症状ノート一覧へ

Symptoms · Published

腟出血

Vaginal bleeding

別名
膣出血vaginal hemorrhage
臓器系
生殖・産婦人科
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
婦人科 11:小児婦人科学婦人科 33:異所性妊娠婦人科 22:子宮体癌の症候・徴候・検診
関連疾患
腟明細胞腺癌

🧠 全体像:「腟出血」という一つの訴えの中身は、年齢・生殖状態によって警戒すべき疾患が総入れ替えになる。思春期前なら異物・外傷・稀な腫瘍、生殖可能年齢ならまず妊娠関連の緊急疾患、閉経後なら悪性腫瘍の除外——同じ症候名でも、患者が今どの年齢層にいるかを最初に確認しなければ、鑑別の入り口を誤る。

定義と用語の整理

「腟出血」は腟から排出される出血だが、実際の出血源は腟そのものとは限らない。、腟壁、子宮頸部、子宮体部のいずれから出血しているかを、・で切り分けることが評価の出発点になる。また尿道・肛門からの出血が腟出血と誤認されることもあり、部位の確認を省略しない。

年齢・生殖状態によって、次の4群に分けて考える。

年齢層 特徴
思春期前() 稀。エストロゲンが低い環境で起こる出血は原因が限られる
生殖可能年齢 妊娠の可能性を常に念頭に置く。はに譲る
妊娠中 妊娠週数と血行動態の安定性でが決まる
・閉経後 悪性腫瘍(主に)の除外が最優先課題になる

病態生理:年齢層ごとに異なる機序

⚠️見逃してはいけないパターン

  • 生殖可能年齢のすべての腟出血は、まず妊娠検査から始める。 避妊法を使用中・不妊治療歴がある・性交渉がないと申告した場合でも省略しない1。
  • :腹痛・出血・の組み合わせは破裂を疑う。妊娠検査陽性かつ子宮内にが確認できない場合は、確定するまで否定しない。
  • は量にかかわらず常に評価対象。 2026年のACOG改訂により、のだけでを除外できる患者は限られる——出血が単回で、内膜が完全に描出でき4mm以下、かつのリスク因子(使用、肥満、、糖尿病など)がない場合に限られ、それ以外の大多数では超音波と子宮内膜組織採取の両方を行う。内膜が完全に描出できない、あるいはリスク因子がある患者を超音波単独で「陰性」と判断すると、癌を見落としうる2。
  • 腟原発の悪性腫瘍も稀な鑑別に入る。 曝露歴のある高齢女性では腟明細胞腺癌のような腟も念頭に置く。
  • 小児の異物・外傷による出血は、の可能性を常に考慮する。 診断と同時にの評価を行う1。
  • 年齢によらず、原因検索より先に血行動態(ABC)の安定化を優先する1。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["腟出血"] --> B["ABCで血行動態を確認"]
    B --> C{"年齢層は"}
    C -->|"思春期前"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>で異物・外傷・腫瘤を確認"]
    C -->|"生殖可能年齢"| E["妊娠検査"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perimenopause'>周閉経期</span>・閉経後"| F{"単回出血かつ内膜完全描出・リスク因子なしか"}
    E -->|"陽性"| G["子宮内妊娠を確認し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic pregnancy'>異所性妊娠</span>を除外"]
    E -->|"陰性"| H["非妊娠の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal uterine bleeding, AUB'>異常子宮出血</span>として評価"]
    F -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transvaginal ultrasound, TVUS'>経腟超音波</span>(内膜4mm以下なら経過観察可)"]
    F -->|"いいえ"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transvaginal ultrasound, TVUS'>経腟超音波</span>+子宮内膜組織採取の両方を行う"]

まとめ

  • 腟出血の鑑別は、年齢・生殖状態(思春期前・生殖可能年齢・妊娠中・以降)で総入れ替えになる。
  • 生殖可能年齢の腟出血は、避妊法の使用や申告内容にかかわらず、まず妊娠検査から評価を始める。
  • はの除外が最優先で、2026年のACOG改訂により単独での除外が許容されるのは出血が単回・内膜完全描出・リスク因子なしの一部患者に限られる。
  • 思春期前の出血は(原因は異物残留が最多)・外傷・尿道脱を代表的な鑑別とするが、稀な腫瘍性疾患やの可能性も常に考慮する。
  • 年齢によらず、原因検索より先に血行動態の安定化を優先する。

出典

  1. 1.Vaginal Bleeding(StatPearls (NCBI Bookshelf; Jeanmonod R, Skelly CL, Jenkins SM, Agresti D)・2023)2023年11月13日最終更新版で、腟出血の評価は年齢・生殖状態(思春期前・思春期後の生殖可能年齢・周閉経期以降)で枠組みが変わること、生殖可能年齢のあらゆる腟出血の評価はまず妊娠検査から始めること、非妊娠の生殖可能年齢ではPALM-COEIN分類で構造的原因と機能的原因を整理すること、思春期前の腟出血で考慮すべき原因は外陰腟炎(その原因としては異物残留が最多)・外傷(事故および虐待)・尿道脱・機能性卵胞嚢腫・エストロゲン産生腫瘍(顆粒膜細胞腫など)・McCune-Albright症候群・意図しない外因性エストロゲン曝露であり、原文はこれらを鑑別として列挙するのみで思春期前の腟出血全体における頻度順位までは示していないこと、周閉経期以降では子宮体癌が最大14%を占めうるため悪性腫瘍への警戒を高めること、経腟超音波で内膜線が4mm以下であれば子宮体癌に対する陰性的中率が99%を超えるとされてきたこと、年齢によらずまずABCの評価で血行動態の安定性を確認することを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Updated Guidance Regarding the Role of Transvaginal Ultrasonography in Evaluating the Endometrium of Individuals With Postmenopausal Bleeding(American College of Obstetricians and Gynecologists (Obstetrics & Gynecology)・2026)2018年のCommittee Opinion No. 734を改訂した2026年7月のClinical Practice Updateで、閉経後出血の初期評価は多くの患者で経腟超音波と子宮内膜組織採取の両方を行うべきに変更されたこと、経腟超音波単独での評価が許容されるのは「出血が単回」「内膜が完全に描出でき4mm以下」「子宮体癌のリスク因子(外因性エストロゲン使用、SERM使用、BMI 30超、未産、遺伝的素因、黒人、糖尿病など)がない」「必要時に速やかな再評価が可能」という条件をすべて満たす一部の患者に限られること、この変更の背景として、経腟超音波単独による初期評価では子宮体癌の約5〜12%が見逃されるとされ内膜厚を指標とした従来のトリアージ手法は悪性・前癌病変に対する感度が容認できないほど低いとされたことを確認した(この5〜12%という数値は二次情報源(Healio記事)に基づく。DOIはOvidへリダイレクトし、Europe PMCの抄録・journals.lww.com本文はいずれも数値の直接確認ができなかったため、原著の該当数値そのものは未確認)。閲覧 2026-09-07