Biochemistry

Biochemistry · 4/4

乳酸アシドーシス

Lactic acidosis (Midterm 1) — S I

検査値
乳酸アシドーシス

🧠 は「ピルビン酸の行き場がなくなり、乳酸に溜まる」病態、と読む。 乳酸を作る反応はによるピルビン酸のNADH依存的還元だけ。だからピルビン酸が蓄積する状況の障害=PDC欠損、の障害=PC欠損、低酸素、NADH/NAD⁺上昇)で乳酸が溜まる。(PDC・PC欠損)が代表例。

乳酸の産生と除去

  • 乳酸は主に赤血球・腎髄質・で生じる。
  • 生成反応はただ一つ:LDHによるピルビン酸のNADH依存的還元(pyruvate + NADH → lactate + NAD⁺)。除去も同じ反応の逆行。
  • 生じた乳酸の大半は肝が取り込み、糖新生()または酸化に使う。

ピルビン酸が溜まれば乳酸も溜まる。 乳酸とピルビン酸はLDHで平衡。ピルビン酸の利用経路(酸化 or )が詰まるとピルビン酸が蓄積し、平衡が乳酸側に傾いてになる。

ピルビン酸の運命

flowchart TD
  A["ピルビン酸"]
  A --> B["乳酸(LDH、NADH依存)"]
  A --> C["アセチルCoA(PDH)→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='citric acid cycle (TCA cycle)'>クエン酸回路</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory chain'>呼吸鎖</span>(酸化)"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxaloacetate'>オキサロ酢酸</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyruvate carboxylase'>ピルビン酸カルボキシラーゼ</span> PC)→ 糖新生(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anabolic'>同化</span>)"]
  A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ALT'>アラニン</span>"]
  A --> F["PEP(PEPCK)"]

いずれかの利用経路の障害でピルビン酸・乳酸が蓄積する。を起こしうる。

PDC欠損

の最多原因。PDCはE1()・E2()・E3(ジヒドロリポアミド脱水素酵素)の3酵素と5つの補因子(TPP/B1・・CoA/B5・FAD/B2・NAD/B3)からなる。

⚠️ 脳が最も障害される。 脳は通常グルコースの酸化(解糖+)でほぼ全ATPを作るため、PDCでのピルビン酸酸化が止まるとATP欠乏・脳障害を起こす。予後は「死ぬなら早い、越えれば長い」という形をとる。 スウェーデンの全国コホート(54例)では死亡率は5歳時点で15.1%、そこから40歳まで変わらず、死亡例はすべて乳児期早期に集中していた(死亡時年齢の中央値30日、範囲3日〜2歳)。X連鎖のPDHA1変異では男児42.9%・女児3.4%と性差が大きい1。軽度欠損ではアセチルCoA↓→アセチルコリン合成↓で

💡 E3欠損は複数の複合体に波及。 E3(ジヒドロリポアミド脱水素酵素)はPDCだけでなくにも共通する。だから1遺伝子(E3)の欠損で複数酵素活性が同時に低下しうる。治療として投与がした例がある。

  • : を阻害しPDHを活性化 → 一部のに有効。
  • が悪化させる場合: E1欠損ではが有効なことがあるが、他の欠損型では逆に悪化しうる(ピルビン酸供給が変わるため)。

PC欠損

はミトコンドリアの4量体で、各サブユニットに共有結合したをもち、アセチルCoAが(ほぼ必須)。糖新生の最初の酵素であり、も担う。

重症度
A型 残存活性あり。軽〜中等度の
B型 活性ゼロ(CRM陰性が多い)。重症・シトルリン/リジン上昇。3か月未満で死亡が多い

⚠️ PC欠損は「OAA・の枯渇」で多彩な障害を起こす。 OAAが作れないと、①糖新生不能(低血糖・乳酸↑)、②の障害(不足→高アンモニア)、③ミトコンドリア/細胞質ののずれ、④のPCが神経の栄養供給に必須で、欠損で神経が障害される。

ビオチン依存性カルボキシラーゼ

ヒトののリサイクルを妨げ、これら全カルボキシラーゼ活性を下げる(複合カルボキシラーゼ欠損 multiple carboxylase deficiency)。

まとめ

  • 乳酸はLDHによるピルビン酸還元でのみ生成。ピルビン酸が蓄積する状況でになる。
  • ピルビン酸の運命は乳酸・アセチルCoA(酸化)・OAA()・・PEP。
  • PDC欠損が最多。脳が最も障害される。E3欠損は複数の複合体に波及。はPDHを活性化。
  • PC欠損はOAA・枯渇で低血糖・高アンモニア・依存でアセチルCoA活性化。
  • は全依存カルボキシラーゼを障害する。

出典

  1. 1.A Nationwide Study of Pyruvate Dehydrogenase Complex Deficiency in Sweden: Epidemiology, Genotype–Phenotype Correlations, and Survival(Neurology・2026)PDC欠損の生存。全体の累積死亡率は5歳時15.1%で40歳まで不変、PDHA1では男児42.9%・女児3.4%、死亡例の年齢中央値は30日閲覧 2026-08-03