Cardiology

Cardiology · A-11

心膜炎と心嚢液貯留

Pericarditis, pericardial effusion

前提:病態
胸膜・心膜の病理
前提:正常
心臓・心膜心周期と心音
疾患
急性心膜炎
画像所見
心嚢液貯留

🧠 全体像は心膜の炎症、への液体蓄積である。液体が急速に増えると拡張期充満が妨げられ、心タンポナーデへ進む。

心膜炎

原因

分類 原因
一次性(稀) EBV、HIV、水痘、などウイルス性。漿液性で可逆的、特発性
二次性・全身性 、菌血症、TB、SLE、悪性腫瘍
二次性・ 、心臓手術、放射線照射、

先進国では特発性・推定ウイルス性が原因の80–90%を占めTBは5%未満にとどまる一方、流行地ではTBが主要な原因となる1

臨床像と診断

胸痛は吸気・仰臥位で悪化し、呼吸困難、JVP上昇、左部の、発熱を伴い得る。は臓側/の摩擦音である。は、①胸膜性で仰臥位により悪化する胸痛(約90%)、②びまん性ST上昇/(約25–50%)、③新規または増加した(多くは少量)、④(30%未満)——この4所見のうち2つ以上で診断する2

検査 所見
ECG 多誘導の凹型/鞍型ST上昇、なし。では
血液検査 CBC、CRP、ESR、/電解質、、ウイルス血清学、培養、真菌検査、甲状腺機能
CXR を示唆
心エコー では心周囲のでは正常もあり得る

心嚢液貯留と心タンポナーデ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardial fluid'>心嚢液</span>増加"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardial cavity'>心膜腔</span>内圧上昇"]
    B --> C["心臓圧迫・RA/RV拡張期虚脱"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular filling'>心室充満</span>低下"]
    D --> E["1回拍出量・心拍出量低下"]
    E --> F["低血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic shock, CS'>心原性ショック</span>"]

タンポナーデでは頻脈、JVP上昇、低血圧、を認める。は低血圧、JVP上昇、である。心エコーで、RA収縮期虚脱、RV拡張早期虚脱、呼吸性血流変動などを確認する。は典型的タンポナーデ所見ではなく、やRV不全でみられやすい。

の原因はのほか、、外傷、悪性腫瘍、、縦隔リンパ閉塞。液体は漿液性、血性、膿性となり得る。急速な250 mL貯留でもタンポナーデを起こし得る。

その他の合併症

後などに心膜が肥厚・硬化・線維化して心機能を障害する病態で、TBは代表的原因の一つである。

が共存するeffusive-constrictive pericarditis(ECP)は、してもが十分下がらない病態で、頻度は・病因により2.4–14.8%、TB流行地では最大50%に達し、後に限れば約16%と報告される34。診断は心エコーが主軸で、CMRが・炎症・可逆性の評価を補う。炎症性ECPの多くは抗炎症治療(NSAID・・ステロイド・IL-1阻害薬)で軽快するが、不可逆的な生理が残る例ではが必要になる3

治療

  • 高熱(>38°C)、亜急性経過、大量・タンポナーデ、NSAID不応などの高リスク例は入院で評価する1
  • /NSAID()、強い痛みにはオピオイド
  • (補助薬ではなく中核薬。急性例で少なくとも3か月、初回再発では6か月以上継続する。NSAID併用は単独より再発を有意に減らす、OR 0.37)25
  • 副腎皮質ステロイド。ただしウイルス性、TB、細菌性など感染性では避ける
  • 難治性の多発再発例では、ステロイドよりIL-1阻害薬が選択されうる2
  • タンポナーデ:直ちに
  • 持続ドレナージ:
  • 難治性

⚠️ タンポナーデは「量」だけでなく「貯留速度」が危険度を決める。

まとめ

  • 吸気・仰臥位で悪化する胸痛、、びまん性ST上昇がの手掛かりである。
  • が充満を妨げるとタンポナーデとなり、低血圧・JVP上昇・を来す。
  • タンポナーデでは診断と同時にが必要である。

出典

  1. 1.Evaluation and Treatment of Pericarditis: A Systematic Review(JAMA(Imazio M, Gaita F, LeWinter M, 2015, DOI 10.1001/jama.2015.12763)・2015)先進国では特発性・推定ウイルス性が心膜炎の80-90%を占めTBは5%未満であること、発熱>38°C・亜急性経過・大量心嚢液/タンポナーデ・NSAID不応が予後不良と入院適応を示す所見であること閲覧 2026-08-08
  2. 2.Diagnosis, Risk Stratification, and Treatment of Pericarditis: A Review(JAMA(Cremer PC, Klein AL, Imazio M, 2024, DOI 10.1001/jama.2024.12935)・2024)急性心膜炎が胸膜性胸痛(約90%)・びまん性ST上昇/PR低下(約25-50%)・新規または増加した心嚢液貯留(多くは少量)・心膜摩擦音(30%未満)の4所見中2つ以上で診断されること、コルヒチン3か月投与が再発を37.5%から16.7%へ減らすこと、初回再発では少なくとも6か月継続すること、多発再発例ではIL-1阻害薬がステロイドより選択されうること閲覧 2026-08-08
  3. 3.A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials evaluating pharmacologic therapies for acute and recurrent pericarditis(Trends in Cardiovascular Medicine(Melendo-Viu M, et al., 2023, DOI 10.1016/j.tcm.2022.02.001)・2023)コルヒチン+NSAID併用がNSAID単独と比べ再発を有意に減らすこと(OR 0.37)閲覧 2026-08-08
  4. 4.Contemporary Assessment and Management of Effusive-Constrictive Pericarditis(Current Cardiology Reports(Harake LE, et al., 2026, DOI 10.1007/s11886-025-02326-4)・2026)effusive-constrictive pericarditis(ECP)の頻度が診断基準・病因により2.4-14.8%、結核流行地では最大50%に達すること、心エコーが主要な診断ツールでCMRが心膜肥厚・炎症・可逆性の評価を補うこと、炎症性ECPの多くが抗炎症治療で軽快し不可逆的な収縮性生理には心膜切除術が必要なこと閲覧 2026-08-08
  5. 5.Effusive-Constrictive Pericarditis After Pericardiocentesis(JACC: Cardiovascular Imaging(Kim K, Miranda WR, Sinak L, et al., 2018, DOI 10.1016/j.jcmg.2017.06.017)・2018)心嚢穿刺施行205例のうち33例(16%)が心嚢穿刺後にECPと診断されたこと閲覧 2026-08-08