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Lab values · Published

肛門直腸内圧検査

Anorectal manometry

別名
直腸肛門内圧検査肛門内圧検査
臓器系
消化器
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 L-57:便秘の鑑別診断小児科 3-36:Hirschsprung病小児科 15:便秘症(完全排便停止)、Hirschsprung病

🧠 全体像は、便を溜めて我慢し、狙ったときに出すという排便の「仕組み」を圧センサーで直接測る検査である。(RAIR)・直腸感覚・時の協調運動という測る対象は明確だが、⚠️ 検査室のベッド上で人為的にさせるという状況そのものが、通常の排便を再現できず偽陽性のを作りやすい。 単独の異常値だけで「排便障害」と確定せず、など別の検査と組み合わせて判断する。

どう測るか

から直腸にかけて、複数の圧センサーを備えたカテーテル(現在はセンサーを密に配置した高型が主流)を留置し、先端付近のバルーンで直腸を拡張できるようにする。で行い、次の相を順に記録する1

  • 安静:何もしていない状態での内圧
  • :意識的に肛門を締める(短時間の収縮を複数回、持続的な収縮も加える)
  • :排便するつもりでいきむ
  • :腹腔内・骨盤内圧の急激な変化に対する圧の反射的な上昇を見る1

続けて、急速拡張でRAIRを、漸増拡張で直腸感覚を評価する。

測る指標

  • :主に(平滑筋・不随意)の緊張を反映する
  • とその:主に(横紋筋・随意)の機能を反映する
  • :腹圧上昇に対する肛門圧の反射的な上昇
  • 時ので直腸圧が上がり肛門圧が下がるのが正常。肛門が弛緩しない、または逆に収縮するパターンを見る
  • :直腸をバルーンで急速拡張したときにが反射的に弛緩する反応
  • 直腸:初回感覚・便意・最大量の3段階で、漸増拡張への感覚を評価する
  • :直腸の。詳細な評価にはを要し、通常のプロトコルの範囲外である

正常所見と代表的な異常パターン

パターン 内圧検査の所見 示唆する病態
正常 で直腸圧上昇+肛門の弛緩、は十分、RAIR陽性 正常な排便機構
時に肛門が弛緩しない、または逆に収縮する。あるいは直腸圧の上昇が乏しい(力低下) 便秘のうち出、骨盤底の
の低下()、の低下(
RAIR消失 直腸拡張に対するの反射的弛緩が誘発できない を疑う所見。修正在胎26週を超える早産児では81%が正常なRAIRを示すと報告されており、早産児だからという理由でRAIR消失を反射の未成熟で片付けない2
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anorectal manometry'>肛門直腸内圧検査</span>で異常所見"] --> B{"どの所見か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining (at defecation)'>怒責</span>時に肛門が弛緩しない<br>直腸圧上昇が乏しい"| C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balloon expulsion test'>バルーン排出試験</span>は"}
    C -->|"排出良好"| D["検査環境による偽陽性を疑う<br>単独の内圧所見で診断しない"]
    C -->|"排出不良"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defecatory disorder'>便排出障害</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incoordination'>協調運動障害</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofeedback'>バイオフィードバック</span>の適応を検討"]
    B -->|"RAIRが誘発できない"| F{"修正在胎26週以下の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='extremely preterm'>超早産</span>児か"}
    F -->|"はい"| G["反射の未成熟も考慮し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal suction biopsy'>直腸吸引生検</span>などで確認"]
    F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hirschsprung disease'>Hirschsprung病</span>を疑う<br>(早産児でも未成熟で片付けない)"]

⚠️ 内圧検査だけで排出障害を判定できない。 (座位で人工便を排出できるか見る検査)を組み合わせて初めて評価が完結する3。必要に応じても追加する。

分類体系(London分類)

所見を統一的に記述するため、を提案している。所見を(a) RAIRの異常、(b) 肛門緊張・収縮力の異常、(c) 直腸肛門協調運動の異常、(d) 直腸知覚の異常の4領域に分け、それぞれをmajor(健常者には見られず症状との生理学的関連が想定される所見)・minor(症状のある患者にも健常者にも見られうる所見)・inconclusive(臨床的意義が未確定な所見)に階層化する3

  • (a) RAIR消失はmajor
  • (b) 低下(収縮力正常)・収縮力低下(正常)・両者の低下はいずれもmajorの上昇はminor
  • (c) 排出不良+協調運動異常、排出不良+直腸の力低下はminor。排出不良のみでパターンが正常、または排出良好でもパターンが異常なものはinconclusive
  • (d) の上昇(低感覚)・低下(過敏)はmajor、境界域の低感覚はinconclusive

⚠️ 測定上の注意

  • 検査室という環境では通常の排便を再現できず、偽陽性のが生じやすい。 通常型の内圧検査では無症状者の約20%が時に様のパターンを示すと報告されている4。系統的レビューでも診断の86%・49%と、感度は高いが特異度に劣ることが示されている5
  • はこの偽陽性の多さを踏まえ、排便障害の診断に2つ以上の肛門直腸(内圧検査・)の所見の一致を求めている5単独の異常値だけで診断を確定しない。
  • 体位・カテーテル径・センサー配置・機器(水灌流式か式かなど)によって測定値が変わるため、施設・機器ごとに正常値を確認する必要がある34
  • 直腸内に便が残っていると測定を妨げる。で便を触知したときはを行うが、自体も機能に影響しうるため実施の有無を記録し、挿入から時間を空けて検査する14
  • RAIRを誘発できないときは、だけでなく反射の未成熟も考慮する。ただし修正在胎26週を超える早産児では81%が正常なRAIRを示すため、未成熟で説明できる範囲は限られる2

経時変化とモニタリング

そのものより、への反応を予測することが示されている唯一の検査として位置づけられている1。内圧検査は、下剤治療に抵抗性で出口症状のある便秘を疑う入口として、と並べて用いられ、その後のの適応判定に使われる。効果判定でも、の変化だけを追わず、排出試験や排便症状の変化と合わせて判断する——内圧の数値だけが改善しても排便そのものは改善しない例がある。

まとめ

  • は、カテーテルを肛門から直腸に留置し、で安静・・咳のを記録する検査である。
  • 測る指標は(内括約筋)、(外括約筋)、時の、RAIR、直腸
  • 所見はでRAIR異常・肛門緊張収縮異常・協調運動異常・の4領域に分け、major/minor/inconclusiveで階層化する。
  • 協調運動異常はと組み合わせなければ判定できず、単独では偽陽性が多い(特異度約49%)。も2つ以上の検査の一致を求める。
  • 体位・機器差で正常値が変わるため施設が必要で、直腸内の便・の影響も考慮する。
  • RAIR消失はを疑う所見だが、は反射が未成熟な場合がある。
  • の適応判定・効果判定には、と併せて用いる。

出典

  1. 1.The International Anorectal Physiology Working Group (IAPWG) Recommendations: Standardized Testing Protocol and the London Classification for Disorders of Anorectal Function(International Anorectal Physiology Working Group / Neurogastroenterology & Motility・2020)検査プロトコルの節で、肛門直腸内圧検査は左側臥位で行い安静・随意収縮(5秒×3回+長時間収縮)・咳(2回)・怒責(15秒×3回)の順に記録すること、咳は腹腔内・骨盤内圧の急激な変化に対する肛門括約筋圧の反射的上昇を評価する手技であること、患者準備の節で直腸内に便を触知した場合は浣腸を行ってよいが浣腸実施は文書化して機能への影響を考慮すべきとされること、正常値の節で健常者の局所データに基づく正常値には性別・経産・年齢による変動を考慮すべきとされること、考察の節でバルーン排出試験がバイオフィードバック療法への反応を予測することが示されている唯一の検査とされることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.The London Classification: Improving Characterization and Classification of Anorectal Function with Anorectal Manometry(Current Gastroenterology Reports・2020)London分類が(a)直腸肛門抑制反射(RAIR)の異常、(b)肛門緊張と収縮力の異常、(c)直腸肛門協調運動の異常、(d)直腸知覚の異常の4領域に所見を分け、各所見をmajor(健常者には見られず症状との生理学的関連が想定されるパターン)・minor(症状のある患者にも健常者にも見られうるパターン)・inconclusive(臨床的意義が未確定なパターン)に階層化すること、(c)はバルーン排出試験の結果と組み合わせて評価する必要があり内圧検査単独では排便協調運動の診断的有用性が不確実であること、正常値は使用する機器に応じて異なるデータセットを参照する必要があり現時点でIAPWG完全プロトコルに基づく正常値データセットは未発表であることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.How to Perform and Interpret a High-resolution Anorectal Manometry Test(Journal of Neurogastroenterology and Motility・2016)Simulated Evacuationの節で通常型(非高解像度)内圧検査では無症状者の約20%が怒責時に協調運動障害様のパターンを示すと報告されていること、Resting Anal Sphincter Pressureの節で肛門安静時圧の測定値が性別・年齢に依存し使用するHR-ARM機器(センサー配置や水灌流式か固体圧トランスデューサ式か)によっても異なりうること、Patient Preparationの節で直腸指診で便を触知した場合に浣腸を行い浣腸挿入からプローブ留置まで30分以上空けるとされることを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.Anorectal Manometry to Diagnose Dyssynergic Defecation: Systematic Review and Meta-analysis of Diagnostic Test Accuracy(Neurogastroenterology & Motility・2021)Resultsで内圧検査による協調運動障害診断の統合感度86%(95%CI 64-95%)・統合特異度49%(95%CI 30-68%)と、感度は高いが特異度が低く偽陽性が多いことが示されていること、Introductionで Rome IV基準は慢性便秘症状に加え少なくとも2つの一致する肛門直腸機能検査所見を協調運動障害の診断条件とし、バルーン排出試験・排便造影・筋電図を適切な参照検査として挙げていることを確認した閲覧 2026-08-04
  5. 5.Maturation of the Rectoanal Inhibitory Reflex in Very Premature Infants(The Journal of Pediatrics・2003)抄録で、修正在胎30週以下の超早産児16例を対象とした研究において、修正在胎26週を超える早産児の81%が正常な肛門直腸圧と正常なRAIRを示すと報告されていることを確認した。対象は超早産児のみで、正期産児を含む新生児期一般の値ではない(本文全体はJournal of Pediatricsのページで403となり取得できず、PubMed抄録ページの記載に基づく)閲覧 2026-08-04