解剖学

解剖学 · 2.2

胸部:筋と筋膜(胸壁)

Thorax — Muscles & fascia (wall)

応用トピック
呼吸理学療法、呼吸リハビリテーション、緩和ケア
疾患
横隔膜機能不全
画像所見
横隔膜超音波

🧠 胸壁の筋は「肋間を埋める3層」と「底を張る横隔膜」で読む。 は外・内・最内の3層で、腹壁の3層筋に対応する。その最深部の・血管が走る面が臨床の要になる。呼吸の主役は横隔膜で、その3つの開口を通る構造は必ず問われる。

肋間筋の3層

は3層の筋で埋められる。外側から順に外・内・で、線維の走向が異なる。

筋 線維の走向 主な作用
後上→前下(手をポケットに入れる向き) 主に吸気性だが、作用は・共同収縮で変化
前上→後下(と直交) 傍胸骨部は吸気性、骨間部の作用はで変化
と同方向 呼吸補助

との間を、・血管が走る()。内の肋骨への作用は、単純な「外=挙上、内=」ではなく、によっても変化する。1

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intercostal space'>肋間隙</span>(浅→深)"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='external intercostal muscle'>外肋間筋</span>"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal intercostal'>内肋間筋</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurovascular bundle'>神経血管束</span><br>(静脈・動脈・神経=VAN)"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='innermost intercostal'>最内肋間筋</span>"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothoracic fascia'>胸内筋膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal pleura'>壁側胸膜</span>"]

⭐ 主血管束は肋骨下縁の溝を走る(上からVAN)。 肋骨の下縁に沿って、典型的には上から静脈・動脈・神経の順に並ぶ。では主束を避けるため肋骨の上縁寄りを選ぶが、束の配列・走行変異や上縁に近づく側副枝があるため、上縁なら必ず安全という意味ではない。2

その他の胸壁筋

以外にも、胸壁の内面・下面を補う小さな筋がある。

筋 位置・作用
胸壁内面後部。数肋骨をまたぐ
胸骨内面からへ。呼気補助

呼吸補助筋

は横隔膜が主だが、努力呼吸では他の筋が動員される。

  • 吸気補助: 、、、。
  • 呼気補助: (内圧上昇で横隔膜を押し上げる)、、。

横隔膜

横隔膜は胸腔と腹腔を隔てる状の筋で、呼吸の主役である。周辺部(胸骨部・肋骨部・部)から起こり、中央のへ集まる。収縮するとが下がり、胸腔が拡大して吸気が起こる。支配は(C3–C5)である。

💡 「C3, 4, 5 keep the diaphragm alive」。 は解剖学的には主にC4、加えてC3・C5からなる由来。ただし機能的運動支配ではC4が中核で、各神経根の寄与は対等ではない。3の運動支配が損なわれる損傷では、により自発呼吸が困難になりうる。横隔膜刺激時のが肩(C3–C5)に出るのもこの由来。

横隔膜の3つの開口

横隔膜を貫く主要構造は、高さと通過構造をセットで覚える。

開口 高さ 通過構造
T8 下大静脈、右枝
T10 食道、迷走神経前・後幹
T12 、、

💡 開口の高さは「T8・T10・T12」で覚える。 語呂は「大静脈 = 8文字、esophagus = 10、 = 12」。は横隔膜の後方にあり、実際には筋を貫かず後ろを通る(大動脈が圧迫されない構造)。

胸壁の筋膜

胸壁の内面はで裏打ちされ、その内側にが接する。は胸膜を胸壁から剥がす面(外科的剥離面)になる。

まとめ

  • は外・内・の3層で埋められる。
  • は内・の間を典型的にV-A-Nの順で走る。穿刺は主束を避けて寄りを選ぶが、走行変異や側副枝にも注意する。
  • ・が胸壁内面を補い、努力呼吸では補助筋が動員される。
  • 横隔膜は呼吸の主役で、(C3–C5、機能的にはC4が中核)支配。
  • 3つの開口は(T8)・(T10)・(T12)。
  • が胸壁内面を裏打ちし、外科的剥離面になる。

出典

  1. 1.Mechanics of intercostal space and actions of external and internal intercostal muscles(The Journal of Clinical Investigation・1985)外肋間筋と骨間部内肋間筋の肋骨への作用は固定的ではなく肺気量に依存すること閲覧 2026-08-24
  2. 2.Clinically relevant anatomical variations in posterior intercostal neurovascular bundle(Folia Morphologica・2025)肋間神経血管束の配列・走行に変異があり、側副肋間神経が下位肋骨上縁へ達しうること閲覧 2026-08-24
  3. 3.Cervical nerve root contribution to diaphragm motor innervation revisited via intraoperative clinical and neurophysiological observations(Clinical Neurophysiology・2026)横隔膜の機能的運動支配ではC4が中心であり、術中刺激ではC5の機能的寄与が確認されなかったこと閲覧 2026-08-24