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Lab values · Published

バルーン排出試験

Balloon expulsion test

別名
BETバルーン排泄試験
臓器系
消化器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-57:便秘の鑑別診断内科学 G-04:大腸疾患と機能性消化管疾患
関連疾患
直腸瘤

🧠 全体像は、直腸に入れたバルーンを座位で実際に排出できるかどうかだけを見る、単純だが唯一無二のである。が圧の「パターン」を測るのに対し、こちらは排便という「結果」そのものを測る。⚠️ 時間が施設・プロトコルで統一されていないうえ、排出できないというだけではを区別できない——それでも、への反応を予測することが示されている唯一の検査という代えがたい役割を持つ。

何を見ているか

時のなど圧のパターンを測るのに対し、は直腸に留置したバルーンを実際に排出できるかどうか排出にかかった時間という結果だけを測る。センサーの数値ではなく、患者が座位で実際に「出せたか」を見る点で内圧検査を補完する。

手技

直腸内にカテーテルを留置し、先端のバルーンに50 mLの温水を注入して膨らませる12。膨らませたのち座位でトイレ様の環境(可能であればプライバシーの確保されたトイレそのもの)へ移し、排出させる1

判定は排出までの時間で行う。慣習的には1分以内を正常とするが、より短い(26秒など)を支持する研究や、を用いる場合に2分を上限とする例もある2。⚠️ 時間は機器・バルーンの種類・施設のプロトコルによって異なり、統一されていない21

正常所見と代表的な異常パターン

所見 意味
時間内に排出できる 正常
時間内に排出できない 便秘のうち出を示唆する所見。ただし単独ではなど)を区別できない2
排出できても訴えが強い を否定しきれない。検査環境の非生理的な影響も考慮する

と異なり、構造的な異常を同定できない2。排出不良を確認したら、原因を切り分けるためにを追加する。

臨床的な位置づけ

単独では、の診断におけるが約49%と低く、偽陽性が多い3。⭐ はこれを踏まえ、慢性便秘の症状に加えて2つ以上の一致する肛門直腸所見(内圧検査・)をの診断条件としており3は内圧検査と組み合わせて初めて評価が完結する。

には次の2つの強みがある。

  • への反応を予測することが示されている唯一の検査である12
  • が高く(97%)2、簡便で費用対効果に優れるため外来でのスクリーニングとして使える3

⚠️ 測定上の注意

  • 時間が施設・プロトコルで統一されていない。 1分・2分など複数の基準が使われており、報告書を読むときは使用したを確認する2
  • 体位の影響:内圧検査はで行うのが標準だが、この姿勢は排便時の生理的な姿勢ではない。座位のほうがはより生理的な値を示す。
  • 直腸に便が残っていると結果が変わる。 検査前に直腸を空にしておく必要がある。
  • 検査環境の心理的影響:ベッド上・検査室という非な環境そのものが、正常な排便を妨げうる。プライバシーの確保が結果を左右する。
  • 年齢・分娩歴による影響:高齢者や分娩後の女性では骨盤底の状態次第で結果が変わりうるため、正常値の解釈に注意する。
  • 排出できても異常を否定できない。 は64%にとどまり2、単独で「排出障害」と確定せず、・内圧検査と組み合わせて判断する。

経時変化とモニタリング

適応判定(排出不良を確認してから導入する)と、効果判定(治療後に排出時間が短縮したかを再検する)の両方に使う。内圧検査の圧の数値だけを追うより、実際に排出できるようになったかを確認するほうが治療の手応えを反映しやすい。

まとめ

  • は、直腸内バルーンを座位で実際に排出できるかを見る、簡便なである。
  • 50 mLの温水でバルーンを膨らませ、トイレ様の環境で排出させ、排出までの時間で判定する。は1分を基本とするが施設・プロトコルで統一されていない。
  • 排出不良はを示唆するが、などのでも起こりうるため単独では確定できない。
  • 単独は特異度が低く偽陽性が多いため、は2つ以上のの一致を求める。
  • への反応を予測することが示されている唯一の検査であり、の高さから外来スクリーニングにも使える。
  • 体位・検査環境・直腸内の便・年齢によって結果が変わるため、単独の異常値で診断を確定しない。

出典

  1. 1.The International Anorectal Physiology Working Group (IAPWG) Recommendations: Standardized Testing Protocol and the London Classification for Disorders of Anorectal Function(International Anorectal Physiology Working Group / Neurogastroenterology & Motility・2020)バルーン排出試験の節で、50mLの微温水でバルーンを拡張したのち被験者を座位(理想的にはプライバシーの確保されたトイレ様の環境)へ移して排出させる手技を推奨していること、機器・プロトコル・実地の差により排出時間の具体的な正常値を勧告することはグループの権限を超えると明記していること、限界の節でバルーン排出試験がバイオフィードバック療法への反応を予測することが示されている唯一の検査とされることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Anorectal Manometry to Diagnose Dyssynergic Defecation: Systematic Review and Meta-analysis of Diagnostic Test Accuracy(Neurogastroenterology & Motility・2021)Introductionで、Rome IV基準は慢性便秘症状に加え少なくとも2つの一致する肛門直腸機能検査所見(内圧検査・バルーン排出試験・排便造影・筋電図)を排便協調運動障害の診断条件としていること、Discussionでバルーン排出試験は一般消化器内科医にとって費用対効果に優れた外来即時実施可能な検査となりうるとされること、Resultsで実臨床データに基づく内圧検査単独の協調運動障害診断が統合感度86%(95%CI 64-95%)・統合特異度49%(95%CI 30-68%)と特異度に劣り偽陽性が多いことを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Review of the indications, methods, and clinical utility of anorectal manometry and the rectal balloon expulsion test(Neurogastroenterology & Motility・2022)Rectal Balloon Expulsion Testの節で、座位で50mLの温水を注入したバルーンを排出するまでの時間を測定する手技であること、慣習上の正常上限は1分だがより短いカットオフ(26秒など)を支持する研究もあり、Foleyカテーテルを用いる場合は正常上限を2分とする例もあるなど施設・バルーンの種類でカットオフが統一されていないこと、陽性的中率64%・陰性的中率97%と報告されていること、異常なバルーン排出試験がバイオフィードバック療法への反応を予測することを確認した。また排便造影と異なりバルーン排出試験は構造的異常を同定できず、排出不良だけでは排便協調運動障害と器質的な出口閉塞を区別できないことも確認した閲覧 2026-08-04