Anesthesiology

Anesthesiology · A-01

ホメオスタシスとその障害

The general definition of homeostasis, examples of disturbances

前提:病態
ナトリウム(Na+)と水分平衡の異常カリウム(K+)平衡の異常
前提:正常
体液区画とその測定体液量と細胞外液浸透圧の調節
疾患
浸透圧性脱髄症候群
検査値
低ナトリウム血症有効浸透圧

🧠 全体像は、・浸透圧・電解質・酸塩基・体温などを狭い範囲に保つ動的平衡であり、重症患者では「不足か過剰か」「どの区画の異常か」「原因と臓器障害は何か」を同時に評価する。

ホメオスタシスの考え方

恒常性は、外界や代謝の変化に対して、受容器・による負のフィードバックで内部環境を維持する仕組みである。正常値は固定点ではなく、臓器間の調節で保たれる範囲である。

flowchart TD
    A["内部環境の変化"] --> B["受容器が検知"]
    B --> C["中枢が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reference range'>基準範囲</span>と比較"]
    C --> D["神経・内分泌・腎による応答"]
    D --> E["変化を打ち消して恒常性を回復"]
    E -->|"負のフィードバック"| C

代表例には、と交感神経、(renin-angiotensin-aldosterone system:RAAS)、呼吸・腎による酸塩基調節がある。

体液区画

70 kgの標準的成人を仮定した概算が「60・40・20の法則」である。実際の割合は年齢、性別、脂肪量、病態で変わる。

区画 体重に対する概算 70 kgでの概算 主な溶質
60% 42 L 全区画の水分
40% 28 L K⁺、Mg²⁺、リン酸、蛋白
20% 14 L Na⁺、Cl⁻、HCO₃⁻
約15% 約10.5 L ECFの大部分
血漿 約5% 約3.5 L 蛋白、とくにアルブミン
  • 細胞膜:水は移動できるが、多くの電解質は輸送体を介して区画差が保たれる。
  • :水と小分子は移動し、によって血管内水分を保持する。
  • Na⁺量は主に量を、血清Na⁺濃度は主に水とNa⁺の比を反映する。

水分出納と調節

安静成人の一例では、飲水1.5 L、食物0.8 L、代謝水0.3 Lに対し、尿1.5 L、0.8 L、便0.2 L、発汗0.1 Lで約2.6 L/日が釣り合う。ただし、これは固定必要量ではない。発熱、頻呼吸、発汗、下痢、腎機能、輸液、人工呼吸で大きく変化する。

主なセンサー 主な応答
視床下部 口渇、ADHによる
・心房・ 交感神経、RAAS、ADH
Na⁺排泄 NaCl RAAS、
K⁺濃度 インスリン、β₂刺激、アルドステロン

浸透圧と張度

概念 意味 臨床での要点
拡散 溶質が濃度勾配に従って移動する 分子の大きさ、、勾配に左右される
浸透 を介して、水が濃度の低い側から高い側へ移動する の変化を理解する基礎となる
溶液1 L当たりの 温度による容積変化の影響を受ける
溶媒1 kg当たりの 血清・尿では通常こちらを測定し、単位はmOsm/kg
細胞膜を自由に通過しない溶質が作る 細胞内外の水移動とを決める

は、SI単位では次式で概算する。

2×[Na+]+[glucose]+[urea]\text{} \approx 2\times[Na^+] + [glucose] + [urea]

通常は約275〜295 mOsm/kgである。実測などで測定する。実測値と計算値との差はで、エタノールなどの未測定浸透圧物質を示唆する。の評価では、細胞膜を比較的自由に移動する尿素を通常除外する。

酸塩基の恒常性

は通常7.35〜7.45に保たれる。肺はCO₂排出を分単位で、腎はH⁺排泄とHCO₃⁻調節を時間〜日単位で担う。一次性変化は次の4型に整理でき、詳しい血液ガス判読と代償計算はの項で扱う。

一次性障害 主な変化
代謝性アシドーシス HCO₃⁻低下
HCO₃⁻上昇
PaCO₂上昇
PaCO₂低下

体液量異常

病態 主な所見 主な危険 対応の軸
口渇、頻脈、、乏尿、末梢 、臓器障害、創傷治癒遅延 出血・喪失源の制御、適切な液・血液、反応の再評価
浮腫、体重増加、肺うっ血、静脈圧上昇 、腎・心機能悪化、腸管浮腫、縫合不全 原因治療、不要な輸液中止、利尿・除水の検討

身体所見、体重、出納、尿量、乳酸、腎機能、肺・心エコーを組み合わせる。や下大静脈径だけでを判定してはいけない。

主要なNa⁺異常

低Na血症

低Na血症では、まず血清浸透圧、症状、発症速度、、尿浸透圧、尿Na⁺を評価する。重い神経症状ではNa⁺値だけで待たず、3%を規定量ずつ投与し、症状とNa⁺を頻回再評価する。初期目標は通常4〜6 mmol/L程度の上昇であり、慢性例、とくに、アルコール使用、肝疾患、低K血症ではを避けるためを厳格に防ぐ。

高Na血症

、Na⁺過剰、腎・腎外喪失を分ける。循環不全があればまずで灌流を回復し、その後にを補う。慢性または発症時期不明では脳浮腫を避けて緩徐に補正し、急性Na⁺負荷では専門的管理下でより速い補正を検討する。

主要なK⁺異常

病態 危険所見 初期対応
高K血症 筋力低下、徐脈、、QRS幅増大、 心電図監視、除外、、細胞内移動、
低K血症 筋力低下、、心室性不整脈 Mg²⁺も確認し、原因を止め、経口または監視下静注で補充

高K血症で心電図変化または循環不安定があれば、静注Ca塩で心筋を保護し、K⁺の細胞内移動とを並行する。Ca塩自体はK⁺濃度を下げない。低K血症では原因とMg²⁺を評価し、腎機能、、監視に合わせて補充速度を決める。具体的な救急用量は緊急電解質異常の項で扱う。

評価の流れ

flowchart TD
    A["バイタル・意識・尿量・体重・出納"] --> B{"直ちに蘇生が必要か"}
    B -->|"はい"| C["気道・呼吸・循環を安定化"]
    B -->|"いいえ"| D["体液区画と浸透圧を評価"]
    C --> D
    D --> E["血清・尿の電解質と浸透圧"]
    E --> F["腎・内分泌・薬剤・喪失源を同定"]
    F --> G["原因治療と段階的補正"]
    G --> H["症状・出納・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Labs'>検査値</span>を再評価"]

まとめ

  • は、体液区画・浸透圧・循環・腎・内分泌が作る動的平衡である。
  • 「60・40・20」は概算であり、患者背景と病態に合わせて解釈する。
  • 血清Na⁺濃度は水との比、総Na⁺量は主に量を表す。
  • 電解質異常は数値だけでなく症状、発症速度、心電図、原因を統合し、過速な補正を避ける。
  • 輸液も除水も介入であり、投与後の反応を必ず再評価する。