Biochemistry

Biochemistry · 5/8

コレステロールの代謝;血中コレステロール輸送

Metabolism of cholesterol; cholesterol transport in the circulation — L I

応用トピック
血漿中トリグリセリドとコレステロールの測定糖質代謝異常の血糖管理・肥満・脂質異常症脂質異常症

🧠 は「合成()と取り込み(LDL受容体、LDL receptor)を、細胞内コレステロール自身がSREBP-SCAP-INSIG系で感知してする」として読む。 コレステロールが多ければ合成を止め受容体を減らし、少なければ逆。この回路の各・LDL受容体・PCSK9)が、スタチンからまで現代のの標的になっている。

体内コレステロールの分布と収支

成人(体重70 kg)の体内コレステロールは総量約140 g

分布
細胞膜 約120 g
血漿 約10 g
内訳(1日あたり)
供給(約1.5 g/日) 肝合成0.5 g+合成0.5 g+食事摂取0.5 g
喪失(約1.5 g/日) 胆汁酸としての排泄0.5 g+胆汁中0.5 g+上皮の0.5 g

💡 食事コレステロールの影響は限定的。 の人とベジタリアンで血漿に大差はなく(約5.4 vs 5.1 mmol/L)、体内合成が主要な供給源であることを示す。

コレステロールの腸管吸収と体内の輸送

(CE)が加水分解され、(FC)がNPC1L1輸送体で取り込まれる(阻害薬:)。内でACAT2(肝ではACAT1がマクロファージ、ACAT2が腸・肝)によりCEにされ、としてリンパへ分泌される(05-03-overview-of-lipid-metabolism-absorption-of-lipids-metabolism-of)。

  • ・VLDL・LDL・HDLを介した「コレステロール輸送」の全体像は、とリポタンパク形成の類似性(両方ともが包む)として理解できる。
  • LDL構造: コア(約500分子の)を、表面リン脂質・(約800分子相当の成分、outer shell component)が包む。

コレステロール生合成— HMG-CoA還元酵素

の初期段階・、endoplasmic reticulum membraneに局在)。

は動脈硬化・・炎症の「」。 この酵素の活性は複数のレベルで制御される(下記SREBP経路・転写後制御、post-transcriptional regulation)ため、コレステロール合成経路は代謝・シグナル伝達・が交差する要になる。スタチンはこの酵素をに阻害する代表的

細胞内コレステロールセンサー:SREBP-SCAP-INSIG系

細胞内コレステロール濃度をセンスし、合成・取り込み関連遺伝子の転写を調節する中心的な仕組み。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoplasmic reticulum membrane'>小胞体膜</span>のSCAPがSREBPと複合体形成"]
  A --> B{"細胞内コレステロール高値?"}
  B -->|"高い"| C["コレステロールがSCAPのセンサードメインに結合<br>SCAP-INSIG結合が安定化"]
  C --> D["SREBP-SCAP複合体は小胞体に留まる(不活性)"]
  B -->|"低い"| E["SCAP-INSIG結合が外れる"]
  E --> F["SREBP-SCAPが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Golgi apparatus'>ゴルジ体</span>へ移動、SREBPが切断・活性化"]
  F --> G["核へ移行 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='HMG-CoA reductase'>HMG-CoA還元酵素</span>・LDL受容体などの転写を誘導"]
  • コレステロールはSCAPのL1-L7ドメイン間相互作用を妨げ、酸化ステロール(、oxysterol)はINSIG-SCAP結合を助ける(似たコレステロールセンサードメインが複数のタンパクに共通して存在)。
  • インスリンもSREBP-1c系に作用し、脂質合成(コレステロール・脂肪酸両方)を促進する(05-07-synthesis-of-fatty-acids-biosynthesis-of-triacylglycerol-andのSREBP-1cと同系統)。

LDL受容体の分解制御

コレステロール取り込みの主要経路であるLDL受容体(LR)の量は、分解の制御でも調節される。

因子 働き
PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9) LDL受容体に結合し、リソソームでの分解を促進 → 受容体数を減らす
IDOL(inducible degrader of the LDL receptor) 同じくLDL受容体分解を誘導する経路

PCSK9阻害はLDL受容体を「守る」ことで血中LDLを下げる。 PCSK9を阻害すると(抗体薬 antibody drug・siRNA)、LDL受容体の分解が減り細胞表面の受容体数が増え、血中LDLコレステロールの取り込みが促進される。LDL-と相関する。

細胞内コレステロールキャリアと貯蔵

血中から取り込んだコレステロール+小胞体で新規合成されたコレステロールが、を決める。過剰分はACAT(acyl-CoA:cholesterol acyltransferase)によりに変換され、として貯蔵される。細胞内輸送体(StARなど)が拡散的な移動を補助する。

HDLの形成と逆コレステロール輸送

末梢組織の余剰コレステロールを肝へ戻す経路がHDLを介した

flowchart TD
  A["末梢細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free cholesterol'>遊離コレステロール</span>"]
  A --> B["ABCA1(ATP依存輸送体)がapoA-Iへコレステロール・リン脂質を転送"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nascent HDL'>ナセントHDL</span>形成<br>(例:3 apoA-I + 100コレステロール + 115<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lecithin'>レシチン</span> + 25<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sphingomyelin'>スフィンゴミエリン</span>)"]
  C --> D["LCAT(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lecithin'>レシチン</span>-コレステロールアシルトランスフェラーゼ)がコレステロールを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esterification'>エステル化</span>"]
  D --> E["成熟HDL(コア内にCE蓄積)"]
  E --> F["肝へ(SR-BI経由)またはCETPでVLDL/LDLへCE転送"]
  • : apoA-IをにABCA1がコレステロール・リン脂質を供与して形成される粒子。
  • LCAT: 表面のしコアに格納、の成熟HDLになる。

胆汁酸・胆汁への排泄

コレステロールの最終的な処分経路は胆汁酸への変換と胆汁中への直接排泄(詳細は05-09-biosynthesis-and-metabolism-of-bile-acids-importance-in-lipid-digestion)。LXR(FXR(がこの排泄経路と胆汁酸再吸収を協調的に調節する。

miR-33aによる調節

SREBP-2遺伝子内にコードされるmiR-33aは、ABCA1(、cholesterol efflux)の発現を抑制する形で、コレステロール合成と排出のバランスを取る(コレステロール欠乏時に合成を優先し排出を抑える)。

薬理学的標的

標的 薬剤 機序
スタチン 、合成抑制
NPC1L1
PCSK9 抗PCSK9抗体、siRNA(inclisiran/Leqvio) LDL受容体分解を防ぎ受容体数を増やす
MTP /VLDL形成阻害
apoB-100 (ミポメルセン/Kynamro、肝毒性のため2019年に米国で販売中止) apoB-100産生抑制

まとめ

  • 体内コレステロールは約140 g、1日約1.5 gが合成・吸収され同量が排泄される。食事コレステロールの寄与は限定的。
  • はNPC1L1(標的)、律速合成酵素は(スタチン標的)。
  • SREBP-SCAP-INSIG系が細胞内コレステロールをセンスし、合成・の転写をする。
  • PCSK9・IDOLがLDL受容体の分解を促進し血中LDLを増やす。はこれを防ぐ。
  • ABCA1がapoA-Iにコレステロールを供与しを形成、LCATがして成熟させる
  • miR-33aはABCA1発現を抑え合成・排出のバランスを取る。