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Symptoms · Published

尾骨痛

Coccydynia

別名
尾骨部痛coccygodynia
臓器系
運動器神経
科目
AnatomyEmbryology
トピック
解剖学 4.6:骨盤・会陰:神経解剖学 4.1:骨盤・会陰:骨と関節発生学 5.5:第3週(三層性胚盤・原腸形成):臨床
関連疾患
脊索腫

🧠 全体像の診療は、まず「痛みの局在が本当に部に一致するか」を確認することから始まる。痛や部痛、非特異的なと混同されやすいが、座位、とくに座位からの動作で増悪するという特徴がに特異的である。局在が確認できたら、大半を占める・機能性の良性病態と、まれだが見逃せない腫瘍性・感染性の病態を切り分ける。そのものの可動性異常(過可動・過小可動)が原因検索の中心になる一方、と単純X線という侵襲の小さい手技で診断の大半が完結し、多くは保存的治療で軽快する。

定義と用語の整理

(coccydynia、部痛)は、から先端までの部に限局する疼痛を指す。特徴的なのは座位、とくに長時間の座位や座位からの動作での増悪であり、立位や歩行では軽快することが多い。触診ではそのものへの限局した圧痛を確認できる。女性に多く、骨盤の形状やの後方突出がその一因とされる。肥満と痩せの両極端の体格、分娩や転倒による外傷が誘因になる。

この局在と増悪パターンを、隣接する部位の痛みと混同しないことが最初の関門になる。

部位 増悪因子 特徴
部( 座位、座位からの そのものへの限局した圧痛
荷重・姿勢全般 より広い範囲の圧痛、由来のこともある
座位(より外側で疼痛) ハムなどとの鑑別を要する
全般( 体幹の・動作全般 に限局しない。赤旗の評価はに準じる

病態生理

との間で)を形成し、通常は座位でがわずかにする程度の可動性を持つ(解剖学 4.1)。の多くは、この可動性が病的に振れることで生じる。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccydynia'>尾骨痛</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span>"]
  A --> C["非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span>"]
  A --> D["特発性"]
  A --> E["二次性"]
  B --> B1["転倒・尻もちによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contusion (blunt injury)'>打撲</span>・骨折"]
  B --> B2["分娩に伴う外傷"]
  C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sacrococcygeal joint'>仙尾関節</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hypercompliance'>過可動性</span><br>(不安定性)"]
  C --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sacrococcygeal joint'>仙尾関節</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypomobility'>過小可動性</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankylosis'>強直</span>)"]
  C --> C3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccyx'>尾骨</span>の前方<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>・骨棘"]
  E --> E1["腫瘍<br>(原発・浸潤・転移)"]
  E --> E2["感染"]
  E --> E3["他部位からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='referred pain'>関連痛</span>"]

💡 座位では体重がに分散して支持される。が過可動であれば座位のたびに異常なが加わり、逆に過小可動()であればクッションとなるはずの動きが失われて衝撃が関節に直接伝わる。可動性異常の方向が逆でも、結果として座位負荷が痛みを生む点は共通する。

部と肛門部の皮膚感覚は(S4、S5、Co1)が担う。とは別のこの小さな神経叢が周囲に限局した知覚を伝えるため、部への限局した外傷・炎症がそのまま限局した疼痛としてされやすい(解剖学 4.6)。

⚠️ 見逃してはいけない病態

⚠️ ・骨盤内の腫瘍の遺残から生じるまれな腫瘍で、頭蓋底とならびがもう一つの好発部位である(発生学 5.5)。で診断が遅れやすい。大腸癌の後方浸潤や、他臓器からのも鑑別に入る。の存在、体重減少、進行性の増悪は、保存的治療で軽快する典型的なとは異なり、画像評価を急ぐべき所見である。

⚠️ 感染上部に生じる慢性の炎症性疾患で、部の疼痛・腫脹・排膿を来しと紛れることがある。や、外傷・手術後の骨髄炎も念頭に置く。発赤・腫脹・発熱を伴う急性の経過は、機械的なの緩徐な経過と対照的である。

⚠️ 外傷後骨折:明確な転倒・の後に生じた急性のは、単純X線で骨折の有無を確認する。単純X線で判定が難しければCTやMRIを追加する。

⚠️ を示唆する所見:会陰部の、膀胱・直腸機能障害(尿閉・)を伴う場合は、局所の病変にとどまらない緊急事態を疑う。局所の圧痛のみに注目せず、必ず会陰部の感覚と括約筋機能を確認する。

鑑別の進め方

flowchart TD
  A["座位で増悪する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccyx'>尾骨</span>部の限局痛"] --> B["外傷歴・分娩歴を確認"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red-flag findings'>赤旗所見</span>の有無を確認<br>体重減少・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='night pain (nocturnal pain)'>夜間痛</span>・進行性増悪<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='saddle sensory disturbance'>サドル型感覚障害</span>・膀胱直腸障害"]
  C -->|"あり"| D["画像評価を急ぐ<br>MRI等で腫瘍・感染・神経病変を検索"]
  C -->|"なし"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digital rectal examination, DRE'>直腸診</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccyx'>尾骨</span>の可動性と圧痛を確認"]
  E --> F["単純X線<br>側面、座位・立位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dynamic radiography'>動態撮影</span>"]
  F --> G{"過可動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dislocation'>脱臼</span>・骨折を認めるか"}
  G -->|"認める"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>に基づく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccydynia'>尾骨痛</span>として対応"]
  G -->|"認めない"| I["特発性・軟部組織由来として保存的治療へ"]

は、を体外と直腸内の両側から挟んで可動性と圧痛を直接評価できる唯一の手技であり、だけでは得られない情報を与える。単純X線は側面像を基本とし、座位と立位の両方で撮影するによって、安静時には分からないを捉えられる。診断に迷う場合やを伴う場合に限りMRIを追加する。

対応の考え方

大半のは保存的治療で軽快する。中央に穴の開いたクッションやウェッジ型クッションで部への直接荷重を避け、座位姿勢の指導、NSAIDsによる鎮痛、便秘があれば便通調整を行う。としてや姿勢筋の調整を行うこともある。

保存的治療で軽快しない遷延例では、周囲への局所ステロイド・の注射や、を標的としたを検討する。

は、上記の保存的治療・注射療法を尽くしても症状が遷延する難治例に限る最終手段である。感染やといった合併症のリスクがあり、術後の症状改善も一律には得られないため、実施前に患者へこれらを十分説明する必要がある。

まとめ

  • から先端に限局し、座位・座位からので増悪する疼痛で、痛とは局在で区別する。
  • 女性に多く、肥満・痩せの両極端の体格、分娩や転倒による外傷が誘因になる。
  • 原因は、非の過可動・過小可動、前方、骨棘)、特発性、二次性(腫瘍・感染・)に整理できる。
  • 見逃してはいけないのはの腫瘍(・大腸癌の後方浸潤・)、感染(・骨髄炎)、外傷後骨折、を示唆する所見である。
  • (S4・S5・Co1)が周囲と肛門部の皮膚感覚を担うため、限局した外傷・炎症が限局した痛みとしてされやすい。
  • 診断は→単純X線()→必要時MRIの順に進める。大半は保存的治療で軽快し、は難治例に限る最終手段である。