スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

IOTAモデル

IOTA models

別名
IOTA Simple RulesIOTAシンプルルールADNEXモデルLR2モデル
臓器系
生殖・産婦人科腫瘍
科目
Gynecology
トピック
婦人科 24:卵巣機能性嚢胞婦人科 25:卵巣の良性腫瘍
構成:症状
腹水
構成:検査値
CA-125

🧠 全体像モデル群は、単一のスコアではなく、グループが2000年代以降に段階的に開発してきたの術前超音波形態評価ツールの総称である。最初期の実務的モデルがLR2モデル(6のロジスティック回帰)、次に日常臨床での使用を意図した Simple Rules(10のルールで良性/悪性/の3群に分ける)、そして連続的な悪性確率に加えて腫瘍の型(良性・・浸潤癌の病期・転移性)まで推定するADNEXモデルが続く。共通するのは、超音波所見を医の主観だけに頼らず標準化・数量化しようとするである。RMIROMACA-125(とHE4)を主軸に据えるのに対し、モデル群は超音波形態を中心に据える点で対極に位置し、RCOG GTG 62はCA-125を必要としない代替法として Simple Rulesを紹介したうえで、例を除いた感度95%・特異度91%という、同じ文書がRMI I(200)について報告する感度78%・特異度87%より高い数値を示している1

目的と適用場面

内容
目的 の超音波形態所見を標準化し、良性・悪性の判別または悪性確率の推定を行う
対象 が確認され、手術やさらなる評価を検討している女性
使う場面 モデルにより異なる。Simple Rulesは日常臨床での一次判定に、ADNEXモデルは詳細な・専門施設紹介の判断に、LR2モデルはSimple Rules登場(2008年)以前からある歴史的なとして、いまも比較対象・代替として言及される
評価しないもの 確定診断、術式そのもの。Simple Rules・LR2は腫瘍の型(・浸潤癌の病期・転移性の区別)の推定も行わない

構成要素と配点

3つのモデルは構成要素も判定方法もそれぞれ異なる。 以下、モデルごとに分けて記載する。

IOTA Simple Rules(10ルール)

良性を示唆する5つのB-rule(B1〜B5)と、悪性を示唆する5つのM-rule(M1〜M5)からなる。1つでも該当所見があれば、そのルールが「該当する」とみなす2

B-rules:良性を示唆する5所見

ルール 内容
B1
B2 があるが最大径7mm未満
B3 を伴う
B4 平滑な腫瘍で最大径10cm未満
B5 血流を認めない

M-rules:悪性を示唆する5所見

ルール 内容
M1 不整な腫瘤
M2 腹水を認める
M3 が4個以上
M4 不整な腫瘍で最大径10cm以上
M5 非常に強い血流

💡 B・M合わせて10所見のうち、片方の系統だけが該当すればそちらに分類される。両方該当する、またはどちらも該当しない場合は「」となる——これは失敗ではなく、Simple Rules自体に組み込まれた第3の判定区分である2

flowchart TD
    A["超音波でB-rule・M-ruleそれぞれの<br>該当の有無を確認"] --> B{"B-ruleのみ該当"}
    B -->|"はい"| C["良性と分類"]
    B -->|"いいえ"| D{"M-ruleのみ該当"}
    D -->|"はい"| E["悪性と分類<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gynaecologic tumours'>婦人科腫瘍</span>サービスへ紹介"]
    D -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indeterminate'>判定不能</span><br>B・M両方該当、または両方非該当"]
    F --> G["ADNEXモデルや<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='expert'>専門家</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pattern recognition'>パターン認識</span>評価など<br>別の方法で再評価"]

ADNEXモデル

加算式のスコアではなく、9つの予測に投入して良性・・stage I浸潤癌・stage II–IV浸潤癌・という5つの型に分ける確率を連続値で出力する多項ロジスティックである。CA-125を含む版と含まない版があり、施設でCA-125が測定できなくても運用できる3

分類
臨床(3つ) 年齢、CA-125実測値(任意。含めない版もある)、施設種別(腫瘍専門紹介施設か否か)
超音波(6つ) 病変の最大径、の割合、嚢胞小室10個以上か、の数、の有無、腹水の有無

💡 臨床に「施設種別」が入っている点がSimple Rules・LR2にはない特徴である。同じ超音波所見でも、腫瘍専門紹介施設で診た場合と一般施設で診た場合とでは、その施設に紹介される患者の悪性の(有病割合)自体が違うため、これをモデルに組み込んで補正している。

LR2モデル

が最初に発表した実務向けモデルで、6つのからなるロジスティックで悪性の確率を算出する。よりの多い姉妹モデルLR1(12)と同時に開発されたが、少ないで運用しやすいLR2のほうが広く使われた4

内容
年齢 患者の年齢
腹水 有無
内血流 有無
固形成分の最大径 mm単位の実測値
不整な嚢胞内壁 有無
有無

解釈とカットオフ

モデルごとに出力形式もの考え方も異なる。

モデル 出力 ・性能の目安
Simple Rules 良性/悪性/の3群への分類 例を除いた感度95%・特異度91%(RCOG引用値、10.37・0.06)1。適用可能例に限ったではプールされた感度92%・特異度92%(それぞれ95%CI 89–94%)2
ADNEXモデル 5型(良性・・stage I・stage II–IV・転移性)それぞれの確率、良性・悪性の2群に集約した確率も算出可 悪性確率10%をとした外的検証のプール値は、CA-125あり版で感度94%・特異度77%、CA-125なし版で感度93%・特異度75%(いずれも95%CI付き)3
LR2モデル 悪性である確率(0〜1の連続値) 悪性確率10%をとした開発時の内的検証で感度89%・特異度73%、テストセットでのAUC 0.924

⚠️ 」はSimple Rules特有の弱点であり、できない頻度で発生する。 では全体の14.3%(100%−85.7%)がで、Simple Rulesだけでは白黒つかない2。別の外的検証では適用可能例が77%にとどまったとする報告もあり、率は検証コホートによって変動する4例では、ADNEXモデルやによる評価など別の方法へ切り替える必要がある。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ Simple Rulesは例を必ず生む設計であり、これを補うためにADNEXモデルが開発された。ならとりあえず悪性扱いにする」という運用も選択肢としてありうるが、それは偽陽性を増やす方向の妥協であり、Simple Rules単体の性能とは別に評価する必要がある。

⚠️ 超音波所見の記述・判定は者の技量・経験に依存する。 と同様、の性状評価や血流の強さの判定は施設間・者間でばらつきうる。グループ自身、外的検証でのSimple Rulesの性能が「経験豊富な検者による評価と同程度」にとどまるとしている4

⚠️ LR2モデルは自身が発表した順番として最も古く、その後Simple Rules・ADNEXという、より新しいモデルが同じグループから発表されている。 新しいモデルほど優れているとは限らないが、LR2は現在では単独の第一選択というより、比較対象・歴史的参照として扱われることが多い。

⚠️ 単独で手術適応・術式を決めない。 モデル群はいずれも・形態評価のツールであり、確定診断やそのものを与えない。

モデル群は他のリスク評価とも位置づけが異なる。

中心となる情報 構成要素
モデル群(Simple Rules・ADNEX・LR2) 画像中心 超音波形態所見(モデルにより6〜10)。ADNEXはCA-125・年齢・施設種別も加える版がある
画像中心 超音波形態所見をで記述し0〜5の6カテゴリーへ集約したもの(CA-125を含まない)
RMI マーカー+粗い超音波スコア 超音波所見を5項目の粗いスコアに単純化したもの×CA-125実測値×閉経スコアの積
ROMA マーカー中心 CA-125・HE4・閉経状態(超音波所見を含まない)

⚠️ どれか1つの評価法がほかより一貫して優れているという合意はない。 と同様、モデル群も実務ではCA-125などのマーカーやRMI・ROMAと組み合わせて判断されることが多い。

まとめ

  • モデル群は単一のスコアではなく、グループが順次発表してきたの超音波形態評価ツールの総称で、LR2モデル(最初期・6の回帰)、 Simple Rules(10ルールで3群に分類)、ADNEXモデル(9で5型の確率を連続的に算出)からなる。
  • Simple Rulesは5つのB-rule(良性所見)と5つのM-rule(悪性所見)からなり、片方の系統のみ該当すれば良性/悪性、両方または非該当ならに分類する。例を除いた感度95%・特異度91%(RCOG)、適用可能例に限ったでは感度92%・特異度92%だが、率はで14.3%、別の検証では23%に達する。
  • ADNEXモデルは年齢・CA-125(任意)・施設種別の臨床3つと、超音波6つを組み合わせ、良性・・stage I・stage II–IV・転移性の5型の確率を出力する。悪性確率10%での感度・特異度はCA-125あり版で94%/77%、なし版で93%/75%。
  • LR2モデルは年齢と5つの超音波所見からなる6のロジスティック回帰で、開発時の内的検証で感度89%・特異度73%(10%)、AUC 0.92。の中では最も古いモデルである。
  • いずれも超音波所見の者依存性があり、単独で手術適応を決めない。RMI・ROMAとは中心に据える情報が異なり、とは画像中心という点で共通するがは独立している。どれか1つが一貫して優れているという合意はなく、実務ではマーカーと組み合わせて判断する。

出典

  1. 1.Management of Suspected Ovarian Masses in Premenopausal Women (Green-top Guideline No. 62)(Royal College of Obstetricians and Gynaecologists(RCOG)/British Society for Gynaecological Endoscopy(BSGE)・2011)IOTA Simple RulesをCA-125を必要としない代替の術前評価法として紹介し、判定不能例を除いた感度95%・特異度91%(陽性尤度比10.37・陰性尤度比0.06)という数値、およびM-ruleが1つでも該当すれば婦人科腫瘍サービスへ紹介すべきという推奨(エビデンスレベル1+)を確認した。同じ文書がRMI I(カットオフ200)について系統的レビューのプール値として感度78%(95%CI 71–85%)・特異度87%(95%CI 83–91%)を示していることも確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.The diagnostic performance of International Ovarian Tumor Analysis: Simple Rules for diagnosing ovarian tumors—a systematic review and meta-analysis(Frontiers in Oncology・2025)IOTA Simple Rulesの10ルールの原著定義(B1=単房性、B2=充実部の最大径7mm未満、B3=音響陰影あり、B4=平滑な多房性腫瘍で最大径10cm未満、B5=血流なし/M1=不整な充実性腫瘤、M2=腹水あり、M3=乳頭状突起4個以上、M4=不整な多房性充実性腫瘍で最大径10cm以上、M5=非常に強い血流)、B-rule・M-ruleがともに該当またはともに非該当の場合は判定不能とする判定ロジック、27研究7,841例(良性72.2%・悪性27.8%)を統合したメタ解析でSimple Rulesが適用可能だった割合85.7%、判定不能例を除いたプールされた感度92%(95%CI 89–94%)・特異度92%(95%CI 89–94%)・診断オッズ比115.59(95%CI 83.33–160.34)を確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Key findings from the International Ovarian Tumor Analysis (IOTA) study: an approach to the optimal ultrasound based characterisation of adnexal pathology(Australasian Journal of Ultrasound in Medicine・2012)IOTA LR1モデル(12変数)とLR2モデル(年齢・腹水の有無・乳頭状突起内血流の有無・固形成分の最大径・不整な嚢胞内壁の有無・音響陰影の有無の6変数)の構成、両モデルの開発コホート(残存付属器腫瘤を持つ非妊娠女性1,066例)、内的検証テストセットでのAUC(LR1=0.94、LR2=0.92)、リスク閾値10%での感度・特異度(LR1=93%/76%、LR2=89%/73%)、Simple Rulesの外的検証における感度92%・特異度96%(経験豊富な検者の主観評価と同程度)と適用可能例が77%にとどまったことを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.ADNEX risk prediction model for diagnosis of ovarian cancer: systematic review and meta-analysis of external validation studies(BMJ Medicine・2024)ADNEXモデルの9つの予測変数(臨床変数:年齢・CA-125実測値[任意]・施設種別、超音波変数:病変最大径・充実部の割合・嚢胞小室10個以上か・乳頭状突起の数・音響陰影の有無・腹水の有無)、CA-125を含む版と含まない版があること、47件の外的検証研究・17,007例(28か国136施設以上)を統合したメタ解析でのプールAUC(CA-125あり0.93[95%CI 0.92–0.94]・CA-125なし0.93[95%CI 0.91–0.94])、リスクカットオフ10%での感度・特異度(CA-125あり:感度94%[95%CI 92–95%]・特異度77%[95%CI 73–81%]、CA-125なし:感度93%[95%CI 90–95%]・特異度75%[95%CI 70–79%])を確認した閲覧 2026-08-10