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Kocher基準・Caird基準

Kocher and Caird criteria

別名
Kocher基準Caird基準Kocherの基準
臓器系
運動器小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 1-11:小児の関節痛
構成:症状
発熱非荷重
構成:検査値
赤沈白血球数CRP
適用疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)

🧠 全体像:とは、小児の急性股関節痛でとを鑑別するために作られたである。どちらも4〜5個の項目の該当数から確率を出す点は同じだが、開発された集団が違う——Kocherは外来で股関節痛を評価された小児全般、は「疑いが強く股関節穿刺に踏み切った」小児に限られる。この違いが、両者を並べたときの「0項目でも確率が全然違う」という一見矛盾した結果を生む。

目的と適用場面

内容
目的 小児の急性股関節痛におけるとの鑑別(穿刺すべきかどうかの判断補助)
対象 股関節痛を訴える小児。原著はいずれも単施設のまたは前向きコホート
使う場面 救急外来・小児整形外科外来での初期評価。穿刺というに進むかどうかの判断材料の一つ
評価しないもの 起因菌の同定、そのもの。⚠️ Kingella kingaeでは基準の的中率が大きく下がる(の該当節を参照)

構成要素と配点

(1999年原著、4項目)

該当項目数ごとのの推定確率(Kocher 1999原著)1:

該当項目数 推定確率
0 0.2%未満
1 3.0%
2 40.0%
3 93.1%
4(全項目) 99.6%

(2006年原著、5項目=Kocherの4項目+)

CairdらはKocherの4項目にCRP 2.0 mg/dL(20 mg/L)超を第5項目として加え、あわせて発熱を38.5℃超と明確に定義し直した2。

項目 基準
発熱 38.5℃超
患側での荷重が不可能
() 40 mm/hr以上
数 12,000/mm³超
2.0 mg/dL(20 mg/L)超

該当項目数ごとの推定確率は、Caird原著のが示すのは3・4・5項目の3点(83%・93%・98%)だけで、0〜2項目の値はに含まれない。2024年の総説がCaird原著の全項目を転記した表は次のとおりである3。

該当項目数 推定確率
0 16.9%
1 36.7%
2 62.4%
3 82.6%
4 93.1%
5(全項目) 97.5%

解釈とカットオフ

⭐ どちらの基準も「該当項目数が多いほど確率が上がる」というであり、単一の合否は設定されていない。 実臨床では該当数がそのまま確率の目安として扱われ、臨床的な疑いの強さと合わせて穿刺の要否を判断する材料になる。

💡 は「0項目でも16.9%」という一見おかしな数字になる理由がある。 Cairdのコホートは「を疑って股関節穿刺を行った小児53例(解析対象48例)」に限られており、すでに穿刺に踏み切った時点でのが高い2。Kocherの「0項目で0.2%未満」は外来で股関節痛の小児を一般に見ているときの数字であり、両者は母集団が異なるため単純に並べて比較できない3。

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

⚠️ は施設をまたぐと大きく落ちる。 別施設での検証では、Kocher4項目すべて該当時のは59%にとどまり、原著の99.6%を再現できなかった4。

⚠️ 除外のではない。 該当項目数が少ないことだけを根拠にを否定してはならない。では0項目でも16.9%がという報告があり、臨床的な疑いが強ければ点数にかかわらず穿刺を急ぐ判断が優先される3。

⚠️ 2つの基準の確率をそのまま比較・合算しない。 開発集団(外来一般 vs. 穿刺済みの高リスク集団)が異なるため、同じ項目数でも意味する確率が違う23。

⚠️ Kingella kingaeでは的中率がとくに低い。 詳細はの該当節を参照。

まとめ

  • は発熱の既往・・40 mm/hr以上・12,000/mm³超の4項目、はこれに 2.0 mg/dL超を加えた5項目(発熱は38.5℃超と定義)。
  • いずれも該当項目数が増えるほどの推定確率が上がるで、単一の点は無い。
  • の「0項目で16.9%」は、すでに穿刺に踏み切るほど疑いが強い集団を対象にしたための高いであり、Kocherの一般外来集団の数字と直接比較できない。
  • は低く、別施設の検証では4項目該当時の確率が99.6%から59%へ落ちた。
  • 穿刺へ背中を押す側のであり、除外のとして使ってはならない。

出典

  1. 1.Differentiating between septic arthritis and transient synovitis of the hip in children: an evidence-based clinical prediction algorithm(The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume・1999)抄録で確認した。単一の三次小児病院で1979〜1996年に急性の股関節痛で評価された小児を後方視的に検討し、多変量解析で独立した4予測因子(発熱の既往・非荷重・赤沈40 mm/hr以上・末梢血白血球数12,000/mm³超)を同定した。16通りの組み合わせについて算出した化膿性関節炎の予測確率は、0項目で0.2%未満、1項目3.0%、2項目40.0%、3項目93.1%、4項目99.6%である。赤沈の閾値は原文が「at least forty millimeters per hour」であり40を含む。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Factors distinguishing septic arthritis from transient synovitis of the hip in children. A prospective study(The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume・2006)抄録で確認した(全文は取得できず。Unpaywallでoa_statusがclosedかつリポジトリ版なし)。4年間に化膿性関節炎を疑って股関節穿刺を行った小児全53例を前向きに集め、組入れ基準を満たした48例で解析した。CRP 2.0 mg/dL(20 mg/L)超を独立した強い危険因子とし、最良の予測因子は口腔温38.5℃超の発熱、次いでCRP高値・赤沈高値・荷重拒否・末梢血白血球数高値であった。5項目該当で98%、4項目で93%、3項目で83%の確率と報告している。抄録は0〜2項目の確率を示していない。閲覧 2026-09-07
  3. 3.The Kocher-Caird Criteria for Pediatric Septic Arthritis of the Hip: Time for a Change in the Kingella Era?(Microorganisms・2024)全文で確認した。Caird基準の予測確率を原著から転記した総説で、0項目16.9%・1項目36.7%・2項目62.4%・3項目82.6%・4項目93.1%・5項目97.5%と記し、「0項目でも16.9%であることは予測因子の正確さに疑問を投げかける」と評している。閲覧 2026-09-07
  4. 4.Differentiation between septic arthritis and transient synovitis of the hip in children with clinical prediction algorithms(The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume・2004)抄録で確認した。別施設で1992〜2000年に股関節穿刺を受けた163例・165股関節(真の化膿性関節炎20股・推定化膿性関節炎27股・一過性滑膜炎118股)にKocherの4項目を後方視的に適用したところ、4項目すべて該当時の予測確率は59%で、原著の99.6%を再現できなかった。閲覧 2026-09-07