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GLASS

Global Limb Anatomic Staging System

臓器系
循環器
科目
Cardiology
トピック
循環器内科 B-12:血管造影・基本的血管内治療・血管外科技術・血管グラフト
構成:画像所見
血管石灰化

🧠 全体像は、においてどの動脈経路をどう治療するかを決めるための解剖学的な病変分布・複雑さの分類である。が創・虚血・からがどれだけ切迫しているか(重症度)を評価するのに対し、血管そのものの病変がどれだけ複雑かを評価する——両者は評価する軸が異なり、互いを代替しない対の関係にある1は大腿(FP)・下動脈(IP)の2セグメントをそれぞれ0〜4グレードで採点し、その組み合わせでI〜III(低〜高複雑度)を決める。

目的と適用場面

対象はによるで、または外科的バイパス)を計画する段階のである。CTA・MRA・などで創傷部までの血流を再建する最適な動脈経路(TAP)を治療者が定義したあとに、そのTAP上のFP・IPセグメントを採点する1

💡 は「PADがあるかどうか」を判定する検査ではない。ABIやで虚血の存在・程度を確認し、が必要と判断されたあとに、どの術式(かバイパスか)を選ぶかを決める場面で使う。

⭐ 使う場面は計画時であり、)・患者の静脈の有無と併せて総合的に判断する(PLANの枠組み:Patient risk・Limb threat・ANatomic pattern)1

構成要素と配点

FP・IPの各セグメントを、狭窄率・病変長(慢性を含む)を基準に0(病変なしまたは軽度)〜4(高度)の5段階で個別に採点する2

FP(大腿膝窩動脈)グレード

Grade 定義
0 有意狭窄(50%以上)を認めない、または軽度の狭窄(50%未満)のみ
1 病変の総延長が全長の1/3未満(10 cm未満)。単発のを含む場合は5 cm未満で、かつ起始部からのでないこと。は病変なしまたは軽度
2 SFA病変の総延長が全長の1/3〜2/3(10〜20 cm)。CTOを含む場合は合計で1/3未満(10 cm未満)で起始部からのを除く。は三分岐部にかからない2 cm未満の限局性狭窄まで
3 SFA病変の総延長が全長の2/3超(20 cm超)。起始部からのを含む場合は20 cm未満、起始部にかからないCTOは10〜20 cm。は三分岐部にかからない2〜5 cmの狭窄まで
4 SFAのが20 cm超。または病変が5 cm超で三分岐部に及ぶ、もしくはのCTO(長さを問わない)

IP(膝窩下動脈)グレード

Grade 定義
0 有意狭窄(50%以上)を認めない、または軽度の狭窄(50%未満)のみ
1 脛腓動脈幹を含まない3 cm未満の限局性狭窄
2 対象動脈病変の総延長が全長の1/3未満(10 cm未満)。単発CTOは3 cm未満で、脛腓動脈幹・対象動脈起始部を含まない
3 対象動脈病変の総延長が全長の1/3〜2/3(10〜20 cm)。CTOは3〜10 cmで、対象動脈起始部を含んでもよいが脛腓動脈幹は含まない
4 対象動脈病変の総延長が全長の2/3超。CTOが全長の1/3超(10 cm超)。または脛腓動脈幹のCTO(長さを問わない)

⚠️ TAP内のFP・IPセグメントに高度な石灰化()を認める場合、そのセグメントのグレードを1段階上げる補正を行う2。ここでいう高度石灰化は、円周の50%を超えるもの、びまん性のもの、塊状・サンゴ礁状のプラークが目安とされる2

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span>で最適な動脈経路(TAP)を定義"] --> B["FP(大腿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='popliteal artery'>膝窩動脈</span>)セグメントを0〜4で採点"]
  A --> C["IP(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='popliteal fossa'>膝窩</span>下動脈)セグメントを0〜4で採点"]
  B --> D["TAP内に高度石灰化があればグレードを1段階上げる"]
  C --> D
  D --> E["FPグレード・IPグレードをコンセンサスマトリクスで統合"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Global Limb Anatomic Staging System'>GLASS</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Stage'>ステージ</span> I〜III<br>(複雑さ 低 → 高)"]

解釈とカットオフ

FP・IPの2グレードをコンセンサスに基づくマトリクスで組み合わせ、I〜IIIを決める。が上がるほど病変分布は複雑になり、の即時・1年間のLBP(TAP全体でからまでの血流が保たれること)が低下する傾向と対応づけられる1

FPグレード\IPグレード 0 1 2 3 4
0 該当なし I I II III
1 I I II II III
2 I II II II III
3 II II II III III
4 III III III III III

💡 マトリクスはFPグレードとIPグレードについて対称であり、どちらか一方がグレード4であれば他方によらずIIIになる。逆に両方がグレード0の組合せは、TAP上に有意病変が無いことを意味するための対象にならず「該当なし」として扱う2

は、での即時技術的失敗率と12か月LBPの期待値として定義されている:Iは技術的失敗10%未満かつ12か月LBP 70%超、IIは技術的失敗20%未満かつ12か月LBP 50〜70%、IIIは技術的失敗20%超または12か月LBP 50%未満である2

⭐ 実臨床データでの裏づけ:を受けた肢の解析では、I・IIを併合した1年LBPが83.5%であったのに対し、III単独では54.4%と有意に低く(P=0.027)、IIIは1年LBP消失の独立危険因子であった3。別の実臨床コホートでは、統合後の分布はIが32.3%、IIが13.2%、IIIが51.6%であった4

💡 単独で術式は決まらない。の術式選択は、患者のによる(解剖学的複雑さ)を統合するPLANの枠組みで行う。複雑さの高い病変(IIIなど)では、平均的なの患者に静脈を用いたバイパスが選好されやすい一方、複雑さの低い病変や、患者側のが高い症例ではが選好されやすいとされる1

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 評価者間のは、無条件にグレードを付けるだけでは低い(κ 0.180〜0.406)。 病変長・狭窄率・CTOの有無といった構成要素ごとに段階的に採点する手順を踏むことで、はκ 0.730〜0.796まで改善する。者間で判定が割れやすい分類であることを踏まえ、施設で採点手順を統一する必要がある2

⚠️ 以下の病変・の評価を含まない。 実臨床の患者の多くはが欠損または高度病変を呈するが、のFP・IPグレードはこれを採点に反映しない。足部レベルの血流評価が必要な症例では、だけでの実現可能性を判断しない4

⚠️ 実臨床の病変分布は両端に偏り、中間グレードが少ない。 FP・IPグレードとも0または4に偏る集団が報告されており、中間グレード(1〜3)での間の判別力は相対的に検証が手薄である4

⚠️ ・患者リスクは含まない。 は解剖学的複雑さだけを評価する分類であり、が担う(創・虚血・)や、患者の併存症・・生命予後は別に評価する必要がある。が低くても、が高い、または患者リスクが高ければは変わりうる1

⚠️ ABI・などで虚血の存在・程度を評価する場面には使わない。が必要と判断されたあとの術式選択のための分類であり、の代わりにはならない。

まとめ

  • は、において大腿(FP)・下動脈(IP)の2セグメントをそれぞれ0〜4グレードで採点し、コンセンサスマトリクスでI〜III(低〜高複雑度)に統合する解剖学的分類である。
  • FP・IPとも狭窄率・病変長(CTOを含む)で採点し、TAP内に高度石灰化があればグレードを1段階上げる。
  • が上がるほど・1年LBPが低下する傾向があり、実臨床データでもIIIはI・II併合より1年LBPが有意に低い。
  • の術式選択は、患者リスク・WIfI()・(解剖学的複雑さ)を統合するPLANの枠組みで行い、単独では決めない。
  • 評価者間は無条件採点では低く構成要素別の手順が必要であること、以下の病変を含まないこと、実臨床では中間グレードが少ないことが限界として指摘されている。

出典

  1. 1.Global Vascular Guidelines on the Management of Chronic Limb-Threatening Ischemia(Global Vascular Guidelines Writing Group (Society for Vascular Surgery / European Society for Vascular Surgery / World Federation of Vascular Societies)・2019)GLASSがTarget Arterial Path(TAP、創傷部までの血流を再建する最適な動脈経路として治療者が定義する)とLimb-Based Patency(LBP、TAP全体で鼠径部から足関節までの順行性血流が保たれること)という2つの概念を導入したこと、大腿膝窩動脈(FP)・膝窩下動脈(IP)の各セグメントを0〜4の5段階で個別に採点しコンセンサスに基づくマトリクスでGLASSステージI〜IIIへ統合すること、ステージが血管内治療の即時技術的成功と1年LBPに対応する低・中・高複雑度の病変パターンと相関するとされること、血行再建術式の選択は患者リスク・患肢重症度(WIfI)・解剖学的複雑さ(GLASS)を統合するPLANの枠組みで行い、複雑さの高い病変では平均リスクの患者に自家静脈バイパスが、複雑さの低い病変や患者リスクの高い症例では血管内治療が選好されうるとしていることを確認した(本文中の詳細なFP・IPグレード判定表とFP×IPステージ統合マトリクスそのものは全文アクセス制限により未確認、jcm-glass-interobserver-agreement-2021の再録表で補った)。閲覧 2026-08-10
  2. 2.The Global Limb Anatomic Staging System (GLASS) for CLTI: Improving Inter-Observer Agreement(Journal of Clinical Medicine (MDPI)・2021)2019年Global Vascular Guidelinesに基づくGLASSの大腿膝窩動脈(FP)グレード0〜4・膝窩下動脈(IP)グレード0〜4の判定基準(狭窄率・慢性完全閉塞長を含む病変長、膝窩動脈・脛腓動脈幹の扱い)を再録したこと、FPグレードとIPグレードの全25通りの組合せをGLASSステージI〜IIIへ対応づけるマトリクス(Table 2「GLASS stages based on FP and IP grade」。FP0かつIP0はNA、いずれかがグレード4ならステージIII)を再録したこと、各ステージが即時技術的失敗率と12か月LBPの期待値(ステージI=技術的失敗10%未満かつLBP 70%超、ステージII=技術的失敗20%未満かつLBP 50〜70%、ステージIII=技術的失敗20%超またはLBP 50%未満)で定義されること、TAP内のFP・IPセグメントに高度石灰化(円周の50%超・びまん性・塊状またはサンゴ礁状プラーク)を認める場合はそのセグメントのグレードを1段階上げる補正を行うこと、無条件の採点では評価者間一致率が低く(κ 0.180〜0.406)、段階的な構成要素別採点法と手順の精緻化により一致率がκ 0.730〜0.796まで改善したことを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.GLASS (Global Limb Anatomic Staging System): a critical appraisal(Journal of Cardiovascular Surgery (Torino)・2021)CLTIで血管内治療を受けた1,995例・2,850手技・6,009病変の後方視的解析で、FPグレードは0が45.3%・4が25.1%、IPグレードは0が53.6%・4が29.9%と両端に偏り中間グレード(1〜3)が少なかったこと、統合後のGLASSステージ分布がステージ1 32.3%・ステージ2 13.2%・ステージ3 51.6%であったこと、大半の症例で足底動脈弓が欠損または高度病変を呈しており、GLASSに足関節以下(infra-malleolar)病変の評価を組み込む必要があると指摘したことを確認した。閲覧 2026-08-10
  4. 4.Role of the Global Limb Anatomic Staging System in predicting outcomes of chronic limb-threatening ischemia in patients treated by drug-coated balloons(Quantitative Imaging in Medicine and Surgery・2023)薬剤被覆バルーンで治療したCLTI肢90例の多施設後方視的解析で、12か月LBPがGLASSステージI 81.1%・ステージII 85.2%・ステージIII 54.4%であり、ステージI・IIを併合するとステージIII単独との差が有意となる(83.5% 対 54.4%、P=0.027)こと、ステージIIIが12か月LBP消失の独立危険因子であったことを確認した。閲覧 2026-08-10