スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

O-RADS US(卵巣・付属器画像報告データシステム)

O-RADS US

別名
O-RADSOvarian-Adnexal Reporting and Data System
臓器系
生殖・産婦人科腫瘍
科目
Gynecology
トピック
婦人科 24:卵巣機能性嚢胞
構成:画像所見
超音波エコー輝度
適用疾患
卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍

🧠 全体像は、の超音波所見を統一された用語()で記述し、0〜5の6段階カテゴリーへ集約して、悪性リスクと次に取るべき行動(経過観察・専門医紹介・生検/手術)を対応づける分類システムである。ACRが乳房のと同じで卵巣・付属器領域に展開したもので、点数を足し上げる採点式ではなく所見を統合した総合判定という点もと共通する。診断そのものではなくと管理方針の決定が目的で、同じ所見でも閉経状態によって管理が変わる。

目的と適用場面

内容
目的 の超音波所見を標準化し、悪性リスクカテゴリーと管理方針を一意に対応づける
対象 (困難な場合はを併用)で指摘された全般
使う場面 ・症状評価いずれのレポートでも、末尾に確定カテゴリーを付して臨床側へ伝える
評価しないもの 、正常卵巣の捻転、卵巣・卵管由来と明らかに異なる病変、病理学的な確定診断そのもの

⭐ ACRが策定した臓器別RADSファミリーの一員として乳房のと対をなすが、・所見用語集は独立しており流用できない。

構成要素と配点

は加算式のスコアではなく、・隔壁の数と厚さ・の性状・血流の強さ()・の数・腹水の有無などの所見を統合して医が下すカテゴリー分類である1

カテゴリー 悪性リスク 代表的な所見 目安となる管理
0 腸管ガス・病変の大きさ・卵巣の位置など技術的要因でリスク評価に必要な所見を正確に評価できない の再検査、またはMRI
1 0% 正常卵巣。卵巣病変なし、または≤3 cm)・黄体(通常≤3 cm)。生理的嚢胞を前提とするため閉経前女性にのみ用いる 経過観察不要
O-RADS 2 <1% 、平滑な嚢胞、典型的ななどの「典型的良性病変」 多くは経過観察不要。大きさ・閉経状態によっては6〜12か月後の経過観察
O-RADS 3 1–<10% 10 cm以上の典型的良性形態、平滑な嚢胞≥10 cm、不整な、平滑な<10 cm<4)、平滑な病変(1、またはを伴えば2〜3) 6か月以内の経過観察。なら超音波評価またはMRIも検討。婦人科紹介
O-RADS 4 10–<50% を伴う双房・1〜2)、10 cm以上または強い血流(4)を伴う平滑な、不整な双房・3個以下のを伴わない平滑な病変(2〜3) 超音波評価・MRI、または医のプロトコルに従う。医への紹介を検討
O-RADS 5 ≥50% 4個以上のを伴うを伴う双房・3〜4)、平滑な病変(4)、不整な病変、腹水・ 医のプロトコルに従い直接紹介

⚠️ 0を見落とさない。 検査の適応から見て卵巣が描出されるはずなのに描出されない場合は、 0(技術的に不十分)としうる2。単に「卵巣が見えなかった」で終わらせず、再検査またはMRIにつなげるための独立したカテゴリーである。なお描出されない卵巣の多くと、摘出済みの卵巣はいずれも「:適用外」であり、 0とは区別する2

解釈とカットオフ

カテゴリー0〜2は経過観察不要〜軽い追跡、3は婦人科での経過観察、4〜5は専門医が関与する対応という段階が骨格である。

同じカテゴリーでも閉経前・閉経後で経過観察の要否・間隔が変わる。 は閉経前なら5 cm以下まで追跡不要だが、閉経後は3 cm超で12か月後の追跡を要する。典型的も閉経状態で扱いが分かれ、閉経後5年以上のでは「生じないはず」とされ、その場合は他の記述子で再分類する3

💡 カテゴリー4・5の画像的対応は「超音波評価」「MRI追加」「医プロトコル」のいずれかを選ぶ幅があり、施設のアクセス可能な資源に応じて調整してよい。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 適用しない場面が明示されている。 、正常卵巣の捻転、卵巣・卵管由来でないことが明らかな病変(など)には用いない2。小児例への適用も想定されていない。

⚠️ 超音波所見の記述・カテゴリー判定は者の技量・経験に依存し、施設間・者間でばらつきうる。特にの性状評価やの判定でが下がりやすい。

⚠️ 単独で手術適応を決めない。 管理推奨は要件ではなく「平均的リスクかつが無い」場合のガイダンスであり、個々の症例ではリスク(卵巣癌の家族歴・など)・症状・その他の臨床因子・専門的判断によってスコアにかかわらず修正されうる2CA-125などのなど他の層別化ツールと併用されるのもこのためである。

⚠️ 2022年改訂(v2022)では良性を示唆する記述子が加わった。 の平滑な嚢胞は大きさ・によらず悪性リスクが低いとされ、平滑な病変のも低リスク側の所見として扱われる3。2019年版との比較研究では、感度を保ったまま特異度・正確度が有意に改善し、547例中29例(5.3%)がより低いリスクへ再分類され、その97%(29例中28例)が正しい再分類であったと報告されている4

まとめ

  • の超音波所見を0〜5の6段階カテゴリーへ集約し、悪性リスクと管理方針を対応づける、ACR策定の分類システムである。乳房のと同じを共有するが、・用語集は独立している。
  • 0は「技術的要因で評価できない」独立したカテゴリーであり、単なる欠測として扱わない。1は正常卵巣(0%、閉経前のみ)、2は<1%の典型的良性病変、3は1–<10%の低リスク、4は10–<50%、5は≥50%の高リスクである。
  • 同じカテゴリーでも閉経前・閉経後で追跡の要否・間隔が変わり、特にで顕著である。
  • ・正常卵巣の捻転・小児例には用いず、者間でばらつきうる。単独で手術適応を決めず、CA-125・年齢・症状・などと統合して判断する。
  • 悪性が強く疑われる場合は卵巣癌の評価・治療体系に移行する。

出典

  1. 1.O-RADS US Risk Stratification and Management System: A Consensus Guideline from the ACR Ovarian-Adnexal Reporting and Data System Committee(American College of Radiology(Radiology誌掲載のコンセンサスガイドライン)・2020)O-RADS USがACRの委員会により策定され、カテゴリー0〜5に対して悪性リスク(1:0%、2:<1%、3:1〜<10%、4:10〜<50%、5:≥50%)と管理方針を対応づける分類システムであることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.O-RADS™ US v2022 — Assessment Categories / Classic Benign Lesions(American College of Radiology(O-RADS委員会)・2022)各カテゴリーのレキシコン記述子と管理推奨、単純嚢胞の追跡閾値が閉経前後で異なること(3cm以下/3cm超5cm以下/5cm超10cm未満)、典型的出血性嚢胞は閉経後5年以上(late postmenopausal)では「生じないはずであり他のレキシコン記述子で再分類する」とされること、双房性の平滑な嚢胞は大きさ・カラースコアによらず悪性リスクが低いとされること閲覧 2026-08-04
  3. 3.O-RADS™ Ultrasound v2022 — Governing Concepts(American College of Radiology(O-RADS委員会)・2022)検査の適応上は卵巣が描出されるはずなのに描出されない場合を「O-RADS 0:技術的に不十分」としうること、O-RADSを適用しない場面(骨盤内炎症性疾患・異所性妊娠・正常卵巣の捻転・卵巣/卵管由来でないことが明らかな病変)、管理推奨は平均的リスクかつ急性症状が無いことを前提としたガイダンスであり個々の症例ではリスク因子・症状・臨床判断により修正されうること閲覧 2026-08-04
  4. 4.O-RADS US Version 2022 Improves Patient Risk Stratification When Compared with O-RADS US Version 2019(Radiology(University of Chicagoほかの研究グループ)・2025)2022年改訂版が2019年版と比較して特異度・正確度を有意に改善し、患者の5.3%がより低リスクへ再分類され、その97%が正確な再分類であったことを確認した閲覧 2026-08-04