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Karnofsky PS

Karnofsky performance status

別名
KPSカルノフスキー全身状態スケール
臓器系
腫瘍
科目
Oncology and Reconstructive Oncoplastic Surgery
トピック
腫瘍学 I-31:臨床効果判定基準と全身状態評価
適用疾患
カポジ肉腫転移性脳腫瘍膠芽腫

🧠 全体像:KPSは、がん患者の力・就労・身の回りの自立・必要な医療ケアを、100(正常)から0(死亡)まで10刻みの11段階で表す全身状態スケールである。1949年に書籍『Evaluation of Chemotherapeutic Agents』の一章として、化学療法の評価の文脈でKarnofskyとBurchenalが発表した。ECOG PSの原型であり、段階が細かい分だけやや精密だが、評価者の主観に依存し、病期や予後を直接表す指標ではない。1

目的と適用場面

内容
目的 患者の(自立度・介助の必要度)を数値で層別化し、治療前後や患者間で比べる
対象 ・放射線治療・移植などを検討するがん患者。のや層別因子として広く使われる
使う場面 の決定、への登録、治療経過中の機能の追跡、予後の見積もり
評価しないもの 腫瘍の()、臓器別の、生活の質(QOL)そのもの

構成要素と配点

複数項目の合算ではなく、単一軸で最も当てはまる1段階を選ぶ。11段階は、通常の活動と就労ができるかどうかで切るA・B・Cの3群にまとまる。1

群 KPS 状態(原著の趣旨)
A 通常の活動と就労が可能で、特別なケアは不要 100 正常。訴えなし。病気の証拠なし
A 90 通常の活動が可能。軽い症状・所見がある
A 80 努力すれば通常の活動が可能。いくつかの症状・所見がある
B 就労は不能だが在宅で生活でき、身の回りの大半は自分でできる。介助の必要度はさまざま 70 自分の世話はできるが、通常の活動や活動的な仕事はできない
B 60 ときどき介助が必要だが、身の回りの大半は自分でできる
B 50 かなりの介助と頻回の医療が必要
C 自分の世話ができず、施設または病院に相当するケアが必要。病状が急速に進行しうる 40 障害があり、特別なケアと介助が必要
C 30 高度の障害。死は差し迫っていないが入院が適応
C 20 非常に重篤。入院が必要で、積極的な支持療法が必要
C 10 。致死的な経過が急速に進行している
C 0 死亡

💡 11段階は2〜3問で絞り込める。 次の手順は、原著の3群に沿って段階を決める評価法として提案されたもので、前向きの検証は行われていない。1

flowchart TD
    A["通常の仕事・活動を続けられるか"] -->|"はい(群A)"| B["症状はあるか"]
    B -->|"なし"| B1["100"]
    B -->|"軽い"| B2["90"]
    B -->|"いくつかある(努力が必要)"| B3["80"]
    A -->|"いいえ"| C["日中の半分以上を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bed rest (immobilization)'>臥床</span>して過ごすか"]
    C -->|"いいえ(群B)"| D["介助は必要か"]
    D -->|"不要(自分の世話はできる)"| D1["70"]
    D -->|"ときどき"| D2["60"]
    D -->|"かなり・頻回"| D3["50"]
    C -->|"はい(群C)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bed rest (immobilization)'>臥床</span>の程度は"]
    E -->|"半分以上"| E1["40"]
    E -->|"ほぼ完全に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bed rest (immobilization)'>臥床</span>"| E2["30"]
    E -->|"完全に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bed rest (immobilization)'>臥床</span>・大がかりな看護"| E3["20"]
    E -->|"昏睡・ほとんど覚醒しない"| E4["10"]

Schagらは、判断に迷うときの補助として、体重の減少・増加、活力の低下、歩行・運転・身づくろいの困難、パートタイム就労の可否という7つの行動について尋ねる面接法を示し、標準的な評価によりとが高まると期待している。2

解釈とカットオフ

点数そのものに固定の意味はなく、上表のA・B・Cのどの群かが実用上の読み方になる。は疾患や研究ごとに決まり、普遍的な適応基準は無い。下表のうち脳転移・・では70付近(「自分の世話はできるが活動的な仕事はできない」境界)が使われ、では90未満が危険因子に挙がる。

疾患 KPSの使われ方
脳転移 無症候性の脳転移でKPS 50以下、またはKPS 70未満で全身治療の選択肢が無い患者には放射線治療を提示しない。未切除5個以上でKPS 70以上なら・・併用のいずれも妥当
70歳以上でKPS 70以上なら1.8 Gy分割計50 Gyの照射がより生存を改善した。年齢・KPSの点で予後不良な患者では、15分割40 Gyのが30分割60 Gyと同等の効果をもつ
ACTGのTISで、KPS 70未満は全身状態(S)が不良と判定される条件の一つ
後の発症の危険因子として、Karnofsky 90未満が挙げられる

予後との関係は非対称である。KPSが低いと予後不良の感度の高い指標になるが、高いことは長期生存の指標として乏しいとされる。患者での生存期間との相関も弱い(Spearman 0.26)。3

ECOG PSとの関係

ECOG PSはKPSから派生した6段階のスケールである。KPSは段階が細かい分だけやや精密とされ、ECOG PSは全身状態が悪い領域を粗く単純化する欠点が指摘されている。使い分けは歴史的な経緯が大きく、ではKPSが重視され、他の多くの腫瘍分野ではECOG PSが多く使われる。1 3段階にまとめた大まかな対応はECOG PSのノートに載せているが、個々の患者への換算は誤差が大きく、特に全身状態の低い領域でばらつくため、一方の値をもう一方へ機械的に置き換えない。4

限界と使ってはいけない場面

⚠️ な評価で、評価者によって点数が動く。 評価者間の一致度の報告は、0.69(Yatesら)から0.97超(Morら、訓練した評価者)まで幅がある。Schagらの研究ではの方がより高い点を付けた。1 評価者の訓練と、行動に基づく質問による標準化が提案されている。2

⚠️ KPS 30以下の定義は入院の要否に結びつけられており、現在の診療の場に合わない。 原版は1948年当時の医療を前提としており、在宅やでは入院を前提としない評価が要る。AKPSは40〜10を機能の記述(日中の50%超を、ほぼ完全に、など)へ書き換えた。KPSとAKPS・TKPSの評価が食い違うのも、最も低い水準(40以下)で多い。3

⚠️ 「100=病気の証拠なし」を文字どおりに当てはめない。 実際には、自立して症状が無ければ、がんがあってもKPS 100と評価されることが多い。治療を始めた直後はKPSが下がりやすく、評価の時期の取り方が論点になっている。でだが症状が無く常勤で働く若年患者のように、定義に収まらない例の点数も定まっていない。1

⚠️ KPSは生命力そのものを表さない。 運動野の単発の脳転移は自立度を大きく下げるが、生命予後は長いことがある。逆に、による肝不全では直前まで自立度が高くても急速に亡くなる。KPSは疾患の重さ・併存症と併せて読む。1

⚠️ QOLの尺度ではない。 主に身体面の生活の質を評価するで、QOL全体を捉えるようには設計されていない。1

まとめ

  • KPSは100〜0の11段階で、通常の活動と就労ができるか(A)、在宅で生活できるか(B)、施設・病院相当のケアが要るか(C)の3群に整理できる。
  • 2〜3問(就労できるか、が半日を超えるか、症状・介助・の程度)で段階を決められる。
  • 低いKPSは予後不良の感度の高い指標だが、高いKPSは長期生存の指標として乏しい。
  • (70など)は疾患・研究ごとに異なる。ECOG PSとの換算は大まかな目安で、個人には当てはめない。
  • 30以下は入院を前提とした古い定義で、では機能で記述するAKPSが使われる。

出典

  1. 1.Appraisal of the Karnofsky Performance Status and proposal of a simple algorithmic system for its evaluation(BMC Medical Informatics and Decision Making(Péus D, Newcomb N, Hofer S)・2013)Europe PMCの全文XML(PMC3722041)で確認した。KPSが1949年にKarnofskyとBurchenalにより書籍の一章として発表されたこと、100〜0の11段階がA(100〜80:通常の活動と就労が可能)・B(70〜50:就労不能だが在宅で身の回りの大半は可能)・C(40〜0:自分の世話ができず施設または病院相当のケアが必要)の3群に分かれ、40〜10の角括弧部分はAbernethyらの2005年の改訂であること、評価者間信頼性の既報(Yatesら0.69、Schagら0.89、Morら0.97超)と、Schagらの研究で医師の方が精神保健専門職より高い点を付けたこと、ECOG PSとの比較、2〜3問で評価する手順の提案(前向き検証は未実施)、未解決の論点(100%の意味、治療開始による低下、片麻痺で就労中の患者、評価者)を確認した。閲覧 2026-10-30
  2. 2.Karnofsky performance status revisited: reliability, validity, and guidelines(Journal of Clinical Oncology(Schag CC, Heinrich RL, Ganz PA)・1984)がん患者293例で医師がKPSを評価し、75例の部分集団で評価者間信頼性を調べた研究で、KPSの信頼性と妥当性は良好であったこと、医師の判断が誤りやすい領域があること、体重減少・体重増加・活力低下・歩行困難・運転困難・身づくろいの困難・パートタイム就労の7つの行動に基づく質問で評価を補えることを抄録で確認した。閲覧 2026-10-30
  3. 3.The Australia-modified Karnofsky Performance Status (AKPS) scale: a revised scale for contemporary palliative care clinical practice(BMC Palliative Care(Abernethy AP, Shelby-James T, Fazekas BS, et al.)・2005)Europe PMCの全文XML(PMC1308820)で確認した。原版KPSが1948年当時の医療提供体制を前提にKPS 30以下で入院を推奨する記載を含み、在宅や緩和ケアの場に合わないこと、AKPSが40〜10を機能の記述(日中の50%超を臥床、ほぼ完全に臥床、完全に臥床し大がかりな看護が必要、昏睡または覚醒がほとんど得られない)へ書き換えたこと、緩和ケア患者306例の1,600時点の評価でKPSとAKPSの一致が87%、低い水準(40以下)で不一致が最大であったこと、生存期間との相関(Spearman)がKPS 0.26であったこと、KPSは低値では予後不良の感度の高い指標だが高値では予後の指標として乏しいとされることを確認した。閲覧 2026-10-30
  4. 4.Can Karnofsky performance status be transformed to the Eastern Cooperative Oncology Group scoring scale and vice versa?(European Journal of Cancer(Verger E, Salamero M, Conill C)・1992)がん患者150例でKPSとECOG PSを比較し、両者は強く相関するが個々の患者への換算は誤差が大きく、特に全身状態の低い領域でばらつきが大きいことを抄録で確認した。閲覧 2026-10-30