皮膚科学

皮膚科学 · 1-13

ヒトパピローマウイルス関連疾患と治療

HPV-Associated Diseases and Treatment

前提:病態
パピローマウイルスウイルス・微生物による発がん
疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)疣贅状表皮発育異常症

🧠 全体像:ヒトパピローマウイルスは上皮へ感染し、は主に疣贅、のは・癌を生じる。治療は見えている病変を除去するもので、潜伏ウイルスをしない。は曝露前のワクチンである。12

HPVの自然史

は皮膚・粘膜のからへ感染し、直接の・粘膜接触・性的接触で伝播する。多くの感染は免疫により1〜2年以内に検出不能となるが、のが発癌に重要である。1

flowchart TD
    A["皮膚・粘膜への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>感染"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='host immunity'>宿主免疫</span>で排除できるか"}
    B -->|"はい"| C["自然消退・検出不能"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-risk HPV'>低リスク型</span>:疣贅"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-risk HPV'>高リスク型</span>:上皮内病変"]
    F --> G["一部が浸潤癌へ進展"]
リスク群 代表型 主な関連疾患
6、11 、など
16、18、31、33、45、52、58など 、肛門癌、、外陰・、など

良性皮膚・粘膜病変

病型 典型像 好発部位・特徴
ざらついた。点状の赤褐色〜黒色は毛細血管 手指、、外傷部
荷重で内向性にし、圧痛を伴い得る 足底。が途絶する
1〜5 mm程度の平坦で境界明瞭な丘疹 顔面、、部
柔らかい・丘疹 、肛囲。主に 6・11

診断は多くが臨床的である。急速増大、潰瘍、色素不整、、免疫抑制、治療不応では生検してなどを除外する。2

皮膚疣贅の治療

免疫正常者では自然消退が多く、無症状なら経過観察も選択肢である。疼痛、機能障害、拡大、感染伝播、整容的負担を考慮して治療する。3

治療 使い方・注意点
角質を軟化・除去する第一選択の一つ。周囲正常皮膚を保護し反復
数週ごとに反復。疼痛、水疱、に注意
・、レーザー 難治・選択例。瘢痕、煙中への対策が必要
免疫調節・その他 病変部位と難治性に応じ専門医が選択

では、患者外用の・・、または医療者による凍結、外科的除去、などを病変と妊娠状況に応じて選ぶ。再発し得ることと、はリスクを下げるが完全には防げないことを説明する。2

HPVワクチン

は新規感染と関連癌・疣贅を予防するが、既存感染や既存疣贅を治療しない。接種前の検査は通常不要であり、一つの型に感染歴があっても他型への予防効果を期待できる。

接種の対象・回数は国と機関で枠組みが異なる。

項目 日本の の立場(2022年) 米国の推奨
対象 小学6年〜高校1年相当の女子4 性的活動開始前の9〜14歳の女子を主対象とする5 11〜12歳を標準(9歳から開始可)とし、未完了者は26歳までキャッチアップ
回数 接種開始年齢により合計2回または3回4 2回(間隔6か月以上)が基本。適応外の選択肢として、9〜20歳の女子・男子には1回接種も可5 15歳未満で開始なら2回、15歳以上または免疫不全なら3回
使用ワクチン・その他 2026年度から公費接種は9価のみ(2価・4価は2025年度まで)4 免疫不全者・感染者は少なくとも2回、可能なら3回5 27〜45歳は一律接種ではなく、新規曝露リスクがある未完了者について利益を。45歳超は定期推奨の対象外6

妊娠中は接種を延期するが、授乳は禁忌ではない。接種後も年齢・地域に応じた検診を継続する。

⚠️ 「性別・年齢を問わず全員に接種」という説明は正しくない。男女とも推奨対象になり得るが、年齢と既接種歴に沿って判断する。

まとめ

  • 低リスクは疣贅、高リスクのは複数の上皮癌に関与する。
  • 疣贅治療は病変を除去するが、潜伏感染をせず再発し得る。
  • ワクチンは予防であり治療ではない。日本のは小学6年〜高校1年相当の女子、は9〜14歳の女子が主対象で、26歳までのキャッチアップは米国の推奨である。
  • ワクチン接種後も検診は必要である。

出典

  1. 1.Carcinogenic human papillomavirus infection(2016)HPVは直接接触で伝播し、多くは2年以内に消失する一方、高リスク型の持続感染が子宮頸部などの上皮癌の原因となることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.2019 IUSTI-Europe guideline for the management of anogenital warts(2020)肛門性器疣贅の臨床診断、病変と患者条件に応じた治療選択、再発を含む管理原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Topical treatments for cutaneous warts(2012)皮膚疣贅は自然消退し得ること、およびサリチル酸と凍結療法を中心とする局所治療のエビデンスを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.HPVワクチン(厚生労働省・2026)定期接種の対象が小学6年〜高校1年相当の女子で、接種開始年齢により合計2回または3回接種すること、現在公費で接種できるのは9価ワクチン(シルガード9)で2価・4価は2025年度まで定期接種に位置づけられていたことを確認した閲覧 2026-09-27
  5. 5.Human papillomavirus vaccines: WHO position paper (2022 update)(World Health Organization(Weekly Epidemiological Record 97(50):645-672)・2022)IRISの全文PDFで、子宮頸癌予防の主対象が性的活動開始前の9〜14歳の女子であること、2回接種(最短間隔6か月)を基本とし、適応外の選択肢として9〜20歳の女子・男子には1回接種を用いてよいこと、免疫不全者・HIV感染者は少なくとも2回、可能なら3回接種することを確認した閲覧 2026-09-27
  6. 6.Human Papillomavirus Vaccination for Adults: Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices(2019)米国ACIPが11〜12歳の定期接種(9歳から開始可)と26歳までの全員へのキャッチアップ接種を推奨し、27〜45歳では一律接種ではなく、新規感染リスクがあり利益を得る可能性のある未完了者について共有意思決定を推奨すること、15歳未満開始は2回、15歳以上開始または免疫不全は3回とすることを裏付ける。閲覧 2026-08-13