内科学

内科学 · S-26

血尿の鑑別診断

Differential Diagnosis of Hematuria

前提:病態
糸球体疾患の発症機序
前提:正常
腎循環と糸球体濾過

🧠 全体像:血尿は肉眼的または顕微鏡的に尿中赤血球を認める状態で、で陽性となった場合は顕微鏡で確認する。か尿路性かを尿沈渣・蛋白尿で分け、尿路悪性腫瘍リスクに応じてと上部尿路画像を組み合わせる。抗凝固薬内服だけで説明して評価を省略しない。

まず確認すること

  • は通常、適切に採取した尿であたり赤血球3個以上を指す。陽性だけでは定義を満たさず、尿沈渣での確認が必要である1。
  • 月経・性器出血、激しい運動、外傷・処置、、、赤色食品・薬剤を区別する。
  • が疑われれば培養して治療し、治療後に尿検査を再確認する。

糸球体性と尿路性

所見 非・尿路性
赤血球形態 、 赤血球
円柱 通常なし
蛋白尿 を伴いやすい 多くは軽度
代表原因 IgA腎症、感染関連GN、、血管炎、、 結石、、腎・・、BPH、、外傷

⚠️ の所見は「あれば強い」が「なければ否定できない」。 、とくにとは糸球体由来を支持するが、尿中赤血球形態の感度は一定せず、陰性でも糸球体疾患を除外できない2。したがって所見が無いことを理由に腎臓内科的評価を打ち切らないし、逆に所見があっても悪性腫瘍リスクが高ければ泌尿器科的評価は別に判断する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine dipstick'>尿試験紙</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='occult blood'>潜血</span>陽性/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gross (macroscopic) hematuria'>肉眼的血尿</span>"] --> B["尿顕微鏡で赤血球確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysmorphic RBCs'>変形赤血球</span>・円柱・蛋白尿"}
    C -->|"はい"| D["腎臓内科:腎炎の血清学的検査+腎生検を検討"]
    C -->|"いいえ"| E["感染・結石・悪性腫瘍リスクを評価"]
    E --> F{"低リスクで一過性"}
    F -->|"はい"| G["一定期間後に尿検査再確認"]
    F -->|"いいえ"| H["リスク別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy (cystoscope)'>膀胱鏡</span>+上部尿路画像"]

悪性腫瘍リスクに応じた評価

年齢、性別、喫煙量、、持続性、歴、などで層別化する1。では+腎・膀胱超音波、高リスクでは+多相尿路造影( urography)が基本で、禁忌なら(MR urography)などへ代替する3。低/ほぼ無リスクでは直ちに侵襲的検査をせず再検できる。、とくに無痛性血尿は悪性腫瘍を強く疑う。

💡 「全例に尿路造影+」はもう標準ではない。 AUA/SUFUは2020年にリスク層別型の評価へ転換し、2025年の改訂でそのリスク層別の基準そのものと、尿中・の使い方、方針を更新した1。低リスクにまで一律のと侵襲を課さないための枠組みであり、リスクが高い側では検査を減らすものではない点に注意する。

抗凝固薬や使用者も、基礎尿路病変からの出血が顕在化した可能性があるため同様にリスクに基づく評価を行う。

⚠️ 内服は血尿を説明しきる理由にならない。 オンタリオ州の66歳以上251万人余りのコホートでは、曝露中の血尿関併症は1000人年あたり123.95件(非曝露80.17件、比1.44)と多いだけでなく、曝露者のほうが6か月以内にと診断される割合が高かった(0.70%対0.38%、1.85)4。抗凝固は出血の原因ではなく、すでにあった病変を可視化する契機として働いている。

まとめ

  • 陽性は尿顕微鏡で赤血球を確認する。
  • 、、蛋白尿はを示唆する。
  • 尿路評価は悪性腫瘍リスク別に行い、抗凝固薬使用を理由に省略しない。

出典

  1. 1.Updates to Microhematuria: AUA/SUFU Guideline (2025)(The Journal of Urology(American Urological Association / SUFU)・2025)2020年版AUA/SUFU顕微鏡的血尿ガイドラインに対し、2019年12月〜2024年6月の文献82編を全文査読し23編を採用して作られた2025年改訂。顕微鏡的血尿を尿試験紙ではなく尿沈渣で定義し、悪性腫瘍リスクに応じて再検、膀胱鏡、超音波、軸位上部尿路画像を選び分ける枠組みは維持しつつ、リスク層別の基準そのものが改訂され、尿中腫瘍マーカー・尿細胞診の使い方と診断・サーベイランスの指針が更新された閲覧 2026-08-25
  2. 2.Glomerular Hematuria and the Utility of Urine Microscopy: A Review(American Journal of Kidney Diseases・2022)有棘赤血球や赤血球円柱は糸球体性血尿を支持するが、尿中赤血球形態の感度は一定せず、陰性所見だけでは糸球体疾患を除外できないこと閲覧 2026-08-25
  3. 3.ACR Appropriateness Criteria Hematuria(Journal of the American College of Radiology・2020)顕微鏡的血尿の危険因子の有無、妊娠、肉眼的血尿をそれぞれ別の臨床状況として扱い、超音波・CT尿路造影・MR尿路造影の適応を選び分ける画像評価方針閲覧 2026-08-25
  4. 4.Association Between Use of Antithrombotic Medication and Hematuria-Related Complications(JAMA・2017)カナダ・オンタリオ州の66歳以上251万8064人を追跡した住民ベースコホート研究。抗血栓薬曝露中の血尿関連合併症は1000人年あたり123.95件で非曝露の80.17件より多かった(発生率比1.44、95%CI 1.42〜1.46)。重要なのは、抗血栓薬曝露者のほうが6か月以内に膀胱癌と診断される割合が高かったこと(0.70%対0.38%、オッズ比1.85、95%CI 1.79〜1.92)で、抗凝固薬・抗血小板薬の内服は血尿を説明しきる理由にならない閲覧 2026-08-25