Biochemistry

Biochemistry · 7/4

アミノ酸の分解:炭素骨格の運命;アミノ酸代謝におけるビタミンの役割

Degradation of amino acids: fate of the carbon skeleton; role of vitamins in amino acid metabolism — L II

応用トピック
新生児・遺伝学的スクリーニングと予防先天代謝異常症
薬剤
ビタミンB6ベタイン
検査値
ホモシステインメチオニン

🧠 アミノ酸のは「最終的にの7つの入口のどれかに合流する」と読み、かはその入口で決まる。 ビタミンはこの過程の随所でとして働く:葉酸は1の運搬、B12は代謝、B6は。BCAA代謝異常とB12/葉酸欠損()が臨床的ハイライト。

糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸

のどの中間体(またはピルビン酸)に合流するかで、糖新生に使えるか()、アセチルCoA/アセトアセチルCoAにしかならないか()が決まる。

分類 入口 代表アミノ酸
(大多数) ピルビン酸、、α- Ala, Gly, Ser, Asp, Glu, Argなど大半
(2つのみ) アセチルCoA/アセトアセチルCoAのみ Leu, Lys
両方( 一部が入口、一部がアセチルCoA Ile, Phe, Tyr, Trp, Thr

1炭素単位の転移:葉酸系

多くのアミノ酸代謝反応で、1つのなど)の受け渡しが必要になる。この運搬を担うのが

セリンが1の主要な供給源。 が、セリンのをTHFに渡してグリシン+N5,N10-メチレンTHFを作る。この反応が細胞内の1炭素プールを支える中心的な入口。

  • THF誘導体(N5-メチルTHF、N5,N10-メチレンTHF、N10-ホルミルTHFなど)は、相互変換されながらなどに1を供給する。

グリシンの直接脱アミノ化:グリシン開裂系

グリシンは、(複合酵素、・THF・FAD・PLPを補因子とする)により直接分解され、CO₂・NH₃・N5,N10-メチレンTHFを生じる。

ヒスチジン・スレオニンの代謝

  • : 分解の一部でグルタミン酸へ合流するとともに、1(ホルムイミノ基 formimino group)をTHFへ供与する(、葉酸欠乏の診断に使われる histidine loading test の基盤)。
  • : 複数の経路で分解されうる複雑な代謝(グリシンやアセチルCoA、などに至る)。

葉酸・コバラミン(B12)・B6の相互関係

3つのビタミンは、独立した経路でありながら密接にリンクする。

flowchart TD
  A["N5,N10-メチレンTHF"]
  A --> B["N5-メチルTHF(還元、ほぼ不可逆)"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine synthase'>メチオニン合成酵素</span>(B12依存):<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span> + N5-メチルTHF → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span> + THF"]
  C --> D["THF再生 → 葉酸プール回復"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span> → SAM(メチル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='donor'>供与体</span>)"]

⚠️ 」がB12欠乏で葉酸欠乏症状を起こす機序。 N5-メチルTHFへの還元はほぼ不可逆で、そこから抜け出すにはB12依存性の反応()が必須。B12が欠乏するとN5-メチルTHFの形で葉酸が「トラップ」され、他の葉酸依存反応(プリン・)に使えなくなる。これがB12欠乏がしばしば葉酸欠乏様のを起こす理由。

高ホモシステイン血症

原因は主に3つ。

原因 機序
MTHFR熱不安定変異体 N5,N10-メチレンTHF還元酵素の活性低下
B12・葉酸(B9)欠乏
(B6欠乏) (→システイン)の障害

⚠️ は血管障害のリスク因子。 代謝の停滞によりが蓄積し、に関連するとされる。

分岐鎖アミノ酸の分解とMSUD

の分解は、共通の最終段階として(B12依存のが触媒)に収束する(詳細は07-05-vitamin-b12-deficiency-and-methylmalonic-acidemias-s-ii)。

BCAA(:Val, Ile, Leu)の分解は共通の(PDH・KGDHCと同族の複合体)が担う。

⚠️ はBCKDC欠損。 BCAA由来のα-ケト酸が蓄積し、尿・汗にメープルシロップ様の甘い臭いを呈する。未治療では重篤な神経障害を来す。

プロピオニルCoA・メチルマロニルCoAの毒性

Val・Ile・Thr・Metの分解終末段階で生じるの代謝異常(酵素欠損)は、低血糖・(ketoacidosis;ケトン体によらない)・を来しうる。

グルタミン・グルタミン酸:「オールラウンド化合物」

グルタミン酸・グルタミンは、の受け渡し・貯蔵の中枢的存在。

  • の約25%、遊離アミノ酸の約60%をグルタミンが占める(体内で最も豊富な遊離アミノ酸)。
  • の主要なエネルギー源としても利用される。
  • がん細胞(例: melanoma)が好むアミノ酸でもあり、でグルタミン依存性が注目される(15-01-molecules-of-central-importance-and-drug-targets-of-proliferationと関連)。
  • アンモニアの一時的な「無毒化・運搬形」としての役割(グルタミン酸+NH₃→グルタミン)は07-03-elimination-of-ammonia-s-ii分業と直結する。

プロリン・オルニチン・アルギニン・ヒスチジンの相互関係

これらのアミノ酸は代謝的に相互に変換しうる関連ファミリーを形成する(/を介した相互変換)。

⚠️ の病態機序に関連。 →コラーゲンという経路が、の角膜変形の病態機序として提案されている(合成酵素が関与)。

まとめ

  • アミノ酸のの入口(ピルビン酸・OAA・αKG・)またはアセチルCoAに合流し、/が決まる(Leu・Lysのみ純)。
  • セリンが1(THF系)の主要供給源。代謝もTHFに関わる。
  • B12依存性がN5-メチルTHFから葉酸を「解放」する。B12欠乏はで葉酸欠乏様症状を起こす。
  • はMTHFR変異・B12/葉酸欠乏で起こり血管障害リスクとなる。
  • BCKDC欠損はMSUD。Val/Ile/Thr/Metの終末代謝は(B12依存)に収束する。
  • グルタミン/グルタミン酸は代謝の中枢で、体内最多の遊離アミノ酸かつがん細胞の好む燃料でもある。