内科学

内科学 · S-18

ポルフィリン症

Porphyria

前提:正常
ヘムの生合成と分解・鉄の恒常性
疾患
ポルフィリン症
症状
光線過敏
検査値
トランスフェリン飽和度

🧠 全体像:は酵素の異常により、またはが蓄積するである。急性では神経内臓発作、皮膚型ではが中心となる。急性腹痛発作中は、無差別な「検査」ではなく(PBG)とδ-をまず測る。

臨床分類

群 代表疾患 主な症候
急性肝性 (AIP)、遺伝性coproporphyria、、ALAD欠損症 激しい腹痛、悪心、便秘、頻脈、高血圧、低Na血症、、末梢
水疱性皮膚型 (PCT)など 日光露出部の皮膚脆弱性、水疱、色素沈着
非水疱性型 erythropoietic protoporphyriaなど 日光直後の・紅斑

薬剤、アルコール、絶食・低炭水化物、感染、手術、性ホルモン変動などが急性発作を誘発する。

診断アプローチ

flowchart TD
    A["原因不明の激しい腹痛+自律神経/神経症状"] --> B["発作中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spot urine (sample)'>随時尿</span>PBG+ALA・クレアチニン補正"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span>"}
    C -->|"はい"| D["血液・尿・便<span class='jp-term jp-term-diagram' title='porphyrin'>ポルフィリン</span>パターンで型判定"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic testing'>遺伝子検査</span>で確定・家族評価"]
    C -->|"いいえ"| F["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute abdomen'>急性腹症</span>・中毒を再評価"]

💡 PBGは「発作中の1本」で決着する。 急性(・・遺伝性coproporphyria)の急性発作では尿PBGが必ず上昇するので、1検体でPBGのを示せば診断はその場で確定でき、同じ検体をPBG・ALA・総の定量用に取り置く1。定性・半定量スクリーニング(Watson-Schwartz反応のような尿PBGの呈色反応)は陽性でもそこで止めず、できるだけ早く定量PBGで追認する。重症例では検査結果を待って治療を遅らせない。2

💡 「まれな病気だが保因者はまれではない」。 の遺伝子保有頻度は白人で約1600人に1人と、従来の推定より高い。一方で臨床的は約2〜3%にとどまり、発作の大半は14〜45歳の女性に起こる。反復発作例の約20%は慢性疼痛など持続症状へ移行する3。

皮膚型では血漿・尿・便を病型に応じて測る。PCTでは・、、、アルコール、エストロゲン、HFE関連鉄過剰を評価する。

治療

急性肝性ポルフィリン症発作

誘因薬を中止し、入院して疼痛、悪心、低Na血症、血圧、痙攣、を監視する。中等症〜重症、神経症状、持続する発作には静注を速やかに用いる。炭水化物負荷(ブドウ糖静注)が単独で適切なのは軽症発作——軽度の疼痛のみで麻痺も低Na血症もない場合——か、が手元に届くまでのつなぎに限られ、重症発作の代替ではない1。薬剤安全性は専門databaseで確認する。反復発作ではgivosiran(ギボシラン、肝細胞のALAS1 mRNAを標的とするRNAi製剤)を専門施設で検討し、肝・腎有害事象とを監視する。第3相ENVISION試験(94例)では2.5 mg/kgを月1回6か月し、89例の年間複合発作率が12.5に対し3.2と74%低下した。ただしこのは肝・腎有害事象の増加を伴っており、監視が要る4。

PCT

誘因を除き、通常は少量反復で鉄を減らす。不適例では低用量を用いる。

💡 とは、寛解までの速さでほぼ並ぶ。 前向き比較(48例)では450 mLを2週ごとに血清20 ng/mLまで、は100 mgを週2回(血漿正常化後1か月以上まで)とし、血漿正常化までのは6.9か月対6.1か月で有意差がなかった。例数が少なくの確定には至っていないが、が難しい例でを選ぶ根拠になる5。

日光防護と/・鉄過剰など基礎疾患の治療を並行する。

まとめ

  • 急性発作を疑えば、発作中のPBG・ALAを最初に測る。
  • 重症急性発作は静注で治療し、低Na血症・神経障害・呼吸不全を監視する。
  • PCTでは鉄・/など誘因を評価し、または低用量を用いる。

出典

  1. 1.Recommendations for the diagnosis and treatment of the acute porphyrias(Annals of Internal Medicine・2005)原因不明の腹痛では急性ポルフィリン症を鑑別に入れ、随時尿(single-void urine)1検体で尿ポルフォビリノーゲンの著明高値を示せば診断は速やかに確定できる。同じ検体をポルフォビリノーゲン・δ-アミノレブリン酸・総ポルフィリンの定量用に保存する。静注ヘミンをできるだけ早く開始することが最も有効な治療で、ブドウ糖静注単独が適切なのは軽症発作(軽い疼痛で麻痺も低Na血症もない)またはヘミンが入手できるまでの間に限られる。誘因の除去と支持療法を併せ、家族は酵素学的・遺伝子検査で保因者を同定する。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Best practice guidelines on clinical management of acute attacks of porphyria and their complications(Annals of Clinical Biochemistry(British and Irish Porphyria Network)・2013)急性間欠性ポルフィリン症・異型ポルフィリン症・遺伝性コプロポルフィリン症による急性発作では尿ポルフォビリノーゲンが必ず上昇しており、この測定が診断確定に必須である。定性・半定量スクリーニング検査が陽性の場合は、できるだけ早く定量ポルフォビリノーゲンで追認しなければならない。ただし重症患者では検査結果を待って治療を遅らせてはならない。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Acute Hepatic Porphyrias: Review and Recent Progress(Hepatology Communications・2019)急性肝性ポルフィリン症はALA脱水酵素欠損症・急性間欠性ポルフィリン症・遺伝性コプロポルフィリン症・異型ポルフィリン症の4型からなる。急性間欠性ポルフィリン症は白人の約1600人に1人と従来考えられていたより高頻度だが臨床的浸透率は約2〜3%と低く、発作は主に14〜45歳の女性に起こる。診断は尿中のALA・ポルフォビリノーゲンの著明高値による。反復発作例の約20%が慢性疼痛など持続症状を発症する。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Phase 3 Trial of RNAi Therapeutic Givosiran for Acute Intermittent Porphyria(New England Journal of Medicine・2020)症候性の急性肝性ポルフィリン症94例(ギボシラン48例・プラセボ46例)を対象にギボシラン2.5 mg/kgを月1回6か月皮下投与した二重盲検第3相試験。急性間欠性ポルフィリン症89例での年間複合発作率は平均12.5(プラセボ)に対し3.2(ギボシラン)で74%低かった。有効性の向上は肝・腎有害事象の頻度増加を伴った。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Low-dose hydroxychloroquine is as effective as phlebotomy in treatment of patients with porphyria cutanea tarda(Clinical Gastroenterology and Hepatology・2012)晩発性皮膚ポルフィリン症48例の前向きパイロット研究で、瀉血(450 mLを2週ごと、血清フェリチン20 ng/mLまで)17例と低用量ヒドロキシクロロキン(100 mgを週2回、血漿ポルフィリン正常化後1か月以上まで)13例を比較した。血漿ポルフィリン濃度正常化(寛解)までの期間中央値は瀉血6.9か月・ヒドロキシクロロキン6.1か月で有意差はなかった(非劣性を確定するには例数が不足)。閲覧 2026-08-25