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Imaging findings · Published

シルエット徴候

Silhouette sign

別名
シルエットサイン
臓器系
呼吸器
科目
Medical Imaging
トピック
画像診断学 02:X線撮影の基礎画像診断学 10:胸部X線写真の読影

🧠 全体像:は、隣り合う構造の境界が消える所見である。胸部X線でこれが教えるのは「何が白いか」ではなく「病変がどこにあるか」——病変が・大動脈縁・と同じ濃度になって重なれば、その縁が消える。逆に、白い陰影があっても縁が保たれていれば、その構造とは前後に離れている。局在の手がかりとして使うのが本質で、病名を決める所見ではない。⚠️ 縁が消えたことは肺炎を意味せず、・胸水・腫瘤・胸郭の変形でも起こる。

所見の定義

とは、正常な輪郭や境界面が見えなくなることをいう。が同程度の構造が並んで、本来の解剖学的な境界が消えるために起こる1。

💡 縁が見えるのは、隣が濃度の違う構造だからである。 心臓・大動脈・横隔膜の縁は、「軟部組織の濃度」と「肺の空気」の差として見える。正常な縁が消えたなら、隣の肺が空気でなくなり、軟部組織と同じ濃度に変わったことを意味する。これがFelsonの示したシルエットの原理である2。

1977年の検討は、この徴候の機序が解剖学的な接触ではなく、X線のの原理とその知覚にあることを示した。そのうえで、前方の肺病変と後方・下方の肺病変を区別する信頼できる徴候だとしている3。

消える縁から病変の位置を読む

胸部正面像では、とは肺の特定の部分と接している。どの縁が消えたかで、病変のあるを推定できる2。

消える縁 病変の位置 縁が保たれるとき
右下葉やなど、心臓の縁から離れた位置
左の の後方など、心臓の前縁から離れた位置
右下葉 ・中葉など、横隔膜の縁から離れた位置
など、横隔膜の縁から離れた位置
()の輪郭 左(輪郭がかすむ) 大動脈と接しない位置

⭐ 縁が保たれることも情報である。 の後方の肺炎では、前方にあるは消えずに鮮明に見える4。「陰影はあるのにが見える」とき、病変はに接する前方の肺ではなく、後方にあることが多い。

の陰影は縁ではなく肺裂で位置を決める。右肺では()の上で境される浸潤は、の下で境されるものはである2。

⭐ 側面像で確かめる。やの陰影は、側面像でに重なって見える4。正面像だけで縁の消失を決めつけない。

縁を消す病変

病変 縁を消す理由 一緒に探す所見
(肺炎・肺水腫・出血・誤嚥) が液体や細胞で満たされ、軟部組織と同じ濃度になる 、で直線的に区切られる境界()4
虚脱してが減り、濃度が上がる 肺裂・縦隔・横隔膜の偏位などの所見
胸水 横隔膜の上に液体がたまり、横隔膜の縁を覆う の上縁、
縦隔やにある腫瘤() 縦隔の縁やに接する軟部組織の濃度が重なる 縦隔の拡大、気管の偏位
胸郭の変形(など) 解剖学的な変異で、肺に病変がなくてもが不鮮明になる1 側面像で胸郭の形を確認する

⚠️ 肺炎の患者でを探すのは、感染症の診断のためではなく病変の局在のためである。病因は臨床像・喀痰・血液検査・経過で決まる。

評価の進め方

flowchart TD
    A["正面像で縁の不鮮明化・消失を指摘"] --> B["どの縁か(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right cardiac border'>右心縁</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left cardiac border'>左心縁</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diaphragmatic contour'>横隔膜縁</span>・大動脈縁)"]
    B --> C["縁と接する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobe'>肺葉</span>・区域に病変を推定"]
    C --> D["側面像で位置を確認<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac silhouette'>心陰影</span>に重なるか・肺裂との関係"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='volume loss'>容積減少</span>や<br>胸水の所見があるか"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interlobar fissure'>葉間裂</span>が引かれる・縦隔が偏位"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atelectasis'>無気肺</span>を考える"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blunting of the costophrenic angle'>肋骨横隔膜角の鈍化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meniscus'>メニスカス</span>"| G["胸水を考える"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air bronchogram'>気管支透亮像</span>・容積保たれる"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='consolidation'>コンソリデーション</span>を考える"]
    E -->|"孤立した腫瘤状の陰影"| I["腫瘤を考え、CTで確認"]
    F --> J["過去画像と比較し<br>臨床像で原因を決める"]
    G --> J
    H --> J
    I --> J

⭐ 過去画像との比較を欠かさない。縁が以前から見えなかったのか、今回新たに消えたのかで、急性の病変かの変化かが分かれる。

紛らわしいもの

状況 見分けるポイント
などの が不鮮明になっても、肺の病変とは限らない。側面像の胸郭の形で確かめる1
(回旋・AP臥位・吸気不十分) やの見え方が変わる。撮影の質を先に評価する()
そのものの拡大 の位置が外へ動くのであって、縁が消えるのではない。と混同しない()
縁が保たれた陰影 病変の不在ではなく、病変が縁から離れていることを示す。後方の下葉病変を見逃さない

まとめ

  • は、濃度が同じ構造が重なって正常な縁が消える所見で、病変の局在を教える。病因は決めない。
  • は、は、は同側の下葉、の輪郭は左の病変に対応する。縁が保たれた陰影は、縁から離れた位置にある。
  • 側面像で、陰影がに重なるかを確かめる。・の病変の確認に有用である。
  • 縁を消す原因は、・・胸水・腫瘤・胸郭の変形と広い。、肺裂の偏位、、を合わせて読む。

出典

  1. 1.Fleischner Society: Glossary of Terms for Thoracic Imaging(Radiology・2024)PMCの全文(PMC10902601)で「Silhouette Sign」の項(Fig 157)を確認した。シルエット徴候は正常な輪郭・境界面の消失を指し、X線減弱が同程度の構造が並置されて正常の解剖学的な境界が見えなくなることで生じること、必ずしも肺疾患を示さず、漏斗胸などの解剖学的変異でも心縁が不鮮明になりうること、図は中葉のコンソリデーションによる右心縁の消失であることを確認した。閲覧 2026-10-26
  2. 2.The chest radiograph(Ulster Medical Journal・2012)Europe PMCの全文(PMC3632825)で確認した。Felsonのシルエットの原理として、X線で区別できる濃度が骨・空気・軟部組織の3つだけで、心陰影などが見えるのは異なる濃度に接しているからであり、正常な境界が消えれば隣接する領域が同じ濃度に変わったことを意味すること、消える境界と病変の肺葉の対応(左横隔膜=左下葉、右横隔膜=右下葉、右心縁=右中葉、左心縁=舌区)、上葉の浸潤は右では水平裂(小葉間裂)の上に境され、右中葉は水平裂の下に境されること、左上葉のコンソリデーションでは大動脈弓(大動脈球)の輪郭がかすむことを確認した。閲覧 2026-10-26
  3. 3.Criteria of the silhouette sign(Radiology・1977)Europe PMCの抄録(PMID 841093)で確認した(全文は取得できていない)。シルエット徴候が前方の肺病変と後方・下方の肺病変を区別する信頼できる徴候であり、その機序が胸部内の構造の解剖学的な接触ではなく、X線コントラストを決める原理とそのコントラストの知覚にあることを確認した。閲覧 2026-10-26
  4. 4.Pneumonia (What Radiology Residents Need to Know: Chest Radiology)(Springer・2019)PMCの全文(PMC7122935、Open Access Subset)で確認した。大葉性肺炎では、コンソリデーションが心臓・大動脈・横隔膜に接するときにシルエット徴候がみられ気管支透亮像を伴うこと、左下葉の後方の肺炎では前方にある左心縁が保たれて鮮明に見えること、右中葉・舌区の肺炎では右心縁・左心縁が消え、側面像で陰影が心陰影に重なって見えることで部位が確認できることを確認した。閲覧 2026-10-26