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Disease Atlas · 運動器 · 外傷

三角靱帯損傷

Deltoid ligament injury

別名
三角靱帯断裂足関節内側靱帯損傷
臓器系
運動器
科目
Traumatology and Orthopedics
トピック
外傷学 33:足関節骨折の種類と治療外傷学 32:足関節捻挫の診察・治療と足関節骨折の合併症
鑑別疾患
足関節捻挫
合併症
変形性足関節症
関連疾患
Maisonneuve骨折遠位脛腓靱帯損傷足関節骨折
症状
疼痛腫脹圧痛

🧠 全体像:三角靱帯はの内側支持機構そのものである。外側のに比べれば損傷ははるかに少ないが、⭐ 安定性の判断はここで決まる——がの中央にとどまれるかどうかを最後に押さえているのが内側だからである。だから最も重要な一文はこうなる。⚠️ 「が無い=内側は無事」ではない。 三角靱帯がすれば、X線にがにしか写らなくてもと等価の不安定性が生じる()。構造はとの2層に分かれ、役割が違う——がを、が・を主に安定化させる。単独損傷はまれで、外力によるやと組んで現れる。

解剖 — 2層で役割が分かれる

⚠️ の呼び名は文献ごとに一致していない。 6(4・2)とする記述が広く用いられる一方で、文献全体では最大16のが報告されており、唯一の合意は「との2平面に分かれる」ことだけである1。この不統一は学問上の細事ではなく、「三角靱帯を修復した」という報告どうしを比較できなくしている1。

の10体を解剖した研究では、5つのが記録された2。

層 出現 緊張する
10/10
10/10
9/10 —
10/10
9/10 —

(出現頻度と緊張のは2による。はどの検体にも認められなかった。)

⭐ とは止めているものが違う。 臨床・実験データからは、がの主たる安定化機構であり、は主にとを安定化させるという合意が得られている2。したがって、がの中で外側へ動くかどうかに直接効いているのはである。

💡 三角靱帯全体は扇形で、部位ごとに働く角度が違う。 遠位へ広がる三角形の形をしているため、前部はで、後部はで緊張する1。この性質から、どので受傷したかによって傷むが変わる。実験では、のとの長さ・張力はと回旋で大きく変わり、は主に底で変わっての影響は小さかった2。ここから、・型の機転では・・が危険にさらされ、ととくには保護されるとされている2。

疫学と受傷機転

⭐ 単独損傷はまれで、大半は他の損傷と組んで現れる。 のうち三角靱帯を侵すのは約5%、全靱帯損傷のうち3〜4%が三角靱帯の単独損傷にすぎない(いずれも総説が引用する数値)1。一方で、の最大40%にが併存すると見積もられている1。

⚠️ 不安定なでは、のほうがより多い。 不安定性のため手術を要したの観察研究では、56%に対して44%で、の患者は若い傾向にあった1。を用いた研究では、の・型IVと・型IVの86%にが認められた1。

主たるは(の有無を問わない)で、の足で不整地に着地する型が典型である1。・の機転でもの過度のによって生じ、この場合は靱帯結合の損傷を伴うことが多い1。では複雑な骨折・と組んで現れる1。研究では、損傷部位として最も多いのはの脛骨付着部であった1。

⚠️ 「必ず内側が壊れている」と決めつけない。 54例の検討ではは50%、は37%で、内側構造が無傷だった例が13%あった3。機転から推定した損傷は確かめるまで仮説である。

臨床像と診察

  • 受傷時に内側が裂ける感覚を訴えることがある。
  • medial gutter(より遠位)の圧痛が最も多い所見で、不安定性を呈した52例では100%にこの圧痛が認められた1。
  • 亜急性期には内側の「抜ける感じ」、慢性期には内側の持続する疼痛・腫脹・圧痛が残る1。
  • 慢性例では(を伴うことがある)を認める1。

⚠️ 内側の圧痛は感度は高いが特異度が低い。 内側の圧痛・腫脹・皮下出血それぞれの感度は20〜56%、特異度は71〜97%と報告されており1、急性期には内側の圧痛との機能不全とに相関を認めなかったという報告もある1。・・といったも、画像を伴わなければ評価として不十分とされている1。診察は疑いを持つ入口であって、決着させる手段ではない。

分類

はの部位で分ける1。

型 部位 頻度
I 近位または 72%
II 中間(が遠位に、が近位に付着したまま) 9%
III 遠位 19%

一般の靱帯損傷の3段階(I 、II 中等度の機能障害を伴う、III との消失)も併用される。⚠️ とで損傷の程度が異なりうるので、両者を分けて記載する1。

画像

flowchart TD
    A["内側の圧痛・腫脹がある<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle joint'>足関節</span>外傷"] --> B["正面・側面・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mortise view'>mortise像</span>"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibula'>腓骨</span>近位に痛みがあるか"}
    C -->|"あり"| D["膝を含む下腿全長を撮影しMaisonneuve型を除外"]
    C -->|"なし"| E{"medial clear spaceは"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weight-bearing'>荷重位</span>で5 mm以上"| F["内側の不安定性ありと判断する"]
    E -->|"5 mm未満だが疑いが残る"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を追加する"]
    B --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial malleolus'>内果</span>のfleck signを探す"]
    H -->|"あればmedial clear space拡大の可能性が高い"| E
    G --> I["靱帯結合・外側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligament'>靱帯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteochondral injury'>骨軟骨損傷</span>も同時に評価する"]
    F --> I
  • 単純X線:正面・側面・で骨折を除外する。⚠️ 近位に痛みがあれば膝を含めて撮影し、型の損傷を除外する1。
  • ⭐ の小骨片、いわゆるfleck signを探す。 性の・型損傷166例のでは、fleck signのある16例中15例(94%)でmedial clear spaceが拡大していた1。
  • :がへ傾くかを見る。のshiftを伴わないvalgus talar tiltが三角靱帯の単独損傷を示す所見で、4〜6 mmの拡大が陽性とされる1。
  • ⚠️ を1 mm動かすとが桁で変わる。 を基準にした研究では、medial clear spaceを3 mmとすると88.5%、5 mmで26.8%、6 mmで7.7%だった1。「わずかに開いている」を不安定と読まない。
  • は単純より大きなmedial clear spaceを与え、感度・特異度・で優る。より患者にとって快適でもある1。
  • MRIが軟部組織のである。・型IV骨折ではでmedial clear space 5 mmが診断的で、5 mm未満の症例はを追加する1。
  • は直視できる利点があるが、⚠️ 急性例で診断できたのは84.4%にとどまり、のは評価できない1。

治療

保存治療が基本

grade I・IIの損傷では外側のと同様に、活動の中止・冷却・・を内側支持の有無を問わず行う1。のまたはで3〜4週支持し、以後は無症状になるまでを漸増する1。

⭐ に併存するは、を固定しては放置してよいことが多い。 をし三角靱帯を保存治療とした150例では、平均3.5年で90%が満足していた1。50例を縫合固定と非固定にした研究では、平均17か月で就労能力・スポーツ活動・疼痛・腫脹に有意差が無かった1。

⚠️ ただし全例が良好なわけではない。 固定後もストレス像でが残った30例の前向きコホートでは、15か月時点で41%が、34%が疼痛によるを抱えていた1。

手術

比較研究3件192例のでは、修復群はmedial clear spaceとで優れたが、とには差が無かった1。総説自身の推奨は、ストレス画像で評価したうえで大多数には保存治療を試み、不安定性が確認されたら個別に手術を検討するというものである1。手術はに応じたによる修復が基本で、急性期の再建は原則として行わない1。術後は関節の安定性次第だが、一般に6週のを要する1。

⚠️ を固定してもの不安定性は解決しない。 はと併存しうるが、骨性の固定は性の不安定性に対処しない——を固定した27例のうち26%に三角靱帯機能不全のX線所見が残った1。

鑑別

疾患 見分け方
・機転で前方の上に圧痛。内側の圧痛と機転が無い
() に骨性の圧痛と。⚠️ 骨折があってもが併存しうる
機転で脛腓間に圧痛。⚠️ を伴うかどうかが安定・不安定を分ける
近位の圧痛。内側の圧痛があればまで触診する
慢性の。三角靱帯機能不全と併存することがある

経過と合併症

慢性の内側不安定性が残るとがへ傾き続け、内側のが進んで外傷後のへ向かう。⚠️ 不安定性の長期を示すデータは存在しない——については分類体系や治療経路を扱った研究も無く、推奨は一貫していない1。「どこまで放置してよいか」は現時点で答えの出ていない問いである。

まとめ

  • 三角靱帯はの内側支持機構で、との2層に分かれる。がを、が・を主に安定化させる。
  • ⭐ 「が無い=内側は無事」ではない。 はと等価の不安定性を生む()。
  • の呼称は文献ごとに一致しておらず(最大16束)、合意は2層構造だけである。この不統一が修復の報告を比較不能にしている。
  • 単独損傷はまれ(全靱帯損傷の3〜4%)だが、の最大40%に併存し、不安定な骨折ではより多い(56%対44%)。・型IVと・型IVでは86%にがある。
  • 診察ではmedial gutterの圧痛が最も多い所見だが特異度が低い。単独では不十分で、画像を伴わせる。
  • 画像はfleck sign、(のshiftを伴わない傾斜)、のmedial clear space、の順に進む。を3 mmにすると88.5%、6 mmで7.7%。
  • を固定して三角靱帯は保存、で多くは良好だが、不安定性が残ると1年以上たっても疼痛とが残る例がある。修復はmedial clear spaceと疼痛では優るがでは差が出ていない。
  • ⚠️ を固定しても性の不安定性は解決しない(固定例の26%に機能不全所見が残存)。

出典

  1. 1.Deltoid ligament injuries: A review of the anatomy, diagnosis and treatments(Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy・2024)PMC11605033として公開されている全文を閲覧した。文献検索で得た93件から47件を採用した総説であり、三角靱帯が浅層と深層の2平面に分かれるという点だけが文献上の唯一の合意で、6線維束とする記述に対して最大16の線維束が報告されており、この記述の不統一が修復・再建の報告を相互に比較できなくしていると述べていること、三角靱帯の前部が底屈で・後部が背屈で緊張すること、主たる受傷機転が外がえし(外旋の有無を問わない)で回内位の足で不整地に着地する型が典型であること、以下の数値をいずれも他文献の引用として記載していること(足関節捻挫のうち三角靱帯を侵すのは約5%、全足関節靱帯損傷の3〜4%が三角靱帯の単独損傷、足関節骨折の最大40%に三角靱帯損傷が併存、不安定性のため手術を要した足関節骨折では三角靱帯損傷56%が内果骨折44%より多く三角靱帯損傷例は若い傾向、関節鏡研究で回外・外旋型IVと回内・外旋型IVの86%に三角靱帯断裂、Hintermann分類の内訳が近位断裂72%・中間9%・遠位断裂19%、不安定性を呈した52例の100%でmedial gutterに圧痛、内側の圧痛・腫脹・皮下出血の感度20〜56%と特異度71〜97%、fleck signのある16例中15例(94%)でmedial clear spaceが拡大、関節鏡を基準にしたmedial clear spaceの偽陽性率が3 mmで88.5%・5 mmで26.8%・6 mmで7.7%、重力ストレス像が単純mortise像より大きなmedial clear spaceを与え感度・特異度・陰性的中率で優ること、重力ストレス像が用手ストレスより患者にとって快適であること、回外・外旋型IVでは荷重位のmedial clear space 5 mmが診断的で5 mm未満はMRIを追加すべきこと、急性例の関節鏡で診断できた三角靱帯損傷は84.4%にとどまり浅層の線維束は評価できないこと、腓骨骨折を観血的整復固定し三角靱帯を保存治療とした150例の90%が平均3.5年で満足していたこと、50例を縫合固定と非固定に無作為化した研究が平均17か月で就労・スポーツ・疼痛・腫脹に有意差を認めなかったこと、腓骨固定後もストレス像で三角靱帯損傷が残った30例では15か月時点で41%が歩行時痛・34%が疼痛による活動制限を有したこと、比較研究3件192例のメタ解析で修復群はmedial clear spaceと疼痛スコアが優れたが機能転帰と合併症率に差が無かったこと、内果骨折を固定した27例の26%に三角靱帯機能不全のX線所見が残ったこと、保存治療では非荷重のギプスまたは装具で3〜4週支持すること、手術例では一般に6週の非荷重を要すること)、著者ら自身の推奨としてストレス画像で評価したうえで大多数に保存治療を試み不安定性があれば個別に手術を検討すべきとしていること、三角靱帯損傷の分類体系や治療経路を扱った大規模研究および不安定性の長期発生率のデータが存在しないこと。⚠️ 次はいずれも本総説自身の測定ではなく参照文献から引用された値である(MRI研究で損傷部位として最も多いのが浅層の脛骨骨膜付着部であったこと、ストレス撮影では距骨のshiftを伴わないvalgus talar tiltが三角靱帯の単独損傷を示す所見であり4〜6 mmの拡大が一般に陽性とみなされていること)閲覧 2026-09-02
  2. 2.The Anatomy and Function of the Individual Bands of the Deltoid Ligament-and Implications for Stability Assessment of SER Ankle Fractures(Foot & Ankle Orthopaedics・2022)PMC9201323として公開されている全文を閲覧した。新鮮凍結屍体の足関節10体を解剖して線維束の長さと張力を肢位ごとに実測した研究で、5つの線維束(脛舟靱帯・脛スプリング靱帯・脛踵靱帯・深層前脛距靱帯・深層後脛距靱帯)を記録し、脛スプリング靱帯・脛踵靱帯・深層後脛距靱帯は全10体に、脛舟靱帯と深層前脛距靱帯は10体中9体に認められ、浅層後脛距靱帯はどの検体にも認めなかったこと、脛スプリング靱帯が底屈で緊張し脛踵靱帯と深層後脛距靱帯が背屈で緊張したこと、浅層の靱帯と深層前脛距靱帯の長さと張力は内反・外反と回旋で大きく変化した一方で深層後脛距靱帯は主に底背屈で変化し内反・外反の影響は小さかったこと、結果から回外・外旋型の受傷機転では脛舟靱帯・脛スプリング靱帯・深層前脛距靱帯が損傷の危険にさらされ脛踵靱帯ととくに深層後脛距靱帯は保護されると考えられること、臨床・実験データから深層が距腿関節の主たる安定化機構であり浅層は主に距骨下関節と距舟関節を安定化させるという合意が得られているとしていること(この最後の点は本研究自身の結果ではなく他文献の引用である)閲覧 2026-09-02
  3. 3.Pathoanatomy of Maisonneuve fracture based on radiologic and CT examination(Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery・2019)Maisonneuve骨折の成人54例の検討で、三角靱帯損傷が27例(50%)に、内果骨折が20例(37%)に認められ、内側構造が無傷であったのは7例(13%)だったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02