Histopathology

Histopathology · H2-096A

卵巣子宮内膜症関連癌の分子機序

Endometriosis ovarii

描出疾患
子宮内膜症・子宮腺筋症卵巣癌

🧠 全体像:卵巣は反復する周期性出血の場であり、貯留した血液に含まれる鉄がを介して上皮のDNA損傷を蓄積させることで、一部の症例で関連卵巣癌(endometriosis-associated ovarian carcinoma:EAOC、主に)へ進展する経路が想定されている。

悪性転化の機序

flowchart TD
    A["卵巣<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometriosis'>子宮内膜症</span>"] --> B["周期的出血が嚢胞内に反復"]
    B --> C["ヘム・鉄の蓄積"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fenton reaction'>フェントン反応</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive oxygen species (ROS)'>活性酸素種</span>の産生"]
    D --> E["上皮細胞のDNA損傷"]
    E --> F["ARID1A・PTENなどの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatic mutation'>体細胞変異</span>の蓄積"]
    F --> G["異型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometriosis'>子宮内膜症</span>(細胞異型を伴うが浸潤のない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='precursor lesion'>前駆病変</span>)"]
    G --> H["卵巣<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clear cell carcinoma'>明細胞癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrioid carcinoma'>類内膜癌</span>(EAOC)"]

のSTIC()からTP53異常を介して生じる経路(参照)とは異なり、関連癌は主にとして生じ、ARID1A遺伝子(クロマチン)の機能喪失変異が高頻度にみられる点が特徴である。

異型子宮内膜症という前駆病変

病変 特徴
典型的な ・間質、反復出血、。詳細は卵巣を参照
内膜症性上皮に細胞異型(・核・重層化)を認めるが、を欠くと考えられている
関連癌 異型に隣接して発生することが多く、両者でARID1Aなど同一の変異を共有する例が報告されている

隣接する病変と癌が同一のを共有することは、両者が単一の腫瘍性クローンから生じたことを支持する所見であり、が単なる「危険因子」ではなく直接のとなりうることを示す。

臨床的意味合い

⚠️ )の存在だけで癌化を疑う必要はないが、長期にわたる病変、閉経後の新規結節、急速な増大、不整な造影増強域を伴う場合は、への進展を含めて評価する。の全体像・症状・治療は卵巣および、疾患横断的な整理は/内膜増殖症/を参照する。

まとめ

  • 反復出血による鉄・がARID1A・PTENなどの変異蓄積を介してに関与すると考えられている。
  • 異型は細胞異型を伴うが浸潤のないである。
  • 関連癌は主にであり、のSTIC経路とは異なる。
  • 隣接病変間での変異共有はクローン関係を支持する所見である。