小児科学

小児科学 · 02

新生児ケアの要点、Apgarスコア

Aspects of newborn care, Apgar scoring system

前提:正常
骨格系:頭蓋(泉門・縫合)
症状
肢端チアノーゼ

🧠 全体像:出生直後は保温・乾燥・刺激と同時に呼吸・心拍を評価し、無呼吸・または心拍100回/分未満なら生後60秒以内にを開始する。は1分・5分時点の状態と蘇生への反応を並行して記録する指標で、採点のために蘇生を遅らせない。その後は体格、バイタル、、泉門を月齢相応か評価する。

新生児の初期ケア

  1. 保温し、児を乾燥させ、必要に応じて刺激する
  2. 気道を開通位にし、口・鼻を必要に応じて拭く。羊水が清明か胎便かにかかわらず、ルーチンの口腔・鼻腔・は行わない。換気時に気道閉塞が疑われる場合のみ吸引を検討する1
  3. 呼吸と心拍を速やかに評価する
  4. 無呼吸・、または心拍数100回/分未満なら、生後60秒以内にを開始する1
  5. 蘇生を要しない児では臍帯を少なくとも30〜60秒遅延し、母親とのと早期母乳開始を支援する1。⚠️ 遅延の長さは発行団体で違う——AHA/NRPが「少なくとも30〜60秒」とするのに対し、の2025年統合ガイドラインは推奨19で「生後1分未満の早期は、児が仮死で直ちに蘇生へ移す必要がある場合を除き推奨しない」とし、Remarksで1〜3分の遅延を・早産に共通の標準として示す2。下限(30〜60秒か1分か)と目標(1〜3分か)が違うだけで、どちらも「蘇生が要らなければ待つ」点は同じである(・第4期の管理)
  6. 出生後1分・5分でを記録するが、採点のために上記処置を遅らせない

新生児の評価

体重・身長・頭囲

項目 ・経過
出生体重 在胎週数・性別別ので評価
生理的体重減少 生後3〜4日にピーク、最大でも出生体重の10%まで、生後10日までに回復
体重増加 月齢・在胎週数・哺乳状況を踏まえ、上の速度で評価
体重の目安 生後約5〜6か月で出生時の2倍、生後約12か月で3倍は古典的な目安
身長 年齢・性別別の上で経時評価
年齢・性別別の上で経時評価
胸囲 30.5〜33 cm
  • 出生時は>胸囲だが、生後12か月までに=胸囲となる。
  • は脳・髄膜・髄液・頭蓋骨を含む頭蓋内容の成長を間接的に反映する。単回値や簡便式ではなく、在胎週数・身長・体重との釣り合いと、年齢・性別別の上の推移を評価する3。

年齢別の体重・身長の古典的な目安は以下の通り。ただし、個々の正常範囲を定める固定値ではなく、実際の評価では年齢・性別別のを優先する3。

年齢 体重の目安 身長の目安
出生 3.3±0.7 kg 50±5 cm
5〜6か月 出生体重の2倍 —
12か月 出生体重の3倍 75±2 cm
2歳 以後2 kg/年で増加 82±2 cm
3歳 — 91±2 cm
4歳 — 98〜100 cm
4歳〜思春期 — 5〜6 cm/年
思春期 — 8〜14 cm/年

バイタルサイン

年齢 呼吸数(回/分) 心拍数(回/分)
新生児(出生12時間) 30-40 120-160 60-76 31-45
新生児(生後96時間) — — 67-84 35-53
乳児(1-12か月) 20-40 80-140 72-104 37-56
幼児(1-2歳) 25-32 80-130 86-106 42-63
未就学児(3-5歳) 20-30 80-120 89-112 46-72
学童(6-9歳) — 70-110 97-115 57-76
思春期前(10-11歳) — — 102-120 61-80
思春期(12-15歳) 16-19 60-100 110-131 64-83
成人 12-20 — — —

・出生直後の管理では、正常体温(36.5〜37.5℃)を維持し、低体温との双方を避ける。

💡 小児は年齢とともに呼吸数・心拍数は低下し、血圧は上昇する。年齢相応のからの逸脱が異常の判定基準となる。

原始反射

反射 誘発手技 出現・統合時期の目安
手掌に指を入れ押す 出生時からみられ、生後4〜6か月頃までに統合
足底の基部を触れる 出生時からみられ、生後9〜12か月頃までに統合
口角周囲の皮膚を刺激 生後3〜4か月
Moro反射() 仰臥位で頭頸部・体幹を十分に支え、頭部をわずかに後方へ傾けてを誘発する(落下させない) 出生時からみられ、生後4〜6か月頃までに統合
口唇・口腔への刺激でを誘発 生後3〜4か月頃からなへ移行
仰臥位で頭部をに向ける 出生時からみられ、生後4〜6か月頃までに統合
で背部のを脊柱から約1 cm離してなぞる 出生時からみられ、生後2〜4か月頃までに統合
Landau反射 で体幹を水平に支持する 生後3〜4か月頃に出現し、1〜2歳頃までに統合
パラシュート反射 体幹を十分に保持し、でゆっくり頭側を下げる 生後8〜9か月頃に出現し、その後持続
陽性支持反射 体幹を支え足を平面につける にみられる原始的支持は生後1〜2か月頃に弱まり、後に荷重へ移行
・歩行反射 立位でを台の縁に触れさせる 出生時からみられ、生後2か月頃までに弱まる
Babinski反射 足底外側を刺激 の+他趾の。生後1か月時点では生理的(にみられるのは正常)。年長児・成人での出現は中枢神経系障害を示す

大泉門・小泉門

泉門 形状 閉鎖時期
菱形 生後10〜24か月
三角形 生後2か月以内
  • は左右の・の間で、・・が接する部位にある。
  • は左右のとの間で、とが接する部位にある。

触診所見の解釈:

所見 示唆する病態
安静・直立位でも膨隆または持続的に 頭蓋内圧亢進、髄膜炎など。正常な拍動だけでは異常としない
陥凹・沈下 脱水、
のバネ様の くる病(ビタミンD欠乏)、梅毒

排泄

  • 初回排尿:生後24時間以内
  • 初回胎便(黒緑色での便):生後48時間以内

新生児黄疸

  • ビタミンD欠乏によるくる病、梅毒などと異なり、は生理的にも起こりうる:の溶血と肝機能未熟によるの上昇。
  • 通常は生後2〜8日に出現する。生後24時間以内の黄疸は病的であり、精査を要する。

生後早期のケア

  • ビタミンK予防は、出生後の初期安定化と母児接触を妨げない時点で筋注するのが標準である。具体的な時刻・用量は地域の指針に従う。経口レジメンは国により採用されるが、吸収と性の問題があるため施設・国の指針に従う4
  • ビタミンD補充は、地域の栄養・指針に沿って開始する
  • は対象薬と実施方針が国ごとに異なり、2.5%を普遍的標準とはみなさない。母体スクリーニングとを確認する
  • を出生時に接種するかは結核疫学と各国の制度に依存する
  • 低血糖・のモニタリング

Apgarスコア

出生後1分・5分に評価する標準化された新生児評価法。5項目をそれぞれ0〜2点で採点する(APGAR:Appearance・Pulse・Grimace・Activity・Respiration)。

指標 0点 1点 2点
Activity(筋緊張) 弛緩 四肢を軽度屈曲 活発な運動
Pulse(心拍) 触知なし 100回/分未満 100回/分以上
Grimace(反射性刺激反応) 反応なし 顔をしかめる 咳・くしゃみ・・刺激からの
外観(皮膚色) 全身チアノーゼ・蒼白 体幹ピンク・ 全身ピンク
Respiration(呼吸) 無呼吸 緩徐・不規則 力強い
スコア 評価
7〜10 良好
4〜6 中等度異常
0〜3 低値

⚠️ は出生直後の状態と蘇生への反応を記録する指標であり、の要否・手順を決めるために待って採点するものではない。5分値が7未満なら20分まで5分ごとに再評価するが、単独で仮死を診断したり個人の予後を予測したりはできない5。

まとめ

  • 新生児初期ケアでは保温・乾燥・刺激と呼吸/心拍評価を行い、必要なら生後60秒以内に換気を開始する。Apgarは蘇生と並行して記録する。
  • 体重・身長・・には年齢相応のがあり、逸脱の解釈には年齢を考慮する。
  • は月齢ごとに出現・消失する時期が決まっており、消失すべき時期を過ぎた残存や、逆に本来ない時期の欠如は中枢神経系異常を示唆しうる(Babinski反射は乳児期には生理的)。
  • のは頭蓋内圧亢進を、陥凹は脱水・を、bony compressibility(craniotabes)はくる病・梅毒を示唆する。
  • は5項目×0〜2点で出生後の状態を記録するが、蘇生開始の判断や個人の長期には用いない。

出典

  1. 1.Part 5: Neonatal Resuscitation: 2020 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care(2020)新生児蘇生における初期処置、換気開始、ルーチン吸引の回避、体温管理、遅延臍帯結紮の原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Consolidated guidelines for the prevention, diagnosis and treatment of postpartum haemorrhage(世界保健機関(WHO。FIGO・ICMと共同で公表)・2025)WHO IRISのPDF全文(116頁、2025年10月5日公開、ISBN 978-92-4-011563-7)の推奨一覧と各推奨の Justification・Remarks で確認した。予防では推奨7「The use of a quality-assured uterotonic is recommended for the prevention of postpartum haemorrhage during the third stage of labour for all births.」のもとに7.1オキシトシン10 IU筋注/静注、7.2カルベトシン100 µg筋注/静注(低温流通を保証できない環境では耐熱性製剤)、7.3ミソプロストール400 µgまたは600 µg経口を置き、推奨10で「In settings where multiple uterotonic options are available, oxytocin (10 IU, intramuscularly/intravenously) is the recommended uterotonic agent of choice」とする。推奨8は経腟分娩で静脈路が既にある場合、10 IUを希釈して1〜2分かけて緩徐に静注することを筋注より優先して推奨する(Context-specific)。推奨9(Updated・Not recommended)は9.1エルゴメトリン/メチルエルゴメトリン、9.2オキシトシン・エルゴメトリン配合剤(5 IU/500 µg筋注)、9.3注射用プロスタグランジン(carboprost・sulprostone)を予防には推奨しないとする。9.1のRemarksは「Ergometrine/methylergometrine was previously included in the 2018 WHO recommendations on uterotonics as a context-specific option for PPH prevention, with the condition that it is used only when hypertensive disorders could be safely excluded.」と2018年版からの変更を明示し、GDGが重視した根拠として高血圧の増加(43 per 1000 births)を挙げ、「This recommendation applies only to the use of ergometrine/methylergometrine for prevention of PPH; it does not relate to its use in the treatment of PPH, where it may still be considered as part of second-line management (see Recommendation 25).」と治療への適用外を明記する。推奨14・15(いずれもNew・Not recommended)はトラネキサム酸を経腟分娩・帝王切開のいずれでも予防には推奨しない。推奨16はCCTを熟練した分娩介助者がいる環境での条件付き推奨とし、Remarksで出血量の平均11 mL減・第3期の平均6分短縮という小さな利益と、誤った手技での子宮内反・胎盤遺残の危険を挙げる。推奨17は熟練者がいない環境ではCCTを推奨せず待機的管理と予防的子宮収縮薬を優先する。推奨19(Revalidated・Not recommended)は「Early cord clamping (<1 minute after birth) is not recommended unless the neonate is asphyxiated and needs to be moved immediately for resuscitation.」で、Remarksは「Delayed cord clamping (for 1–3 minutes) should be performed during the provision of essential newborn care.」「The recommendations for the timing of cord clamping apply equally to preterm and term births.」と述べる。推奨20は予防的オキシトシンを受けた women への持続的子宮マッサージを予防目的には推奨しない。推奨19・20のRemarksは積極的管理パッケージについて「the primary intervention within this package is the use of a uterotonic. When oxytocin is administered, controlled cord traction may offer a small additional benefit, while uterine massage appears to offer no added value in preventing PPH. Early cord clamping remains generally contraindicated.」と整理する。診断では推奨21が全分娩での産後出血量の客観的測定(経腟分娩では目盛り付きドレープなど)を推奨し、推奨22(New)が「objectively measured blood loss threshold of ≥300 mL with any abnormal haemodynamic sign (pulse >100 bpm, shock index >1, systolic blood pressure <100 mmHg, or diastolic blood pressure <60 mmHg), or objectively measured blood loss of ≥500 mL, whichever occurs first within 24 hours after birth, and with particular vigilance during the first 2 hours」を初期治療開始の基準とする。推奨23は全例での腹壁からの子宮緊張評価、推奨24は治療の子宮収縮薬として静注オキシトシン、推奨25は静注オキシトシンが使えないか反応しない場合の静注エルゴメトリン・オキシトシン+エルゴメトリン配合剤・プロスタグランジン(舌下ミソプロストール800 µgを含む)、推奨26は治療としての子宮マッサージ、推奨27は分娩後3時間以内の静注トラネキサム酸を標準治療に追加することを推奨する。オキシトシン・カルベトシンとも「best given immediately (preferably within 1 minute) after the birth of the baby or babies. Administration for prevention of PPH need not impede the delaying of cord clamping.」と付記されている閲覧 2026-09-07
  3. 3.WHO Child Growth Standards based on length/height, weight and age(2006)乳幼児の身長・体重は年齢・性別別の標準成長曲線で評価することを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Vitamin K and the Newborn Infant(2022)新生児のビタミンK欠乏性出血予防では出生後の筋肉内投与が標準であり、経口法には有効性と完遂性の制約があることを確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.Committee Opinion No. 644: The Apgar Score(2015)Apgarスコアは出生直後の状態と蘇生への反応を記録する指標であり、単独で仮死の診断や個人の神経学的予後予測には使えないことを確認した。閲覧 2026-08-13