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Disease Atlas · 運動器 · 先天性疾患

アミオプラジア

Amyoplasia

別名
classic arthrogryposis
臓器系
運動器小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Obstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
発生学 8.1:先天異常と出生前診断:異常の種類産科学 45:主な先天異常
鑑別疾患
Pena-Shokeir症候群遠位関節拘縮症
症状
多発性関節拘縮拘縮脊柱側弯症

🧠 全体像:はの最も多い型(全体の約3分の1)で、名前のとおり「筋が作られなかった」病態である。押さえるべき軸は3つ。①散発性——遺伝性症候群のような整った表現型をもつのに家族内再発がなく、当事者の子は罹患しない。②四肢の対称性のというな(肩内転・肘伸展・・重度)。③中枢神経は保たれるので知能は正常以上で20年94%、リハビリテーションと手術で5歳時に85%が歩行機能を得る。つまり予後を決めるのはそのものではなく、筋力をどれだけ引き出せるかである。

位置づけ——多発性関節拘縮の中でどこにいるか

は「2つ以上の身体領域に先天性・非進行性のがある」というにすぎず、少なくとも200の症候群で認められる1。その中では最も多い病型で、全症例の約3分の1を占め1、「古典的」とも呼ばれる。1万に1ので、全体の約30%にあたる2。

遺伝形式 散発性。再発リスクは非常に低い1 常染色体優性。再発率50%1
の分布 四肢全体、多くは対称性1 主に手足の遠位関節に限局1
一次的な障害部位 (と考えられる)1 の異常によるの1
重症度 群として筋力低下・が高度でがより障害される1 相対的に軽い1

⭐ スウェーデンの全国調査(131例)では、48例(37%)、27例(21%)、中枢神経障害を伴う22例(17%)で、この3群がを占めた1。「の子」を見たら、まずこの3つのどれかを考えるのが実際的である。

病態——筋が作られない

amyoplasia は「筋形成が無い」という意味である1。病因は確定していないが、妊娠早期の胎児への血流障害により低血圧と低酸素がを傷害し、筋組織の欠如または低形成と、脂肪・結合組織への置換が生じると考えられている1。中枢神経機能は正常のまま、筋組織がしばしば脂肪組織とに置き換わる2。

flowchart TD
    A["妊娠早期の胎児への血流障害<br>(低血圧・低酸素)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior horn cell'>前角細胞</span>の傷害"]
    B --> C["筋の欠如・低形成<br>脂肪組織と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous tissue'>線維組織</span>への置換"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal movement'>胎動</span>の欠如(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal akinesia'>胎児無動</span>)"]
    D --> E["筋・腱が伸張されない"]
    E --> F["出生時に完成した対称性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='joint contracture'>関節拘縮</span>"]
    C --> G["筋力そのものの喪失"]
    G --> H["歩行・上肢機能の制限"]

💡 と筋力低下は、同じ原因の別の結果である。 関節が固いから動かせないのではなく、筋がそもそも無い。だからを矯正しただけでは機能が戻らない——後述のとおり、を予測するのはではなく筋力である1。

⭐ 散発性であることが、形態がであることと矛盾しない。 形態的特徴は遺伝性症候群を思わせるが、発生は散発性で、の当事者の子は罹患しない1。の一方に生じる頻度が高いことも知られており、これは子宮内の狭さよりも血管性の障害によると考えられている1。家族歴が無いことは、この診断を支持する所見であって除外する所見ではない。

臨床像

罹患の分布

四肢すべての対称性罹患が60〜92%、下肢のみが7〜24%、上肢のみが1〜13%である2。は高度に特異的で、筋量の減少・典型的な・出生時のの3点からなり、非対称性の罹患もありうる1。

定型的な肢位

部位 典型像
肩 内転・。の機能が乏しい2
肘 が多く、・の機能が乏しいためが欠如ないし著明に低下する。関節はでを欠く2。前腕は1
手関節・手 にとを伴う。母指は内転位2
股関節 屈曲・外転・が多い。片側または両側のが約3分の12
膝 が最多。が弱くに皮膚の陥凹を伴う2
足 重度のが最も多く、ほぼ全例にがある。矯正が難しく再発しやすい2

💡 皮膚の所見が診断の手がかりになる。 罹患関節の上には通常、皮膚の陥凹がみられる1。肘のの欠如も同じ意味をもつ——その関節が胎内で一度も動いていないことの痕跡である。

四肢以外

  • 正中部の顔面血管腫と丸いが一般的な随伴所見である1。の血管腫として記載される2。
  • など脊柱の異常弯曲が約28〜67%にみられる。多くはを伴わない長いだが、進行が速い2。
  • ()がしばしばみられる2。
  • ⚠️ 腹壁の筋欠損とが約10%にみられ、と腸閉鎖も記録されている1。血管性の病因を共有する所見と考えられており、「整形外科の問題」として腹部の診察を省かない。
  • 生殖器系の種々の異常が55〜70%にみられる2。

⭐ 中枢神経は保たれる。 などの追加の問題が無ければ精神発達は正常で1、知能は正常または正常以上、20年は94%である2。全体では約25%に・中枢神経障害がみられる1ので、この点がと中枢神経障害を伴う群との最大の分かれ目になる。

治療と予後

治療は①リハビリテーション②個別化した③手術の3本柱である2。

⭐ は出生時に最大である。 のは出生時が最も強く、そこから先の可動域は介入で変えられる1。⚠️ ただしは高度になりうるうえ、矯正後に再発しやすい1。はとくに再発が多い2。

⚠️ を最小限にする。 早期のは関節を動かすためだけでなく、筋の成長を促してさらなるを防ぐために重要である1。⭐ ではより筋力のほうがと強く相関し、の予測にも重要であることが示されている1。固定は「守り」ではなく「損失」になりうる。

到達点の目安は次のとおりである。

  • 適切なと手術により、5歳時に85%が歩行機能を獲得する2。
  • 一方での自立度は一様ではない。ある報告では75%が自力で摂食できるが、自力で更衣できるのは約10%、洗面35%、入浴25%にとどまる2。

💡 「歩けるようになる」と「自立して暮らせる」は別の指標である。 歩行の数字(85%)だけを見て見通しを説明すると、上肢機能と身の回りの動作の困難さが伝わらない。

⚠️ の有無が予後を分ける。 は中枢神経機能が正常で20年94%と予後が良い一方、が早く始まり肺の発達そのものを妨げた場合は生後まもなく呼吸不全で失われる。この最重症端が()で、多発という見た目が同じでも見通しがまったく違う。

まとめ

  • はの最多型で、全体の約3分の1・1万に1。「筋形成が無い」という語義のとおり、筋が脂肪・に置き換わる。
  • 病因は妊娠早期の胎児への血流障害によるの傷害と考えられている。散発性で、当事者の子は罹患しない。
  • 四肢の対称性罹患が60〜92%。肩内転・肘伸展(を欠くの肘)・・重度というなをとり、罹患関節上に皮膚の陥凹がある。
  • 正中部の顔面血管腫と丸い、脊柱の異常弯曲28〜67%、腹壁異常約10%、生殖器系の異常55〜70%を伴う。・腸閉鎖の報告もある。
  • 中枢神経は保たれ、知能は正常以上、20年94%。全体で約25%にみられる中枢神経障害を伴わない点が最大の分かれ目である。
  • は出生時に最大で、その後の可動域は介入で変えられるが再発しやすい。予後を規定するのはではなく筋力であり、を最小限にする。
  • 5歳時に85%が歩行機能を得る一方、自力での更衣は約10%にとどまるなど、上肢機能との自立は別に見る必要がある。

出典

  1. 1.AMC: amyoplasia and distal arthrogryposis(Journal of Children's Orthopaedics・2015)多発性関節拘縮が2つ以上の身体領域にわたる先天性・非進行性の関節拘縮と定義される純粋に記述的な診断であり、少なくとも200の異なる症候群で認められうること、最も多い病型がアミオプラジアで「古典的関節拘縮症」とも呼ばれる散発性の病態であり全症例の約3分の1を占めること、2番目に多いのがおそらく遠位関節拘縮症であること、amyoplasiaという語が「筋形成が無い」ことを意味すること、病因は不明だが妊娠早期の胎児への血流障害により低血圧と低酸素が前角細胞を傷害し筋組織の欠如または低形成と脂肪・結合組織への置換を来すと考えられていること、形態的特徴は遺伝性症候群を思わせるが発生は散発性でアミオプラジアの当事者の子は非罹患であること、一卵性双胎の一方に生じる頻度が高いこと、診断基準が高度に特異的で筋量の減少・典型的な関節拘縮・出生時の肢位からなり多くは四肢すべてに対称性であるが下肢のみ、まれに上肢のみ、非対称性の罹患もあること、典型的には肩が内転・内旋、肘が伸展位で前腕回内、手関節と手指が屈曲位となり、股関節は外転・外旋位で膝屈曲か、屈曲位で膝伸展または屈曲となり股・膝は脱臼しうること、足は多くが内反尖足内転位であること、罹患関節上の皮膚に陥凹がみられるのが通常であること、正中部の顔面血管腫と丸い顔貌が一般的な随伴所見であること、腹壁の筋欠損と鼠径ヘルニアが出生児の約10%にみられ腹壁破裂と腸閉鎖も記録されていること、周産期仮死などの追加の問題が無ければ精神発達は正常であること、アミオプラジアの拘縮は出生時に最大であること、アミオプラジアでは関節拘縮が高度になりうるうえ矯正後に再発しやすいこと、遠位関節拘縮症が主に手足の遠位関節に拘縮を示す症候群群で常染色体優性遺伝のため再発率が50%であるのに対しアミオプラジアは散発性であること、遠位関節拘縮症の正確な発生率は分かっておらず、350例超の大規模研究では44例(12.6%)、別の総説では155例中35%、西スウェーデンの疫学調査では68例中5例(7%)と報告が開くこと、Bamshadらの1996年の改訂・拡張分類が遠位関節拘縮症を「四肢機能を障害する一次性の神経・筋疾患を伴わずに2つ以上の異なる身体領域に先天性拘縮を示す遺伝性の一次性四肢奇形疾患」と定義し、遠位関節の罹患・近位関節の限定的罹患・常染色体優性遺伝・浸透率の低下・表現度の多様性を特徴とすること、当初9型が記載され2006年に10番目が定義されたこと、最も多く記載される病型がDA1とDA2B(Sheldon-Hall症候群)であり、DA2AがFreeman-Sheldon症候群であること、TNNI2・TPM2・TNNT3・MYH8・MYH3といったサルコメア蛋白遺伝子の変異が複数の遠位関節拘縮症で見つかっており胎児期発症のミオパチーが共通の原因と考えられること、西スウェーデンの疫学研究では多発性先天性拘縮の出生有病率が生児出生5,100に1であったこと、スウェーデンの全国調査131例ではアミオプラジア48例(37%)・遠位関節拘縮症27例(21%)・中枢神経障害を伴う関節拘縮22例(17%)であったこと、群としてアミオプラジアは遠位関節拘縮症より筋力低下と関節拘縮が高度で運動機能がより障害されること、アミオプラジアでは関節可動域より筋力のほうが運動機能と強く相関し歩行能力の予測にも重要であること、精神遅滞・中枢神経障害が多発性関節拘縮の約25%にみられること、不動化を最小限にし早期から能動的な運動を促すべきであることを、Introduction・Causes・Occurrence・Clinical classification・Amyoplasia・Distal arthrogryposis・Swedish arthrogryposis study の各節で確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Arthrogryposis: an update on clinical aspects, etiology, and treatment strategies(Archives of Medical Science・2016)アミオプラジア(古典的関節拘縮症)が散発性の多発拘縮症候群で通常は下肢および/または上肢の複数関節の対称性罹患を示し、中枢神経機能は正常で筋組織がしばしば脂肪組織と線維組織に置換されること、生児出生1万に1の発生率で先天性拘縮全体の約30%を占めること、知能は正常または正常以上で20年生存率が94%であること、適切な包括的リハビリテーションと手術により5歳時に85%が歩行機能を獲得すること、Sellsらの報告では75%が自力で摂食できるが自力で更衣できるのは約10%、洗面35%、入浴25%にとどまること、四肢すべての対称性罹患が60〜92%、下肢のみの罹患が7〜24%、上肢のみの罹患が1〜13%であること、典型的な四肢罹患例では肩が内転・内旋、肘が伸展拘縮で上腕筋・上腕二頭筋の機能が乏しく肘関節は円柱状で皮線を欠くこと、手関節は掌屈拘縮に尺側偏位と回内を伴うこと、股関節では屈曲・外転・外旋拘縮が多く片側または両側の股関節脱臼が約3分の1にみられること、膝は屈曲拘縮が最多で大腿四頭筋が弱く膝蓋部に皮膚の陥凹を伴うこと、足では重度の内反尖足が最も多くほぼ全例で足部変形がみられ矯正が難しく再発しやすいこと、脊柱の異常弯曲が約28〜67%にみられ多くは椎体奇形を伴わない長い胸腰椎カーブだが進行が速いこと、下顎低形成(小顎症)がしばしばみられること、骨格外の所見として正常知能・前額部の血管腫があり約10%に鼠径ヘルニアまたは腹壁破裂の形の腹壁異常、55〜70%に生殖器系の種々の異常がみられること、遠位関節拘縮症が古典的な散発性の関節拘縮症と異なり常染色体優性遺伝で拘縮が主に手関節・手・足関節・足の遠位部に限局し他関節の拘縮は軽度または欠如すること、Bamshadらによれば2009年までに10型が記載されていること、診断には上肢と下肢について記載された診断基準のうち2つを満たす必要があり、上肢の基準が屈指症または偽屈指症・手指の屈曲皮線の低形成または欠如・手関節の尺側偏位、下肢の基準が内反尖足・先天性扁平足(先天性垂直距骨)・踵足外反・中足内転であること、家族性の多発性先天性拘縮では上記のうち1つを満たせば診断に十分であること、I型が屈指症と内反尖足を特徴とし第9染色体上の遺伝子で規定されること、II型のFreeman-Sheldon症候群(DA2A、口笛様顔貌症候群)が手指・足趾の拘縮に後弯・側弯と特徴的顔貌(狭い口・広い頬・H字型の頤の陥凹・小さく基部の広い鼻・高口蓋・小さい舌)を伴い、DA2B(Sheldon-Hall症候群)がDA1の手足の拘縮とDA2の一部の特徴を併せもち現在おそらく最も多い遠位関節拘縮症とされること、III型がGordon症候群(低身長・口蓋裂)、IV型が重度側弯、V型が眼症状(眼球運動制限・眼瞼下垂・斜視)と胸壁筋の異常による呼吸運動制限と肺高血圧、VI型が感音難聴、VII型が開口障害(trismus)と偽屈指症、VIII型が常染色体優性の多発翼状片症候群、IX型がBeals症候群(先天性拘縮性くも指症)、X型が先天性の足底屈曲拘縮であること、治療が①リハビリテーション②個別化した装具③手術の3本柱であることを、Clinical features(Amyoplasia, classic arthrogryposis/Distal arthrogryposis・Table I)・Treatment(general rules) の各節で確認した。閲覧 2026-09-03