組織病理学

組織病理学 · H2-079B

前立腺腺癌

Prostate adenocarcinoma

描出疾患
前立腺癌

🧠 全体像:前立腺癌の大部分はで、主に高齢男性の辺縁帯に発生する。浸潤性小腺管、の消失、核小体の明瞭化を組み合わせ、と(ISUP Grade Group)で悪性度を報告する。

発生背景

因子 要点
加齢 50歳以降に増加
家族歴・遺伝 の前立腺癌、BRCA2などの生殖細胞系列異常でリスク上昇
祖先集団 アフリカ系祖先をもつ集団では罹患・死亡リスクが高い
アンドロゲン 前立腺上皮と腫瘍の生存・増殖を支える
分子異常 喪失による–AKT経路活性化など

食事やを単独の確定原因とせず、喫煙は特に進行・死亡リスクとの関連を含めて解釈する。

組織像と鑑別

所見 前立腺腺癌 良性腺・
腺構築 小型腺管が不規則に間質へ浸潤 大小の腺が結節性に増生
通常消失 保持
上皮 単層性、・明瞭な核小体 との性
管腔 好酸性分泌物や結晶を伴いうる 小体を認めうる
部位 多くは辺縁帯(発生帯を同定できた88癌の68%)1 ・

は関連病変だが、存在だけで浸潤癌とは診断しない。必要に応じてp63・などのマーカーとAMACRを補助的に用いる。34βE12・p63・AMACRを同一切片で見る3剤カクテル染色は特異度100%・感度93.8%と報告されており、マーカーの消失と癌側マーカーの陽性を同時に確認できる点に利点がある2。

flowchart TD
    A["不規則な小腺管を認識"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell layer'>基底細胞層</span>・核小体を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pattern of invasion'>浸潤様式</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perineural invasion'>神経周囲浸潤</span>を評価"]
    C --> D["Gleasonパターンを判定"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gleason score'>Gleasonスコア</span>を算出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ISUP Grade Group'>ISUPグレードグループ</span>を報告"]

Gleason分類

「grade 2」という単独表現では、旧来のか現行の2かを区別できない。現行の5段階のgrade groupは2014年のISUP合意会議で提案されたもので、実務で割り当てられる最低スコアが6であること(数字の直感に反して「6が最も良い」こと)を前提としている3。現行報告では次の対応を明記する。

1 3+3=6
2 3+4=7
3 4+3=7
4 8
5 9〜10

パターン3は個々に分離した形成良好な腺管、パターン4は癒合腺管、構築、構築、形成不良腺管を含む。2014年ISUP合意会議は腺管をすべてパターン4、構造もパターン4、面疱壊死をパターン5と定めた3。合計7でも3+4と4+3では予後が異なる。

💡 同じ3+4=7の中でも差がつく。 生検370例の解析では、浸潤性増殖または導管内癌の存在が後の生化学的再発の(調整2.40、95%信頼区間1.03〜5.60)だったのに対し、パターン4の割合(%GG4)は独立因子ではなかった(1.00)。このため/導管内癌は病理報告に記載し、のとすべきとされる4。

診断・進展・治療

は前立腺特異的だが癌特異的ではなく、BPH、前立腺炎、尿路操作などでも上昇する。固定した4 ng/mL閾値や「癌は正常の10倍」という説明だけで癌を診断・除外しない。前立腺癌予防試験のプラセボ群で、が一度も4.0 ng/mLを超えずも正常だった2,950例に7年後に生検を行うと15.2%に癌が見つかり、そのうち14.9%は7以上だった。癌の頻度は 0.5 ng/mL以下でも6.6%、3.1〜4.0 ng/mLでは26.9%と連続的に上がり、閾値の内側にも外側にもはない5。、、家族歴、前立腺などから生検適応を評価し、組織型、グレードグループ、を病期と統合する。

進行癌は局所浸潤やリンパ節転移を来し、は典型的にだが成分を伴うこともある。低リスク限局癌では、臨床的に意義のある限局癌では術または放射線療法を検討する。進行癌ではを基盤に、、化学療法、放射線療法などを病期・に応じて組み合わせる。

詳細な正準ノートは前立腺腺癌を参照する。

まとめ

  • 浸潤性小腺管、消失、核小体を組み合わせて診断する。
  • 単独の「grade 2」を避け、とを併記する。
  • 、グレード、病期、全身状態を統合して治療を選ぶ。

出典

  1. 1.Zonal distribution of prostatic adenocarcinoma. Correlation with histologic pattern and direction of spread(The American Journal of Surgical Pathology・1988)根治的前立腺摘除標本104例のうち発生帯を同定できた88癌では、68%が辺縁帯、24%が移行帯、8%が中心帯から発生していた。移行帯癌の大半は経尿道的切除で診断され、しばしば前立腺過形成結節内から発生したようにみえた閲覧 2026-08-24
  2. 2.Is triple immunostaining with 34betaE12, p63, and racemase in prostate cancer advantageous? A tissue microarray study(American Journal of Clinical Pathology・2007)根治的前立腺摘除91例の組織マイクロアレイで、34βE12・p63・AMACRの3剤カクテル染色は特異度100%・感度93.8%だった。単独抗体では特異度/感度がp63 95.5%/97.3%、34βE12 93.3%/93.8%、AMACR 97.0%/95.6%であり、基底細胞マーカーの消失とAMACR陽性を同一切片で同時に評価することに利点がある閲覧 2026-08-24
  3. 3.The 2014 International Society of Urological Pathology (ISUP) Consensus Conference on Gleason Grading of Prostatic Carcinoma: Definition of Grading Patterns and Proposal for a New Grading System(The American Journal of Surgical Pathology・2016)2014年ISUP合意会議で各Gleasonパターンの定義が改訂され、篩状腺管はすべてパターン4、糸球体様構造もパターン4、面疱壊死はパターン5と定められた。実務で割り当てられる最低スコアは6であり、grade group 1(3+3=6)〜5(9〜10)の5段階制が提案された閲覧 2026-08-24
  4. 4.Presence of invasive cribriform or intraductal growth at biopsy outperforms percentage grade 4 in predicting outcome of Gleason score 3+4=7 prostate cancer(Modern Pathology・2017)Gleasonスコア3+4=7の生検370例で、浸潤性篩状増殖または導管内癌の存在は前立腺全摘後の生化学的再発の独立予測因子(調整ハザード比2.40、95%信頼区間1.03〜5.60)だったが、パターン4の割合(%GG4)は独立因子ではなかった(ハザード比1.00)。篩状/導管内癌は病理報告に記載すべきで、積極的監視の除外基準とすべきとされた閲覧 2026-08-24
  5. 5.Prevalence of prostate cancer among men with a prostate-specific antigen level < or =4.0 ng per milliliter(The New England Journal of Medicine・2004)前立腺癌予防試験のプラセボ群のうち、PSAが一度も4.0 ng/mLを超えず直腸診も正常のまま7年後に生検を受けた2,950例(62〜91歳)で、449例(15.2%)に前立腺癌が見つかり、そのうち67例(14.9%)はGleasonスコア7以上だった。癌の頻度はPSA 0.5 ng/mL以下で6.6%、0.6〜1.0で10.1%、1.1〜2.0で17.0%、2.1〜3.0で23.9%、3.1〜4.0で26.9%と連続的に上昇した。4.0 ng/mL以下という「正常範囲」でも高異型度癌を含めて稀ではない閲覧 2026-08-24