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ICHスコア

ICH score

別名
Hemphill ICHスコア
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-19:非外傷性頭蓋内出血神経内科 G1-16:脳血管障害の救急対応
構成:症状
意識障害
構成:画像所見
CT高吸収域
適用疾患
脳内出血(非外傷性)

🧠 全体像:ICHスコアは、のの重症度を0〜6点で層別化する予後スコアである。使う情報は(GCS)・初回CTの血腫量・・出血・年齢の5項目だけで、採血も特殊な画像も要らない。もとは30日死亡の予測のために作られ1、その後12か月のでも検証された2。⚠️ ただし集団の層別化に使うであって、個々の患者の運命を決めるではない。点数が高いことを理由に治療を制限すると、予測が自分で現実になる。

目的と適用場面

内容
目的 の予後(30日死亡・)の層別化。診療チーム・家族・研究の間で重症度を同じ言葉で語る
対象 急性の非3
使う場面 (GCSと初回CTが揃った時点)。では登録時の層別因子としても使われる2
評価しないもの 出血の原因、抗凝固薬の使用、血腫拡大の速さ、発症後の合併症、治療の選択

構成要素と配点

項目 区分 点数
のGCS 3〜4 2
5〜12 1
13〜15 0
血腫量(初回CT) 30 mL(30 cm³)以上 1
30 mL未満 0
あり 1
なし 0
出血の起源 (小脳・脳幹) 1
0
年齢 80歳以上 1
80歳未満 0

合計は0〜6点。GCS 3〜4(2点)に残りの4項目がすべて当てはまると6点になる1。⭐ 実際のコホートで観察されたのは5点までで、6点の症例は検証コホートにも現れなかった23。

flowchart TD
    A["急性の非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracerebral hemorrhage (ICH)'>脳内出血</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presentation'>来院時</span>GCS<br>3〜4点:2点/5〜12点:1点/13〜15点:0点"]
    A --> C["初回CT<br>血腫30 mL以上・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraventricular hemorrhage'>脳室内出血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infratentorial'>テント下</span>出血:各1点"]
    A --> D["年齢<br>80歳以上:1点"]
    B --> E["5項目を合算(0〜6点)"]
    C --> E
    D --> E
    E --> F["点数が高いほど30日死亡・不良な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional outcome'>機能転帰</span>が増える"]
    F --> G["集団の層別化・共通言語として使う"]
    F --> H["個々の患者の治療制限の根拠にはしない"]

各項目の測り方

  • GCSは救急外来での(入院時)の値を使う2。定義の細部はの配点表に従う。
  • 血腫量は初回CTからABC/2法で見積もる。最大径A、それに直交する最大径B、血腫が写るスライスの高さC(の合計)の積を2で割る手計算で、検証コホートでもこの方法が使われた2。単位はcm³で、mLと同じ数値になる。
  • は初回CTで脳室内に血液が見えれば1点。
  • は小脳・脳幹の出血。大脳基底核・視床・脳葉の出血はである。
  • 年齢は80歳の境界だけを見る。79歳と81歳で1点違うことを承知しておく。

解釈とカットオフ

原著は、診療・研究で標準化されたがには無かったことを背景に、この5項目を30日死亡のとして重みづけした。最も強い因子はGCS(P<0.001)で、次が年齢(P=0.001)、出血(P=0.03)、血腫量(P=0.047)、(P=0.052)の順だった1。はの境にあり、5項目の重みは均等ではなく、GCSの2点が特に大きいことを覚えておく。

コホート 症例 30日死亡の読み方
開発(UCSF、1997〜1998年) 急性ICH スコア0の26例は全員生存、スコア5の6例は全員死亡。死亡率はスコアとともに段階的に上がった1
(Stanford・Santa Clara、1998〜2000年) 175例、全体の30日死亡40% スコア0の41例中4例が死亡、スコア5の5例は全員死亡。スコアが1上がるごとに死亡が増えた3

⭐ スコア0でも死亡はゼロではない。 開発コホートの「0点は全員生存」は26例の数字で、では41例中4例が亡くなっている。低スコアを「安全」と読み替えない。

検証 結果
前向きコホート243例(UCSF・SFGH、2001〜2004年):12か月の mRSのカットポイントごとのc統計量が0.80(mRS 1以下)、0.81(2以下)、0.80(3以下)、0.84(4以下)。どのカットポイントでもスコアが上がるほど良好な転帰が減った2
同コホート:死亡 30日でc=0.86、3・6・12か月で0.87〜0.88。入院中の死亡は95例(39%)2
372例:3か月 ICHスコアのAUCは死亡・不良な(mRS 4〜6)のいずれも0.80〜0.864

💡 退院時の重さは、1年後の重さではない。 前述のコホートでは、退院まで生存した148例の34%が退院から12か月の間にmRSを改善した2。ICHスコアは点の層別化であり、回復の余地を含んだ最終転帰を断定する数字ではない。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 点数の高さを治療制限の理由にしない。 重い初期症状に基づく予測が治療制限を招き、その結果として予測どおりの転帰になる「自己成就予言」への懸念は、検証した著者自身がで述べている2。この検証コホートでは、入院中に亡くなった患者の78%で生命維持の差し控えがあった。別の前向き研究でも、372例の19%で治療制限や生命維持の撤回が行われている4。最大限の治療と最初の5日間の新規DNR指示の回避が、ICHスコアに基づくの予測より低い観察死亡率と関連したという報告がある4。

⚠️ スコア5の患者がみな助からないわけではない。 前向きコホートには、スコア5でありながら、来院後にGCS 3まで悪化して30 mLの小脳血腫を緊急除去され、12か月後にmRS 2まで回復した49歳の症例がある2。出血と血腫量の2点は、外科的に介入できる病態でも加算される。

⚠️ 評価しないものが多い。 経口抗凝固薬の使用はICHスコアの項目に無い(max-ICHスコアは抗凝固薬の項を加えて16区分にしたが、ICHスコアとの識別力に有意差はなかった)4。血腫拡大、脳浮腫の進行、水頭症、肺炎などの早期合併症も入らない。こうした経過で決まる要素に対し、の単回のスコアは無力である4。

⚠️ 出血・には使わない。 対象は非ICHである3。には別のを使う。

💡 診療ではGCSの取り方が結果を左右する。 のGCSが2点(3〜4点)か1点(5〜12点)かで総点が1点動くため、痙攣後の意識障害、鎮静薬、挿管、低血糖など、一過性にGCSを下げうる要因は、点数をつける前に確認する。意識障害の評価では、背景にある血糖・薬剤・てんかん後状態の除外が前提になる。

⭐ 単純な5項目スコアの限界を踏まえ、他にもmax-ICHスコア、ICH-FOS、Essen-ICHなど改変・代替のスコアが提案されてきたが、直接比較したいくつかの検証でICHスコアより明確に優れているとはいえず、臨床で乗り換える動きは見られていない4。個々の患者の判断には、単純なスコアに代わる手段がなお要るというのが著者のである4。

まとめ

  • ICHスコアは、GCS(3〜4点で2点、5〜12点で1点)・血腫30 mL以上・・出血・80歳以上(各1点)の5項目、0〜6点で、のの重症度を層別化する。
  • 最も重みが大きいのはGCSである。観察されたスコアは5点までで、0点でも死亡はゼロではない(で41例中4例)。
  • 30日死亡だけでなく12か月のも層別化でき、c統計量は0.80〜0.86前後だった。
  • 退院時の障害は固定ではない。の点数は回復の余地を含めた最終転帰を断定しない。
  • ⚠️ 高得点を理由に治療を制限しない。 自己成就予言を避けるため、最大限の治療を続けたうえで経過を見て判断する。
  • 抗凝固薬、血腫拡大、早期合併症は含まれない。非ICH以外には使わない。

出典

  1. 1.The ICH score: a simple, reliable grading scale for intracerebral hemorrhage(Stroke(Hemphill JC, Bonovich DC, Besmertis L, Manley GT, Johnston SC)・2001)ICHスコアの原著。抄録(Europe PMC、PMID 11283388)で、UCSFの1997〜1998年の急性ICHから30日死亡の独立予測因子を求め、GCS(P<0.001)・80歳以上(P=0.001)・テント下出血(P=0.03)・血腫量(P=0.047)・脳室内出血(P=0.052)の5つを重みづけしたこと、配点(GCS 3〜4点=2、5〜12点=1、13〜15点=0/80歳以上=1/テント下起源=1/血腫量30 cm³以上=1/脳室内出血あり=1)、スコア0の26例は全員生存しスコア5の6例は全員死亡、30日死亡率がスコアとともに段階的に上がった(P<0.005)ことを確認した。誌面は購読制で未取得のため、スコアごとの死亡率の表は確認していない。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Prospective validation of the ICH Score for 12-month functional outcome(Neurology(Hemphill JC, Farrant M, Neill TA)・2009)PMC全文(PMC2764394)で、非外傷性ICH 243例の前向きコホートについて、配点が原著と同じであること、血腫量は初回CTでABC/2法により測ったこと、スコアは0〜5で6点の例は無かったこと、入院中に39%が死亡しその78%で生命維持の差し控えがあったこと、12か月の機能転帰(mRSのカットポイントごとのc統計量0.80〜0.84)と30日死亡(c=0.86)をスコアが層別したこと、退院生存148例の34%が退院から12か月の間にmRSを改善したこと、スコア5でも小脳血腫の緊急除去後に12か月のmRS 2に達した1例があること、考察が「予後の悪い予測が治療制限を招く自己成就予言」の懸念に触れていることを確認した。閲覧 2026-11-06
  3. 3.External validation of the ICH score(Neurocritical Care(Clarke JL, Johnston SC, Farrant M, Bernstein R, Tong D, Hemphill JC)・2004)抄録(Europe PMC、PMID 16174898)で、Stanford Medical CenterとSanta Clara Valley Medical Centerの1998〜2000年の非外傷性ICH 175例(30日死亡40%)で、スコアは0〜5に分布し、スコアが1上がるごとに30日死亡が増えた(傾向のP<0.01)こと、スコア0の41例中4例が死亡し、スコア5の5例は全員死亡したこと、ROC曲線が開発コホートと同様だったことを確認した。誌面は購読制で未取得。閲覧 2026-11-06
  4. 4.Assessment and comparison of the max-ICH score and ICH score by external validation(Neurology(Schmidt FA, Liotta EM, Prabhakaran S, Naidech AM, Maas MB)・2018)PMC全文(PMC6139815)で、前向き観察研究のICH 372例のうち71例(19%)で治療制限・生命維持の撤回があったこと、ICHスコアとmax-ICHスコア(経口抗凝固薬の項を加え16区分)の3か月死亡・不良な機能転帰(mRS 4〜6)に対するAUCがどちらも0.80〜0.86で全例でも最大限治療の部分集団でも有意差がなかったこと、著者が個々の患者の判断には単純なスコア以外の手段が要ると結論したこと、序論が「一般的な予後スコアは早期合併症の影響を織り込めない」「重い初期症状に基づく自己成就予言が治療制限を招きうる」と述べ、最大限の治療と最初の5日間の新規DNR指示の回避が、ICHスコアに基づく過去対照の予測より観察死亡率を下げたという報告を紹介していることを確認した。閲覧 2026-11-06