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Symptoms · Published

声音振盪

Tactile fremitus

別名
触覚振盪音
臓器系
呼吸器
科目
Pulmonology and Thoracic Surgery
トピック
呼吸器内科 09:呼吸器の身体診察

🧠 全体像:は「音が胸壁まで届くときの伝わりやすさ」を手で触って確かめる所見である。空気は音を減衰させる悪い伝導体、充実した組織は良い伝導体という一点さえ押さえれば、増強・低下する病態はすべてこの物性から演繹できる。同じ機序をで捉えたのが・ウィスパード・ペクトリロクイ・であり、はその「触診版」にあたる。

定義と用語の整理

は、患者に一定の低い声で発声させ(例:「ひとーつ」を繰り返す、英語圏では“ninety-nine”)、胸壁に手掌を当てて振動の強さを左右対称に比較する診察手技である1。

  • 喉頭で発声中に生じた音の振動が、気管支・肺実質を介して胸壁へ伝わったものを触知している。
  • で同じ現象を耳で捉えたものが声音共鳴であり、部での音強度増加()、囁き声が明瞭に聴取されるウィスパード・ペクトリロクイ、母音の音色が変化するが含まれる1。
  • 亜型として、な、ながある1。

病態生理

空気は音の伝導が悪く、密度が高い媒体ほど音をよく伝えるという一点が、増強・低下いずれの機序も説明する1。

変化 病態 機序
低下 、肺気腫、気道閉塞 気道トラップによるの増加、肺実質密度の低下
低下 胸水、気胸 に液体・空気が介在し振動の伝導を弱める
低下 肥満などの皮下組織増加、胸壁肥厚 発生源から胸壁表面までの距離・介在組織が増える
増強 炎症・(肺炎など) 組織密度が上がり音の伝導効率が上がる

⚠️ 「低下していないこと」自体に情報量がある。 胸水を疑う場面では、の低下が無いことのは0.21(95%CI 0.12〜0.37)で、が低ければ胸水を除外する方向に働きうる2。

緊急・見逃してはいけない疾患

⚠️ の左右差・急な低下は、気胸や大量胸水のような、緊急性のある病態を示唆しうる。

  • の・、所見(呼吸音の左右差、の有無)と必ず組み合わせて評価する。単独手技としての精度はの(8.7)に劣る2。
  • を伴う場合はを疑い、身体所見だけで判断を待たず緊急対応を優先する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tactile fremitus'>声音振盪</span>を左右対称に触診"] --> B{"左右差または<br>びまん性の変化があるか"}
    B -->|"変化なし"| C["正常"]
    B -->|"低下"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percussion'>打診</span>で確認"]
    B -->|"増強"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percussion'>打診</span>で確認"]
    D --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dullness (on percussion)'>濁音</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperresonant'>過共鳴</span>か"}
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dullness (on percussion)'>濁音</span>"| G["胸水を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='negative likelihood ratio'>陰性尤度比</span>0.21で低下なしは除外に働く"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperresonant'>過共鳴</span>"| H["気胸・気道閉塞を疑う"]
    E --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dullness (on percussion)'>濁音</span>を伴えば<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='consolidation'>コンソリデーション</span>(肺炎など)を疑う"]

まとめ

  • は発声による振動の胸壁への伝わりやすさを触診で評価する所見で、空気は伝導が悪く高密度組織は伝導が良いという物性で増強・低下を説明できる。
  • 低下は・肺気腫・気道閉塞(増加)、胸水・気胸(液体・空気の介在)、肥満・胸壁肥厚(距離の増大)で生じる。増強は肺炎などの(密度増加)で生じる。
  • 胸水の除外では「の低下が無いこと」自体に価値があり(0.21)、単独精度はのに劣るため必ず他の所見と組み合わせて解釈する。
  • で同じ機序を捉えたものが・ウィスパード・ペクトリロクイ・であり、はその触診版にあたる。

出典

  1. 1.Vocal Fremitus(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)PubMedの抄録全文で確認した。声音振盪が喉頭で発声中に生じた音の振動が気管支・肺実質を介して胸壁へ伝わる現象で、空気は低周波音の伝導が悪く高密度な媒体ほど伝導が良いこと、気管支喘息・肺気腫・気管支閉塞では気道トラップと肺実質密度の低下により低下すること、胸水と気胸も胸膜腔への液体・空気の介在により低周波振動の伝導を弱めること、肥満など皮下組織の増加でも減弱すること、炎症・コンソリデーションは組織密度を上げ低周波音の伝導と振盪の検出を強めること、聴診での対応所見として気管支呼吸音(コンソリデーション部での音強度増加)・ウィスパード・ペクトリロクイ・山羊音(E to A変化)があること、さらに触知可能な類鼾音(ronchial fremitus)や触知可能な胸膜摩擦音(pleural fremitus)という亜型があることを確認した。閲覧 2026-09-22
  2. 2.Does This Patient Have a Pleural Effusion?(JAMA・2009)抄録で確認した。前向き5研究・934例のシステマティックレビューで、評価した8つの手技のうち従来の打診による濁音が最も精度が高く統合陽性尤度比8.7(95%CI 2.2〜33.8)、声音振盪の低下が無いことは陰性尤度比0.21(0.12〜0.37)である。著者は、濁音は胸水の確率を大きく上げるが確定には胸部X線が要ること、検査前確率が低い場面では声音振盪の低下が無ければ全体の臨床状況によっては胸部X線が不要になりうることを結論に書いている。閲覧 2026-09-21