状・は用いない
判定するもの 線と靱帯結合の上下関係のみ
判定しないもの の安定性、内側構造の損傷、の状態、手術適応そのもの

💡 この分類が生まれた理由が、そのままと短所になっている。 DanisとWeberは、に依存しない分類を作る目的で、X線所見に基づく分類を作った1。機転は実際には推測されることが多く確かめようがないが、の高さは誰が見ても分かる。そのぶん再現性が高い。その代わり、X線に写るの1点だけで型が決まってしまう。

分類基準

⚠️ 基準線の呼び方には2通りある。 「を基準とする」2書き方と、「の高さを基準とする」1書き方がある。靱帯結合はのすぐ上にあるので実質は同じ部位を指しており、どちらの言い方でも「線が関節面の高さより下か、同じか、上か」を見ていると理解してよい。

A型 — 靱帯結合より遠位

骨折が靱帯結合より遠位にあるものをA型とする2。はより遠位にあり、斜めまたは垂直のを伴うことがある1。

  • としては・内転型に対応する1。足部が内側へ返る力で外側は引き裂かれ、内側は押し潰される——という力の向きが、のとの垂直骨折という組合せを作る。
  • 靱帯結合はより近位に残るため、通常は損なわれない。
  • 孤立性のA型骨折は、骨片の転位または関節面の関与があるときに限っての対象になる2。

B型 — 靱帯結合と同高位

骨折が靱帯結合と同じ高さにあるものをB型とする2。はの高さから始まり、斜めに近位へ延びる1。としては・型に対応する1。

⭐ B型がもっとも判断の難しい型である。 靱帯結合が部分的に損なわれうるため、同じ「B型」の中に保存治療でよいものと手術を要するものが混在する。B型でを分けるのは骨折ではなく、内側構造が保たれているか——すなわちがの中央にとどまるかである。

C型 — 靱帯結合より近位

骨折が靱帯結合より近位にあるものをC型とする2。はより近位にあり、靱帯結合損傷を伴うことが多く、またはを伴いうる1。としては・型および・外転型に対応する1。

⚠️ はC型の極端な形である。 のが近位まで上がりきったもので、典型的には直下に生じ、通常は間接的な機転による2。だけを撮ると骨折が写野の外に残るため、C型を疑ったらまで触診し、必要なら下腿全長を撮る。

3型の対比

型 骨折 対応する 靱帯結合 内側構造
A 靱帯結合より遠位 ・内転 通常は保たれる 斜め・垂直のを伴いうる
B 靱帯結合と同 ・ 部分的に損なわれうる またはの有無が方針を分ける
C 靱帯結合より近位 ・、・外転 損傷を伴うことが多い またはを伴いうる
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle fracture'>足関節骨折</span>のX線で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral malleolus'>外果</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>を見る"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>は靱帯結合<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tibial plafond'>脛骨天蓋</span>の高さ)に対してどこか"}
    B -->|"遠位"| C["A型<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='supination'>回外</span>・内転型に対応"]
    B -->|"同<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high'>高位</span>"| D["B型<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='supination'>回外</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral rotation'>外旋</span>型に対応"]
    B -->|"近位"| E["C型<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pronation'>回内</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral rotation'>外旋</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pronation'>回内</span>・外転型に対応"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibula'>腓骨</span>近位まで上がれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Maisonneuve fracture'>Maisonneuve骨折</span>"]
    C --> G["型が示すのは靱帯結合損傷の可能性まで"]
    D --> G
    E --> G
    G --> H["安定性は内側構造と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='talus'>距骨</span>の位置で別に判定する"]

解釈

が上がるほど靱帯結合損傷の可能性が高い。 これがこの分類から読み取れる情報のほぼすべてである。A型では靱帯結合がより近位に残るので通常は無傷、C型ではが靱帯結合より上にあるので靱帯結合とが下から裂かれている——という力学の順序をそのまま反映している。

⚠️ ただし「C型だから手術、A型だから保存」ではない。 型が示すのは靱帯結合が壊れている可能性であって、実際の不安定性ではない。B型・C型では、術中にを20°として鉤で外側へ牽引し、靱帯結合の安定性を直接試験することが勧められている2。分類は「どこを確かめるべきか」を教えるが、確かめる作業を代替しない。

⭐ 再現性の高さがこの分類の実用的な価値である。 30例のX線を経験段階の異なる11名(研修医5名・整形外科医6名)が2回評価した研究では、の観察者間一致は中等度から優秀の範囲で高度に有意であり、平均して他の2分類(・AO分類)より有意に高い一致度を示した。評価者の経験が浅いことは再現性に悪影響を与えなかった3。どうしが骨折像を短い言葉で伝えるときにまずWeber型が使われるのは、この性質による。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ の内側を完全に見落としている。 は単純さゆえに間の意思疎通には容易な分類だが、の内側を完全に見落としている1。の有無もの有無も型に反映されないため、と(骨折+)が同じB型として並んでしまう。安定性の判断はこの分類の外で行う。

⚠️ を評価しない。 のは型に一切現れない。骨片の形態とへの関与は別途で評価する。

⚠️ 転位・・関節面のを表さない。 だけの分類なので、同じ型の中に転位のないものと著明に転位したものが混在する。

⚠️ がなければ使えない。 孤立性の、三角靱帯の単独損傷、孤立性のには適用できない。

⚠️ にも適用しない。ただし理由が違う。 の75〜90%はを伴うので「がない」からではなく、機転が違うからである——本分類は回旋外力によるのを見る体系であり、で潰れたの関節面を記述しない。

⚠️ 採点式のスコアではない。 配点も合計点ももなく、「Weber何点」という表現は存在しない。表に落とし込むときも配点欄を作らない。

💡 とは競合せず、見ている軸が違う。 は受傷時の足部と外力の向き(・ × 内転・外転・)で分類し、と骨がどの順序で破綻したかを段階として記述する。は結果として残ったの高さだけを見る。機転をたどりたいときはLauge-Hansen、X線を見て手短に伝えたいときはDanis-Weberと使い分ける。

まとめ

  • は骨折のを(≒の高さ。文献により基準線の呼び方が2通りある)との位置関係でA・B・Cに分ける、単純X線だけの分類である。
  • A=靱帯結合より遠位(・内転型)、B=同(・型)、C=近位(・/・外転型)。はC型の極端な形である。
  • が上がるほど靱帯結合損傷の可能性は高くなるが、分類だけで安定性は決まらない。B型・C型では術中に20°で外側へ牽引して靱帯結合を直接試験する。
  • 最大の弱点は内側(・三角靱帯)を見ていないことで、もも同じB型に入る。・転位・も表さない。
  • に依存しないぶん再現性が高く、・AO分類より観察者間一致が有意に高い。評価者の経験が浅くても一致度は落ちない。
  • 配点も閾値もない分類であり、採点式のスコアとして扱わない。

出典

  1. 1.Classifications in Brief: Lauge-Hansen Classification of Ankle Fractures(Clinical Orthopaedics and Related Research・2015)DanisとWeberが受傷機転に依存しない分類を作る目的でX線所見に基づく分類を作ったこと、A型が脛骨天蓋より遠位に生じ斜めまたは垂直の内果骨折を伴いうる回外・内転型に対応すること、B型が脛骨天蓋の高さから始まり斜めに近位へ延びる回外・外旋型に対応すること、C型が脛骨天蓋より近位に生じ靱帯結合損傷を伴うことが多く回内・外旋型および回内・外転型に対応すること、C型が内果骨折または三角靱帯損傷を伴いうること、Danis-Weber分類が単純さゆえに医師間の意思疎通には容易である一方で足関節の内側を完全に見落としていること。⚠️ 「機能的・X線学的転帰の予測因子となるのは単果骨折に限られる」という記述は本総説自身の報告ではなく他文献の引用である閲覧 2026-09-02
  2. 2.Fractures of the ankle joint: investigation and treatment options(Deutsches Ärzteblatt International・2014)外果骨折が靱帯結合より遠位ならA型、靱帯結合と同高位ならB型、靱帯結合より近位ならC型と定義されること、B型・C型では術中に足関節を内旋20°として鉤で外側へ牽引し靱帯結合の安定性を試験すべきこと、孤立性のA型外果骨折は骨片の転位または関節面の関与があるときにのみ観血的整復固定の対象になること、Maisonneuve骨折が典型的には腓骨頭直下に生じる高位腓骨骨折で通常は間接的な回内機転によること閲覧 2026-09-02
  3. 3.Evaluation of the Reproducibility of Lauge-Hansen, Danis-Weber, and AO Classifications for Ankle Fractures(Revista Brasileira de Ortopedia・2021)足関節骨折30例の正面・側面・true AP像を経験段階の異なる11名(研修医5名・整形外科医6名)が1か月の間隔をあけて2回評価した研究で、Danis-Weber分類の観察者間一致が中等度から優秀の範囲で高度に有意(p ≤ 0.0001)であり平均して他の2分類より有意に高い一致度を示したこと、評価者の経験が浅いことは分類の再現性に悪影響を与えなかったこと。Table 1の観察者間κは全体(n=55)でDanis-Weber 0.81/0.79に対しLauge-Hansen 0.43/0.52、AO 0.43/0.48であったこと。観察者内の再現性はLauge-Hansen分類で11名中9名にとどまり、専門医1名(p = 0.65)・研修医1名(p = 0.30)で再現性が示されなかったこと(PMC8249061として公開されている全文を閲覧した)閲覧 2026-09-02