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Disease Atlas · 運動器 · 外傷

Maisonneuve骨折

Maisonneuve fracture

別名
メゾヌーブ骨折
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 33:足関節骨折の種類と治療外傷学 32:足関節捻挫の診察・治療と足関節骨折の合併症解剖学 6.5:下肢:足関節と足
上位概念
足関節骨折
鑑別疾患
遠位脛腓靱帯損傷足関節捻挫
合併症
総腓骨神経麻痺変形性足関節症
関連疾患
三角靱帯損傷
症状
圧痛腫脹
スコア
Lauge-Hansen分類Danis-Weber分類

🧠 全体像:は、「を診て近位を触らないと見落とす」——この一点に尽きる骨折である。の力はで終わらず、遠位脛腓靱帯とを下から上へ裂きながら上行し、力が抜けるところ、すなわちの近位で骨を折る。だから患者はを痛がり、X線もしか撮られず、近位の骨折は写野の外に残る。側にはまたはがあり、脛腓間は不安定である。したがって治療の中心は近位ではなく、内側の再建との固定になる。

定義と骨折型

は、近位の骨折を伴うのである。54例の検討では「近位1/4の骨折を伴う」と定義され、骨折部位はが4例、近位1/4のうち骨頭直下の領域が50例だった1。教科書的には「近位1/3の骨折」と説明されることが多く、定義の切り方は文献によって幅があるが、いずれも「から遠く離れたの」を指している。

では、(遠位)の骨折を靱帯結合より遠位=A、同=B、近位=Cに分ける2。はWeber Cの極端型——骨折が近位まで上がりきったもの——と位置づけると理解しやすい。

受傷機転:力は下から上へ抜ける

⭐ +が典型である。 は「典型的には直下に生じるので、通常は間接的な機転による」もので、全体・・三角靱帯のによってが不安定化する2。

の力は次の順に伝わる。

flowchart TD
    A["足部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pronation'>回内</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral rotation'>外旋</span>"] --> B["内側が先に破綻<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='deltoid ligament rupture'>三角靱帯断裂</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial malleolar fracture'>内果骨折</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior tibiofibular ligament'>前脛腓靱帯</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interosseous tibiofibular ligament'>骨間脛腓靱帯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interosseous membrane'>骨間膜</span>を上行して裂く"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibula'>腓骨</span>近位で骨折"]
    E --> F["脛腓間が不安定になり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='talus'>距骨</span>が外側へ偏位"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle mortise'>足関節モルタル</span>の破綻"]

💡 なぜ内側が先に壊れるのか。 では内側の三角靱帯に張力がかかり、そこへが加わると内側の支持が最初に破れる。内側が破れるとは・外方へ動けるようになり、その動きが遠位脛腓靱帯を裂き、続いてを上へ裂いていく。「内側の損傷は、上へ抜けた力の入口である」——だからの圧痛を見たら近位を触る。

⚠️ 損傷部位の組み合わせは一定ではない。54例では骨折が80%、が50%、が37%に認められた一方で、内側構造が無傷だった例も13%あった1。「かが必ずある」と決めつけない。一方で、とのは常に伴う1。

診断

身体所見の核は腓骨近位の圧痛

⚠️ 外傷ではまで触診する。 初期のでを触れて(Maisonneuve損傷)の有無を確認すべきとされている2。の腫脹と疼痛に気を取られると、患者自身も近位の痛みを訴えないことがある。

診察部位 見るもの
近位(・その直下) 骨性の圧痛。ここを触らなければ診断は付かない
・三角靱帯 圧痛と腫脹(内側の破綻=力の入口)
脛腓間(前方の脛腓靱帯部) 圧痛。squeeze試験・。⚠️ 後2者はESSKA-AFASのコンセンサスから外されている(が低くに乏しい)ので、疑いを持つ契機にとどめ、これで診断しない(→ )
部の神経 はを回るため、・との感覚を確認する
・・・・ 併存損傷の除外2

⚠️ Ottawa Ankle Rulesでは拾えない。 あの規則が見るは後縁の遠位6 cmもしくはの先端、脛骨後縁の遠位6 cmもしくはの先端までで、近位はそもそも評価範囲に入っていない。規則が陰性でも、機転・脛腓間の圧痛・内側の圧痛があれば撮影範囲を広げる。

画像

  • 下腿全長の単純X線を撮る。 だけの撮影では近位骨折が写野の外に残る。正面・側面・に加え、を含む下腿の撮影を追加する。
  • 像では、、骨折、脛腓間clear spaceの拡大、のを見る。
  • を広く用いる。 54例の検討ではの広い使用が推奨され、特殊な状況ではも考慮すべきとされた1。内でのの位置は多様で、単純な開大だけでなくを伴う開大(20例)や後脛骨結節の後方への嵌頓(2例)まで生じる1。整復の可否と方法を決めるにはの情報が要る。

鑑別

疾患 見分け方
・機転で前方の圧痛が中心。近位と脛腓間に圧痛が無いことを確認して初めてと言える
孤立性の() 機転で脛腓間の圧痛があるが、近位に骨折が無い
通常のWeber C型 のが靱帯結合より近位だが下腿のまでにとどまる
の単独骨折 の内側損傷と脛腓間の不安定性を伴わない

治療

手術が基本である。 脛腓間が不安定な損傷であり、の位置が保てないため、保存治療の適応は限られる。

エビデンスは乏しく、系統的検索で採用できたのはレベル4の症例集積6件・計83例のみだったが、全体としての転帰は良好(89%が良好または優秀)で、次のgrade B・Cの推奨が示された3。

部位 方針
固定する
三角靱帯 していてもする必要はない
不安定なら3または4皮質を貫く1〜2本のスクリューで固定してよく、経皮的に設置してよい
近位の骨折 直接のは要らない(内側と靱帯結合を安定させればが保たれる)

⭐ 「折れているところを固定する」骨折ではない。 近位の骨折そのものは治療の対象ではなく、と脛腓間を安定させることが目的である。このが、この骨折を理解しているかどうかの分かれ目になる。

⚠️ 靱帯結合の安定性は術中に確かめる。 Weber B型・C型では、術中にを20°として鉤で外側に牽引し、靱帯結合の安定性を試験する2。

術後:を用いた場合は、まで約6週間は10〜20 kgまでのとする2。・回旋・脛腓間のclear spaceを術後X線で確認し、遅発性の整復不良がないか追跡する。

合併症

まとめ

  • は近位(近位1/4〜1/3)の骨折を伴うので、+の力がを下から上へ裂いて生じる。
  • 常にとがする。・・骨折を伴うことが多いが、内側構造が無傷の例も約13%ある。
  • 見落としの原因は撮影範囲である。外傷ではまで触診し、疑えば下腿全長を撮る。Ottawa Ankle Rulesは近位を評価しないので陰性でも安心できない。
  • 内でのの位置異常は多様(開大・・嵌頓)なのでを広く用いる。
  • 治療はの固定との固定が中心で、近位の骨折自体はを要さず、した三角靱帯もを要しない。
  • 使用時はまで約6週間のとし、整復不良は外傷後につながる。

出典

  1. 1.Pathoanatomy of Maisonneuve fracture based on radiologic and CT examination(Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery・2019)成人54例の検討でMaisonneuve骨折を「腓骨近位1/4の骨折を伴う足関節の骨折脱臼」と定義したこと、腓骨骨折の部位が腓骨頭4例・近位1/4の骨頭下部50例であったこと、後果骨折が54例中43例(80%)に、三角靱帯損傷が27例(50%)に、内果骨折が20例(37%)に認められ内側構造が無傷であったのは7例(13%)だったこと、腓骨切痕内の腓骨の位置が脛腓間2 mm超の開大11例・開大と腓骨外旋の合併20例・後脛骨結節の後方への嵌頓2例・完全な脛腓間離開1例と多様であったこと、Maisonneuve骨折には常に前脛腓靱帯と骨間脛腓靱帯の断裂が伴うこと、CTを広く用いるべきで特殊な状況ではMRIも考慮すべきであること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  2. 2.Fractures of the ankle joint: investigation and treatment options(Deutsches Ärzteblatt International・2014)Maisonneuve骨折を「典型的には腓骨頭直下に生じる高位の腓骨骨折で、通常は間接的な回内機転による」と記載し、下腿骨間膜全体・靱帯結合・三角靱帯の断裂によって足関節が不安定化すると説明していること、初期の身体診察で腓骨頭を触診して高位腓骨骨折(いわゆるMaisonneuve損傷)を確認すべきとしていること、Danis-Weber分類を靱帯結合より遠位A・同高位B・近位Cに分けて用いること、Weber B型・C型では術中に足関節を内旋20°として鉤で外側に牽引し靱帯結合の安定性を試験すべきこと、位置決めスクリューを用いた場合は抜去まで約6週間は10〜20 kgまでの部分荷重とすること、距骨・踵骨・足根舟状骨・Chopart関節・第5中足骨基部も触診して併存損傷を除外すべきこと閲覧 2026-09-02
  3. 3.Evidence-based treatment of maisonneuve fractures(The Journal of Foot and Ankle Surgery・2011)Maisonneuve骨折の治療に関する文献を1970年1月から2009年5月まで系統的に検索した結果、採用できたのはレベル4の症例集積6件・計83例のみであったこと、全体の転帰は74例(89%)が良好または優秀、9例(11%)がやや不良または不良であったこと、grade BおよびCの推奨として「内果は固定すべきである」「断裂した三角靱帯を直接修復する必要はない」「脛腓間の不安定性は3または4皮質を貫く1〜2本のスクリューで、経皮的に設置してよい」「腓骨近位の骨折そのものに内固定は要らない」を挙げたこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02