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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤

テプリズマブ

teplizumab

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(EU)
Teizeild
科目
PharmacologyTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)1-8: Pathogenesis of Type 1 diabetes mellitus
承認適応
1型糖尿病
副作用
発熱輸注関連反応
監視検査値
血算
影響検査値
リンパ球減少

🧠 全体像:は、1型糖尿病の病期そのものを標的にした初めてのである。他の免疫療法薬が「発症した炎症・自己免疫を鎮める」のに対し、が狙うのはStage 2(2種以上陽性+はあるが、まだ発症していない)という、症状が出る前の段階——ここで14日間だけし、Stage 3()への進行を平均で約2年遅らせる(米国ではさらに、診断されて間もない Stage 3 の8〜17歳での低下を遅らせる適応がで加わった)。抗CD3抗体でありながらT細胞を枯渇させるのではなく、部分的な刺激でを・状態へ導き、を相対的に優位にするという間接的な機序を持つ。⚠️ 根治でも予防でもない——進行を遅らせるだけの薬だという理解が、この薬を語るうえで最も外してはいけない一線になる。

薬効群の中での位置づけ

B30のは「何を標的に、どう作用を持続させるか」で戦略が分かれる。はT細胞をさせてへ導くという、この中でも独特な部類に入る。

薬剤 標的 作用の方向 投与パターン 主な適応
CD3(TCR複合体) 刺激でを化、Tregを相対的に優位に Stage2では14日間の連日、1コースで完結 Stage2の1型糖尿病でStage3への進行を遅らせる(米国は診断間もないStage3の8〜17歳にも)
リツキシマブ CD20(B細胞) B細胞を枯渇させる 各種自己免疫疾患・B細胞性リンパ腫
IL-6 サイトカインを中和 3週ごと反復

⭐ 「細胞を枯渇させる」「サイトカインを中和する」という他のの戦略に対し、は免疫系そのものを“再教育”して寛容状態へ導く。 だからこそ投与は反復せず14日間の1コースで完結し、効果は投与終了後も持続する——これは一時的な免疫抑制ではなく、の応答性そのものを変化させる薬だからである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='teplizumab'>テプリズマブ</span>がT細胞表面のCD3(TCR複合体)に結合"] --> B["抗原刺激によるフルの活性化とは異なる<br>弱い・部分的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agonist'>アゴニスト</span>シグナルを伝達"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='islet'>膵島</span>抗原に反応する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoreactive T cell'>自己反応性T細胞</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exhaustion'>疲弊</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anergy'>アネルギー</span>状態へ向かう"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regulatory T cell (Treg)'>制御性T細胞</span>(Treg)が相対的に優位になる"]
    C --> E["β細胞を攻撃する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>の活動が抑制"]
    D --> E
    E --> F["β細胞破壊の進行が遅くなる"]
    F --> G["Stage3(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overt diabetes'>顕性糖尿病</span>)への進行が平均約2年遅れる"]

💡 「T細胞を殺す」のではなく「T細胞の応答性を変える」という点が試験の急所。 はを完全には除去せず、シグナルによって表現型へ誘導し、を相対的に優位にすることで自己免疫の勢いを弱めると考えられている1。TN-10試験では、この機序的な仮説と整合する形で、Stage3糖尿病と診断されるまでの期間の中央値が群48.4か月・プラセボ群24.4か月となり、進行が約2年遅れることが示された(0.41)2。

薬物動態

項目 値・特徴
剤形 (モノクローナル抗体)
投与パターン Stage2では14日間連日投与で1コースが完結する(慢性ではない)。米国のStage3の適応では12日間の連日投与を6か月あけて2コース行う1
を軽減するため、1日目から段階的に増量してからに到達する1

適応

領域 使いどころ
内分泌・免疫 1型糖尿病のStage2(2種以上陽性+、無症候)で、Stage3()への進行を遅らせる(米国は1歳以上、は8歳以上)13
内分泌・免疫(米国のみ) 診断されて間もない(診断から8週以内の)Stage3の8〜17歳で、の低下を遅らせる。Cペプチド低下の抑制に基づくで、継続承認は検証試験での臨床的有益性の確認を条件としうる1

⭐ 適応年齢は段階的に拡大してきた。 2022年の米国初承認時は8歳以上が対象だったが、2026年に1歳以上へ拡大された1。⚠️ 承認の範囲は国で違う——(Teizeild、2026年1月8日承認)の効能は Stage 2 の8歳以上で Stage 3 の発症を遅らせることだけで、Stage 3 の適応は無い3。Stage2はそれ自体が無症候であるため、投与対象を見つけるにはスクリーニングが前提になる——Stage2の定義とStage3への進行リスク(2年で約60%、5年で約75%)は1型糖尿病のそのものに基づく4。

用法・用量

Stage 2 では14日間の連日で1コースを完結させる。用量は初日から段階的に増量し、1日目65 mcg/m²・2日目125 mcg/m²・3日目250 mcg/m²・4日目500 mcg/m²と漸増したのち、5〜14日目は1,030 mcg/m²のを投与する1。米国の Stage 3 の適応では、診断から8週以内に始め、12日間の連日を6か月あけて2コース行う(用量表は Stage 2 と別)1。を軽減するため、投与前に・抗ヒスタミン薬・によるを行う1。

禁忌・注意

  • ⚠️ :(米国、2026年6月改訂で追加):・の重篤で生命を脅かす再活性化が報告されている。免疫不全の患者でリスクが高く、の大きい成人や副腎不全・心血管疾患などの併存症をもつ成人でも重篤例がある。重篤例の大半は、重度のが持続するのに投与を続けた患者で起きた1
  • ⚠️ 禁忌(米国):免疫不全の患者、活動性のウイルス感染(・感染など)のある患者1
  • ⚠️ (CRS):約5〜9%に、主に投与開始5日以内に発熱・悪心・倦怠感・として発現する。(・抗ヒスタミン薬・)が必須1
  • ⚠️ :51〜78%に発現する。500/µL未満が1週間以上持続する重度の遷延性は0.9〜1.4%に生じ、その場合は投与を中止する。投与前に血算を確認し、投与中もの推移を追う1
  • ⚠️ ・の再活性化への備え:投与前に活動性の・感染を検査し(など)、の監視と中止基準を守る。最終投与後も少なくとも2か月は再活性化の徴候を監視し、疑えば投与を中止する。年齢相応のワクチン接種は投与開始前に完了させておく1
  • ⚠️ 根治薬でも予防薬でもない。 Stage3への進行を遅らせるだけであり、平均的な遅延は約2年にとどまる。Stage3()を発症した患者のを代わりに担う薬ではない(米国の Stage 3 の適応も、の低下を遅らせることが目的である)21

副作用

頻度 内容
高頻度 発熱、悪心、倦怠感、頭痛、
注意 、
重篤・まれ 、重度遷延性、・の重篤な再活性化(米国の)

まとめ

  • は抗CD3モノクローナル抗体で、1型糖尿病のStage2(自己抗体陽性+、無症候)でStage3への進行を遅らせる初めての。
  • 機序はT細胞の枯渇ではなく、シグナルによるの化とTregの相対的優位化。
  • Stage 2 への投与は14日間の連日で1コース完結。TN-10試験ではStage3診断までの期間の中央値を約2年(48.4か月 vs 24.4か月)遅らせた。
  • ⚠️ (約5〜9%)・(51〜78%)・/の重篤な再活性化が主要な安全性上の懸念。米国では2026年6月にがとなり、免疫不全・活動性ウイルス感染が禁忌になった。・投与前スクリーニング・最終投与後少なくとも2か月のモニタリングが必須。
  • ⚠️ 根治でも予防でもなく、進行を遅らせる薬という限界を正確に理解する。
  • 米国の適応年齢は2022年の8歳以上から2026年に1歳以上へ拡大され、診断間もない Stage 3 の8〜17歳の適応()も加わった。(2026年1月承認)は Stage 2 の8歳以上のみ。

出典

  1. 1.TZIELD (teplizumab-mzwv) injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Sanofi・2026)DailyMedの処方情報(DailyMed表示の改訂 6/2026)で、抗CD3モノクローナル抗体テプリズマブがStage2(1歳以上の小児・成人)の1型糖尿病でStage3(顕性糖尿病)の発症を遅らせる適応を持つこと(2022年に8歳以上で初承認、2026年に1歳以上へ適応拡大)、あわせて診断されて間もない(診断から8週以内の)Stage3の8〜17歳の小児で内因性インスリン分泌の低下を遅らせる適応がCペプチド低下の抑制に基づく迅速承認として加わったこと(継続承認は検証試験での臨床的有益性の確認を条件としうる)、Stage2では14日間の連日点滴(1日目65 mcg/m²から漸増し5〜14日目は1,030 mcg/m²)で1コースが完結し、Stage3では12日間の連日点滴を6か月あけて2コース行うこと、サイトカイン放出症候群が約5〜9%に主に投与開始5日以内に発現し発熱・悪心・倦怠感・肝酵素上昇を呈するためNSAIDs・抗ヒスタミン薬・制吐薬による前投薬が必要なこと、リンパ球減少が51〜78%に発現し500/µL未満が1週間以上持続する重度の遷延性リンパ球減少が0.9〜1.4%に生じた場合は投与を中止すること、2026年6月の改訂で枠組み警告(ウイルス再活性化)が加わり、EBV・CMVの重篤で生命を脅かす再活性化が報告されていること(免疫不全の患者でリスクが高く、体表面積の大きい成人や副腎不全・心血管疾患などの併存症をもつ成人でも重篤例が報告され、重篤例の大半は重度のリンパ球減少が持続するのに投与を続けた患者で起きた)、免疫不全または活動性のウイルス感染(EBV・CMV感染など)のある患者が禁忌であること、投与前に活動性のEBV・CMV感染を検査し(PCRなど)、最終投与後も少なくとも2か月は再活性化の徴候を監視し、疑えば投与を中止すること、年齢相応のワクチン接種を投与前に済ませることを確認した。閲覧 2026-09-24
  2. 2.An Anti-CD3 Antibody, Teplizumab, in Relatives at Risk for Type 1 Diabetes(New England Journal of Medicine・2019)TN-10試験(Stage2の1型糖尿病親族76例を対象としたプラセボ対照RCT)で、テプリズマブ群はStage3糖尿病発症のハザード比0.41、Stage3糖尿病と診断されるまでの期間の中央値がテプリズマブ群48.4か月に対しプラセボ群24.4か月であり、進行を約2年遅らせたことを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Teizeild (teplizumab): EPAR – Medicine overview(European Medicines Agency・2026)EMAのEPARページで、Teizeildの効能が「Stage2の1型糖尿病をもつ8歳以上の成人・小児でStage3の発症を遅らせること」であること、販売承認が2026年1月8日に発行され(CHMP意見の採択は2025年11月13日)、販売承認取得者がSanofi Winthrop Industrieであることを確認した。閲覧 2026-09-24
  4. 4.2. Diagnosis and Classification of Diabetes: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)1型糖尿病の現行の病期分類でStage2が膵島自己抗体2種以上陽性かつ耐糖能異常(無症候)と定義され、Stage2からStage3(顕性糖尿病)への進行リスクが2年で約60%・5年で約75%と高いことを確認した。閲覧 2026-08-19