組織学

組織学 · 4.1

筋組織:骨格筋

Muscle tissue — Skeletal muscle

応用トピック
ミオパチー筋炎とミオパチー

🧠 骨格筋は「入れ子構造の結合組織サポート」と「規則正しく並んだ収縮の最小単位()」の2つを組み合わせて覚える。 結合組織は→→と筋全体→→筋線維の階層に対応して入れ子になっており、はZ線を境界にアクチン・ミオシンが規則的に重なり合うことで横紋を作る——この2つの「入れ子」と「規則配列」が骨格筋の構造の全体像。

骨格筋線維の基本構造

骨格筋は筋線維の束からなり、各線維は:

  • 長いの
  • 核は細胞辺縁、(=細胞膜)直下に扁平に並ぶ

筋線維は一様ではなく、発現するの型によって性質の異なる線維型に分かれる。ATPase染色による古典的な組織化学的分類と、による分子的分類が対応する。

線維型 性質
I型(・赤筋) β/slow ミトコンドリア・に富み、収縮は遅いが疲労しにくい
IIa型 IIa 。と解糖の両方を使う
IIx型 IIx 解糖優位、速く強いが疲労しやすい

⚠️ ヒトの「IIb線維」は染色上の呼び名にすぎず、IIb型の線維ではない。 ヒト骨格筋でin situにより単独発現が確かめられるはβ/slow・IIa・IIxの3種で、ATPase染色で「IIb」と判定される線維に多いのはIIx型の転写産物である(β/slowとIIa、IIaとIIxをする移行型線維も存在する)1。げっ歯類にある真のIIb線維をそのままヒトに当てはめた旧来の記載は、I/IIa/IIxの3型に読み替える。

💡 多核の筋線維そのものは分裂できないので、再生はと基底膜のあいだにあるが担う。 1961年にで「筋線維の表面に張りついた別個の単核細胞」として記載された細胞で2、Pax7を発現する。マウスでPax7陽性細胞だけを条件的に除去すると、恒常状態でも筋毒素・運動による損傷後でも筋組織が失われて再生が破綻し、炎症細胞とが浸潤する——他のをもつ細胞では代償されず、Pax7陽性を移植して初めて再生が戻る3。成体骨格筋の幹細胞はそのものである。なお末梢神経節でニューロン細胞体を覆う「」は名前が同じだけの別物で、こちらはである。

結合組織による階層構造

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epimysium'>筋外膜</span>:筋全体を覆う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dense connective tissue'>密性結合組織</span>、大きな血管・神経を含む"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perimysium'>筋束膜</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fascicle'>筋束</span>を包む"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endomysium'>筋内膜</span>:個々の筋線維を包む薄い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticular fiber'>細網線維</span>の層"]
結合組織の層 包む対象 特徴
筋全体 、大血管・大神経を含む
(=) 筋線維の機能単位(束)を区切る
個々の筋線維 薄い+散在する線維芽細胞(03-2-fibers、03-1-cells)

💡 「筋全体→→筋線維」というに対して「→→」という結合組織が入れ子状に対応する——この対応関係は末梢神経の・・(05-4-nerve-fibers)と全く同じパターンで、体の「束ねる構造」に共通する設計原理として一緒に覚えられる。

サルコメア:収縮の機能単位

flowchart TD
  A["Z線(Z-disc):<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcomere'>サルコメア</span>の境界、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='actin microfilament'>アクチン細線維</span>が付着"]
  A --> B["I帯(I-band):Z線の両側、アクチンのみ=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='light zone / light band'>明帯</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotropic'>等方性</span>)"]
  B --> C["A帯(A-band):ミオシン太いフィラメントが存在する領域=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisotropic'>暗帯</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisotropy'>異方性</span>)"]
  C --> D["H帯(H-zone):A帯の中央、アクチンを欠く"]
  D --> E["M線(M-line):H帯の中央を貫く"]
構造 位置・成分
Z線 の境界、が付着
I帯 Z線の両側、アクチンのみ=
A帯 ミオシン太いフィラメント+両端でアクチンと重複する領域=
H帯 A帯の中央、アクチンを欠きミオシンのみ
M線 H帯の中央を貫く線、ミオシンフィラメントを固定

⭐ A帯=で暗く見える、I帯=で明るく見える——名前の由来(光学的性質)と見た目(・)の対応は横紋筋の名前の由来そのものであり、頻出の基礎知識。1つのはZ線からZ線までの繰り返し単位。

まとめ

  • 骨格筋線維は多核の細胞で、核は直下の辺縁に並ぶ。
  • 結合組織は(筋全体)→=()→(個々の筋線維)と入れ子状に対応する。
  • はZ線を境界とし、I帯(アクチンのみ、)・A帯(ミオシンを含む、)・H帯・M線からなる収縮の機能単位。
  • A帯()とI帯()の光学的性質の違いが横紋筋の名前の由来になっている。
  • 筋線維はの型でI型・IIa型・IIx型に分かれ、ヒトにはげっ歯類型のIIb線維は存在しない(ATPase染色の「IIb」の実体はIIx)。
  • 多核の筋線維は分裂できず、骨格筋の再生はPax7陽性のが担う。

出典

  1. 1.Type IIx myosin heavy chain transcripts are expressed in type IIb fibers of human skeletal muscle(American Journal of Physiology・1994)ヒト骨格筋でin situハイブリダイゼーションにより単独発現が確認されるミオシン重鎖はβ/slow・IIa・IIxの3種で、この3種が主要な線維型を規定する。ATPase染色で「IIb線維」と判定されるヒト線維に多いのはIIx型ミオシン重鎖の転写産物であり、ヒトにげっ歯類型のIIb線維があるという記載は誤り。β/slowとIIa、IIaとIIxを共発現する移行型線維も存在する閲覧 2026-08-24
  2. 2.Satellite cell of skeletal muscle fibers(The Journal of Biophysical and Biochemical Cytology・1961)骨格筋線維の表面に張りついた単核の別個の細胞(衛星細胞)を電子顕微鏡で最初に記載した報告閲覧 2026-08-24
  3. 3.Pax7-expressing satellite cells are indispensable for adult skeletal muscle regeneration(Development・2011)マウスPax7遺伝子座にジフテリア毒素受容体を組み込んでPax7陽性の筋衛星細胞だけを条件的に除去すると、恒常状態でも、筋毒素・運動による損傷後でも筋組織が著明に失われ再生が破綻し、炎症細胞と脂肪細胞が浸潤する。他の再生能をもつ細胞では代償されず、Pax7陽性衛星細胞の移植だけで再生が回復する閲覧 2026-08-24