微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 細菌

Shigella flexneri

フレクスナー赤痢菌

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeShigella
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Medical Microbiology
トピック
2/12: Shigella genus

🧠 全体像:フレクスナーは属の中で開発途上国の主力種として読む。15を超える血清型を持つ遺伝的多様性の高さが特徴で、衛生インフラの乏しい地域で最も高頻度に分離される種である——ゾンネが先進国で優勢なのと対照的な地理的すみ分けを見せる。基本的な微生物学的性状・はのページを参照。

微生物学的な特徴

と共通する性状(ヒトの結腸のみを宿主とする、、高い、・H₂S陰性・ウレアーゼ陰性)を持つが、以下の点で区別する。

項目 内容
血清型 15を超える血清型——属4菌種の中で最も遺伝的に多様(ゾンネは1種類のみ)1
主要血清型 2a・6・3a・1b・2bなどが多数を占め、5血清型で世界の流行株の約89%をカバーする1
産生 産生しない(1型のみが産生する)
疫学的な位置づけ 開発途上国で最も頻度の高い——衛生状態の悪い地域で優勢1

⚠️ 「開発途上国の種」という印象と、耐性の実態は先進国でもできない。 米国のPulseNet(2011年1月1日〜2023年10月20日)で菌種が判明したXDR505株のうち本菌は172株(34.1%)を占め、ゾンネ(333株・65.9%)に次ぐ多数派だった2。

病原性の仕組み

を介した侵入とアクチンを乗っ取る細胞内運動というはと共通する。詳細はのページを参照。は産生しないため、臨床像は血清型によって〜血性下痢まで幅がある。

感染経路と疫学

  • 糞口感染、特にヒト-ヒト接触で伝播する
  • 南アジアのの58%を占める最多菌種(S. sonnei 19%・S. boydii 10%・S. dysenteriae 9%)で、5歳未満児での(10%)は全年齢(7%)より高い3
  • GEMS研究では5歳未満児の中等症〜重症下痢の原因のうち65.9%を本菌が占めた1
  • 衛生状態の悪い開発途上国で優勢という地理的パターンを持つ

⭐ 血清型の多様性がワクチン開発の課題になっている。 15を超える血清型のうち5血清型(2a・6・3a・1b・2b)で世界の流行株の約89%をカバーするが、直接的な防御でカバーできるのはそのうち臨床的に重要な株の約72%にとどまる1。単一血清型のゾンネよりワクチン設計が難しい理由がここにある。

起こす疾患

赤痢は属が共通して起こす疾患。本菌はを産生しないためほどの重症度・リスクはないが、血清型によっては炎症・血性下痢を伴う1。

診断

と同じ手順で行う——、Salmonella-Shigella(Hektoen)培地での緑色コロニー、での無色コロニー。血清型の同定にはに対する凝集試験や分子検査を要する(15を超える血清型があるため単純ではない)。

治療と予防

まとめ

  • フレクスナーは15を超える血清型を持つ遺伝的に多様な種で、開発途上国で最も頻度の高い(南アジアのの58%)である。
  • は産生しないが、血清型によって臨床像に幅があり、5血清型で世界の流行株の約89%をカバーする。
  • XDR株の割合もできない(米国XDR 505株中34.1%)——「開発途上国の種」という印象だけで先進国でのリスクを軽視しない。
  • (侵入、アクチンを乗っ取る細胞内運動)はと共通する。
  • 血清型の多様性がワクチン開発上の課題になっている。

出典

  1. 1.Shigella sonnei and Shigella flexneri: Epidemiology supporting development of cross-protective vaccines(Human Vaccines & Immunotherapeutics・2026)S. flexneriが15を超える血清型を持つ遺伝的に多様な種であり、上位5血清型(2a・6・3a・1b・2bなど)が世界の流行株の約89%を占めること、GEMS研究で5歳未満児の中等症〜重症下痢の内訳としてS. flexneriが65.9%を占めたこと、S. flexneriが衛生状態の悪い開発途上国でより優勢であるのに対しS. sonneiは先進国で優勢という地理的パターンを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Emergence of Extensively Drug-Resistant Shigellosis — United States, 2011–2023(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2026;75(13):173–178)・2026)米国のPulseNetサーベイランス(2011年1月1日〜2023年10月20日)で菌種が判明したXDR赤痢菌505株のうちS. flexneriが172株(34.1%)を占め、S. sonnei(333株・65.9%)に次ぐ多数派であったこと、XDR株全体の割合が2011〜2015年の0%から2023年には8.5%へ増加したことを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Burden of Shigella in South Asia: a systematic review and meta-analysis(Journal of Travel Medicine・2023)南アジアの糞便検体中のShigella属菌の内訳がS. flexneri 58%(95%CI 53〜62%)・S. sonnei 19%・S. boydii 10%・S. dysenteriae 9%であり、5歳未満児での赤痢の有病率(10%、95%CI 8〜11%)が全年齢(7%、95%CI 6〜7%)より高いこと、キノロン耐性S. sonneiの世界的拡大の供給源として南アジアが位置づけられていることを確認した。閲覧 2026-09-05