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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

孤立性形質細胞腫

Solitary plasmacytoma

臓器系
血液腫瘍
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/12:多発性骨髄腫/形質細胞疾患内科学 L-61:多発性骨髄腫
続発疾患
多発性骨髄腫
症状
骨痛
検査値
M蛋白
画像所見
溶骨性病変

🧠 全体像は、と組織学的には同じの腫瘍でありながら、単一のまたは軟部病変にとどまり、骨髄腫の(CRAB/SLiM)をいずれも満たさないという一点だけで区別される疾患である。「の一歩手前」ではなく「今この瞬間は限局している腫瘍」と捉えるのが正確で、この限局性ゆえに放射線治療だけで根治しうる数少ない形質細胞腫瘍という位置づけになる。ただし限局しているように見えても数年単位でへ進展する例が多く、の方がより進展率が高いという非対称性が臨床上の要になる。

病態・分類

は、生検で証明されたの単一病変で、全形質細胞腫瘍のうちおよそ5%を占めるまれな腫瘍である1。病変の局在で2つの型に分かれる。

局在 頻度 特徴
骨(脊椎・骨盤に多い) EMPよりおよそ2〜5倍多い1 として描出される
軟部組織(上気道に多い) SBPより少ない 局所手術・放射線治療への反応が良好で予後がより良い

生存もSBPよりEMPの方が長い(EMP 117.3か月 対 SBP 89か月)1。この差は後述するへの進展率の違いと表裏一体である。

臨床像

SBPは病変部の局所的な、あるいは軽微な外力でのを契機に発見されることが多い。好発部位である脊椎の病変では、腫瘍が内へ進展し脊髄・神経根を圧迫することで下肢筋力低下・感覚障害・膀胱直腸障害を来すことがあり、緊急のや放射線治療の適応になりうる。EMPは上気道(鼻腔・副鼻腔・咽頭)に好発するため、鼻閉・・嗄声・咽頭違和感など局所の圧迫・浸潤症状で発見されることが多い。

⚠️ いずれの型でも、に特徴的な高Ca血症・腎障害・貧血といった全身症状を欠くことが、であることの臨床的な裏づけになる。全身症状を認めた場合は診断を見直し、への進展を疑う。

診断基準

の診断は「何を満たすか」ではなく「何を満たさないか」で定義される——生検で腫を確認したうえで、であるCRAB(高Ca血症・腎障害・貧血・)およびSLiM(骨髄60%以上・100以上・MRI局所病変2個以上)をいずれも満たさないことが条件になる2

⚠️ 単一病変に見えても、全身画像で他病変を探さなければ診断が確定しない。 に加え、MRIまたはPET/CTのいずれか一方は必須の検査であり、これによって「単発に見えるだけの」を除外する3。全身・全身MRI・PET/CTのいずれかによる病期評価を経ずにと診断してはならない。

flowchart TD
    A["単一の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone lesions'>骨病変</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='soft-tissue mass'>軟部腫瘤</span>"] --> B["生検で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonal plasma cells'>クローン性形質細胞</span>腫を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow biopsy'>骨髄生検</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonal plasma cells'>クローン性形質細胞</span>比率を確認"]
    C --> D["全身画像(MRIまたはPET/CT)で他病変を検索"]
    D --> E{"他に病変があるか<br>またはCRAB/SLiMを満たすか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple myeloma, MM'>多発性骨髄腫</span>として管理"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Solitary Plasmacytoma'>孤立性形質細胞腫</span>と確定診断"]
    G --> H["局所放射線治療(40〜50 Gy)"]
    H --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SBP'>骨型</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extramedullary'>髄外</span>型(EMP)か"}
    I -->|"SBP"| J["10年で約50%が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple myeloma, MM'>多発性骨髄腫</span>へ進展"]
    I -->|"EMP"| K["10年で約30%が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple myeloma, MM'>多発性骨髄腫</span>へ進展(SBPより低い)"]

治療

放射線治療が根治を狙える標準治療で、病変辺縁に2 cm以上のを加えた40〜50 Gyのを行う。局所は80〜90%を超え、SBP・EMPいずれでも高い局所制御が得られる3。外科的切除が可能なEMPでは手術と放射線治療を組み合わせることもある。は原則として適応がなく、の段階ではに準じた薬物療法を行わない。

予後:多発性骨髄腫への進展

の最大の臨床的関心事は、放射線治療で局所を制御した後のへの進展である。

は10年で約50%がへ進展するのに対し、の進展率は約30%にとどまる——骨型の方が型より進展率が明確に高い3。骨髄と病変が同じ骨格系にあるSBPでは、診断時点で画像に映らない微小ながすでに存在している可能性が高いことが、この差の一因と考えられている。

進展のリスクが高い患者では、治療後も定期的な血清・尿M蛋白の測定と画像評価によるを継続し、へ進展した時点で骨髄腫に準じた全身治療へ切り替える。

まとめ

  • は、(CRAB/SLiM)をいずれも満たさない、の単一病変である。
  • のSBPと軟部病変のEMPに分かれ、SBPの方が頻度・進展率ともに高くEMPより予後が悪い。
  • 診断確定には全身画像(MRIまたはPET/CT)による他病変の除外が必須で、これを省略すると「見かけ上単発」のを見逃す。
  • 治療は40〜50 Gyの局所放射線治療で、局所は80〜90%を超え根治的たりうる。
  • 局所制御後もSBPで10年約50%、EMPで10年約30%がへ進展するため、長期の経過観察を要する。

出典

  1. 1.Diagnosis, treatment, and response assessment in solitary plasmacytoma: updated recommendations from a European Expert Panel(European Expert Panel / Journal of Hematology & Oncology・2018)孤立性形質細胞腫の診断には骨髄クローン性形質細胞比率10%未満に加え、骨髄検査以外の画像(MRIまたはPET/CT、いずれか一方は必須)で他の病変が無いことの確認が必要であること、放射線治療は40〜50 Gyの分割照射に病変辺縁2 cmのマージンを加えて行い局所奏効率は80〜90%を超えること、骨孤立性形質細胞腫(SBP)の約50%が10年以内に多発性骨髄腫へ進行するのに対し髄外性形質細胞腫(EMP)の進行率は約30%にとどまること閲覧 2026-08-11
  2. 2.International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma(International Myeloma Working Group / The Lancet Oncology・2014)症候性多発性骨髄腫の診断にはCRAB(高Ca血症・腎障害・貧血・骨病変)またはSLiM(骨髄クローン性形質細胞60%以上・血清遊離軽鎖比100以上・MRI局所病変2個以上)バイオマーカーのいずれかを要すること。孤立性形質細胞腫はこれらをいずれも満たさない限局病変として位置づけられること閲覧 2026-08-11
  3. 3.Solitary Plasmacytomas: Current Status in 2025(Hematology Reports・2025)孤立性形質細胞腫は全形質細胞腫瘍のおよそ5%を占めるまれな腫瘍であること、骨孤立性形質細胞腫(SBP)は髄外性形質細胞腫(EMP)よりおよそ2〜5倍多いこと、EMPの方がSBPより生存期間中央値が長いこと(EMP 117.3か月 対 SBP 89か月)閲覧 2026-08-11