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Disease Atlas · 肝胆膵 · 先天性疾患

Dubin-Johnson症候群

Dubin-Johnson syndrome

別名
慢性特発性黄疸
臓器系
肝胆膵
科目
PathologyBiochemistryPediatrics
トピック
病理学 C/45:黄疸の病態生理/ビリルビン代謝異常/胆石症生化学 10/1:膜輸送体(Na-K ATPase・二次性能動輸送)小児科 09:新生児黄疸
症状
黄疸
検査値
ビリルビン

🧠 全体像は、とは病態のレベルがまったく違う。あちらはビリルビンを抱合できない病態だが、こちらは抱合はできているのに、抱合し終えたビリルビンを毛細胆管へ排泄できない病態である。排泄障害は毛細胆管トランスポーターMRP2(ABCC2)の欠損によって起こり、その結果直接(抱合型)ビリルビン優位を来す。肝が肉眼的に黒く見える「黒色肝」という一目でわかる所見と、尿中コプロI/III比の逆転という特異なが診断の核心であり、予後は良性で治療を要しない。

病態

ABCC2で、その産物であるMRP2は肝細胞のに発現し、をはじめとする有機アニオンを胆汁中へ能動輸送するトランスポーターである。ABCC2の変異により毛細胆管でのMRP2発現が欠損すると、すでにを終えたが胆道系へ排泄できずに蓄積し、血中のが上昇する1

flowchart TD
    A["ABCC2遺伝子の変異(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autosomal recessive'>常染色体劣性</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canalicular membrane'>毛細胆管膜</span>のMRP2発現欠損"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjugated bilirubin'>抱合型ビリルビン</span>・有機アニオンの<br>毛細胆管への能動輸送障害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjugated bilirubin'>抱合型ビリルビン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='in the hepatocyte'>肝細胞内</span>に蓄積"]
    D --> E["血中抱合型(直接)ビリルビンが上昇"]
    D --> F["リソソーム内に暗色色素として蓄積<br>→肝が肉眼的に黒色(黒色肝)"]

UGT1A1による抱合そのものの障害(間接)ビリルビンが優位になるのに対し、抱合を終えたあとの排泄の障害で抱合型(直接)ビリルビンが優位になる。この「抱合前」と「抱合後」の違いが、両者を分ける最も基本的な軸である。

特徴的な所見

黒色肝

肝は肉眼的に黒色を呈し(黒色肝)、ではの肝細胞にな暗色色素の沈着を認める。ではメラニン様の性状を示し、リソソーム内に蓄積している1。この色素沈着はに特徴的な所見で、次述するには見られない12

尿中コプロポルフィリンのI/III比の逆転

⭐ 尿中コプロ総排泄量は正常だが、その内訳が特異的に偏る。正常では尿中コプロのおよそ75%がIII型異性体で占められるのに対し、では80%超がI型異性体となり、正常とは逆転したパターンを示す1。総量が正常であるにもかかわらず異性体比だけが逆転するという点が、他のと一線を画す。

BSP試験の再上昇

静注後、45分の時点での血中濃度は正常域まで低下するが、90分後に(二次ピーク)を認める。これはに取り込まれたBSPの抱合体が毛細胆管へ排泄できず血中へ逆流するためで、排泄障害を直接反映する所見である1

Rotor症候群との鑑別

としばしば並べて出題されるのがである。いずれも良性の遺伝性だが、障害される場所とが異なる。

項目
ABCC2(MRP2) SLCO1B1・SLCO1B3(OATP1B1・OATP1B3)の両遺伝子の両アレル変異
障害される過程 毛細胆管への排泄 側からの肝への取り込み・貯蔵
肝の色調・色素沈着 黒色肝、暗色色素沈着あり 色素沈着なし、肉眼的に正常
尿中コプロ 総量は正常I型異性体が80%超(正常の逆転) 排泄が増加し、コプロ正常の2.5〜5倍に増加(I型異性体の比率は資料に記載なし)
BSP試験 45分正常、90分に二次的なあり 二次的なはない
予後 良性、治療不要 良性、治療不要

⭐ 出題・臨床の両方で押さえるべき鑑別点は3つ——色素沈着の有無のみ黒色肝)、尿中コプロのパターン(総量正常+I型優位か、総量増加か)、BSP試験でのの有無のみ)である2

臨床像・診断・予後

多くは思春期から若年成人期に、健診や他疾患の検査中に偶発的な軽度〜中等度の優位の黄疸として発見される。AST・ALT・ALP・アルブミン・凝固能などほかの肝は正常で、そのものの障害を示す所見はない1

予後は良性で治療不要である。線維化や肝硬変への進行はなく、生命予後は一般人口と変わらない1。診断がついたら、それ以上の精査や治療介入を行わず経過観察でよい。

まとめ

  • はABCC2の変異によるMRP2欠損で、抱合済みビリルビンの毛細胆管への排泄が障害される抱合後の病態であり、直接(抱合型)ビリルビン優位のを来す。
  • UGT1A1による抱合そのものが障害される優位)とは病態のレベルが異なる。
  • 肝は肉眼的に黒色(黒色肝)を呈し、で暗色色素を認める。尿中コプロは総量正常でI型異性体が80%超という特異的パターンを示す。
  • とは、色素沈着の有無、尿中コプロのパターン、BSP試験でのの有無、で鑑別する。
  • 予後は良性で、治療は不要。

出典

  1. 1.Dubin-Johnson Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)ABCC2遺伝子変異による毛細胆管トランスポーターMRP2の欠損とそれによる抱合型ビリルビンの胆道排泄障害という機序、肝が肉眼的に黒色を呈すること、肝生検で中心静脈周囲肝細胞に粗大な暗色顆粒状色素が沈着すること、尿中コプロポルフィリンの総量は正常だが80%超がI型異性体であること(正常はおよそ25%)、BSP試験で45分の値は正常だが90分に二相性の再上昇(二次ピーク)を認め排泄障害を示すこと、この暗色色素沈着はRotor症候群では見られないこと、多くは思春期・若年成人期に偶発的に発見される無症候性の疾患であること、予後は良性で線維化・肝硬変への進行はなく生命予後は正常であることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Rotor Syndrome(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)Dubin-Johnson症候群とRotor症候群の比較(GeneReviewsのTable 4)で、Rotor症候群ではDubin-Johnson症候群に特徴的な肝細胞内の黒色様色素が認められないこと、Rotor症候群がSLCO1B1とSLCO1B3(それぞれOATP1B1・OATP1B3をコード)の両遺伝子の両アレル機能喪失型変異によって生じる点でABCC2変異によるDubin-Johnson症候群と原因遺伝子が異なること、Rotor症候群では尿中総ポルフィリン排泄が増加しコプロポルフィリンが正常の2.5〜5倍に増加する一方、Dubin-Johnson症候群では総排泄量自体は正常でコプロポルフィリンI異性体の比率のみが変化すること、BSP試験の二次的な血中再上昇はDubin-Johnson症候群に特徴的でRotor症候群では見られないことを確認した。閲覧 2026-08-11