組織学

組織学 · 2.1

上皮組織・腺:分類

Epithelial tissue — Classification

🧠 上皮の分類は「層の数(単層か重層か)×細胞の形(扁平・立方・円柱)」の掛け算で決まる、と機械的に覚える。 層数は「守る力(重層=摩擦に強い)」、細胞の形は「その上皮の主な仕事(扁平=拡散・立方円柱=分泌吸収)」を反映する——分類名から機能をできるようになるのが理解の到達点。

上皮組織の基本的特徴

は多角形の細胞が密に隙間なく接着した細胞シートで、体表・体腔の内外表面を覆う。

  • ()はごく少量
  • 細胞同士が強く接着し、の構造を作る
  • ——栄養は下層の結合組織(, lamina propria)の血管から拡散して供給される
  • 極性をもつ:結合組織側を向く、反対側の(通常は管腔・体外に面する)
  • 基底面は基底膜(02-4-basement-membrane)に接する
上皮の主な機能 具体例
被覆・保護 皮膚(08-1-epidermis)
吸収 (09-5-small-intestine)
分泌 腺上皮細胞(02-5-glands)
収縮
感覚 など高度にした感覚細胞

💡 上皮に乳頭が突出している部位(表皮真皮境界など)は、結合組織と上皮の接触面積を増やすことで摩擦に強い部位を補強する構造——摩擦を受けやすい上皮ほどの凹凸が発達する、という原則で覚えるとよい。

単層上皮:層数1

すべての細胞が基底膜に接し、1層に並ぶ。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple epithelia'>単層上皮</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple squamous'>単層扁平上皮</span>:拡散・濾過"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple cuboidal'>単層立方上皮</span>:分泌・吸収・導管"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple columnar'>単層円柱上皮</span>:吸収・分泌"]
  A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudostratified columnar epithelium'>多列上皮</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple columnar'>単層円柱上皮</span>の一種"]
種類 形態的特徴 代表的な分布
扁平な細胞・扁平な核 肺胞(内皮・・心内膜)
高さ=幅、円形核 唾液腺・肝臓・膵臓の小導管、腎尿細管
高さ>幅、垂直に伸びた核、・などの頂端特殊構造をもつことが多い 小腸・胃・胆嚢
全細胞が基底膜に接するが高さが不揃いで重層に見える 気道(11-1-conducting-portion)

⭐ を真のと区別する2つの決め手:①は核が基底寄り2/3に偏る極性をもつ、②真のには存在しない。気道のはで粘液を咽頭側へ運び出す(が粘液を分泌)。

重層上皮:層数2以上

層ごとに細胞の形が異なり、基底層のみが基底膜に接する。

種類 特徴 代表的な分布
立の基底層〜扁平な表層 角化型=表皮(08-1-epidermis、手掌・足底で最も厚い=)/非角化型=口腔・咽頭・食道・膣・
2〜3層の 大型の導管(唾液腺など)
まれ、表層が 、の一部の導管
伸展の程度で層厚・細胞形が可変 尿路(12-2-excretory-passages)

⚠️ は「非伸展時=4〜5層で立の+大型の(時に2核)」「伸展時=2〜3層に薄くなりが」という同じ上皮が状態によって見え方を変える唯一の例——の尿路にのみ存在し、尿の毒性に対するバリアとしてしている。

💡 「」は現在ではと呼ぶのが一般的で、はアンブレラ細胞とも呼ばれる。 「移行」という名は、かつてこの上皮がと円柱上皮の“移行型”だと考えられた頃のの名残であり、実際には尿路に固有の一系統である(腫瘍側でも「癌」より「」が用いられる)。伸展で厚さが変わる仕組みには分子的な裏づけがあり、のと細胞質内の小胞はウロプラキンIa・Ib・II・IIIの4種のが作る二次元結晶(板状構造)で覆われていて、膀胱が伸展するとこの小胞がへ融合し、膜面積が増えて細胞がする1。

⭐ のバリアは「だけ」ではない。 ウロプラキンIII欠損マウスでは経上皮電気抵抗(=のバリア)は正常のまま(正常2,024±122/欠損2,322±114 Ω·cm²)だが、の水透過性は約2倍(0.91±0.06→1.83±0.14 ×10⁻⁵ cm/s)に上がる2。細胞間隙を塞ぐと、そのものを通しにくくするウロプラキン板の二重構えでバリアが成り立っている。

上皮が入れ替わる現象:化生

な刺激にさらされ続けた上皮は、もともとの種類のまま耐え続けるのではなく、より刺激に強い別の種類の上皮へとまるごと置き換わってしまうことがある。この現象は化生と呼ばれ、例えば喫煙者の気道では、本来線毛をもつ円柱上皮であった部分が、摩擦に強い扁平上皮へと置き換わっていくことが知られている。置き換わった上皮は刺激には強くなる一方で、線毛による異物の排出のような、もとの上皮がもっていた働きを失ってしまう。さらに、この置き換わりが進む過程では細胞の秩序が乱れやすく、長期的にはがん化の足がかりになりうる点が、単なる適応にとどまらない臨床的な重みをもつ理由になっている。

まとめ

  • 上皮の分類は層数(単層/重層//移行)と細胞形態(扁平/立方/円柱)の組み合わせで決まる。
  • =拡散、=分泌・吸収の導管、=吸収・分泌という機能対応がある。
  • はの一種で、全細胞が基底膜に接するが高さが不揃いに見える。
  • は摩擦に強く、角化型(皮膚)と非角化型(口腔・食道など)に分かれる。
  • (現在の呼称は)は尿路特有で、伸展度に応じて層厚・細胞形態が可逆的に変化する。のを覆うウロプラキン板と小胞の融合がその形態変化との実体で、バリアはとウロプラキン板の二重構えで成り立つ。
  • 慢性刺激により上皮が別の種類に置き換わる化生は、刺激への耐性を高める一方でもとの機能を失い、がん化の足がかりにもなりうる。

出典

  1. 1.Specific heterodimer formation is a prerequisite for uroplakins to exit from the endoplasmic reticulum(Molecular Biology of the Cell・2002)尿路上皮の被蓋細胞では、頂端膜と細胞質内の紡錘形小胞がウロプラキンIa・Ib・II・IIIの4種の膜タンパク質からなる二次元結晶(板状構造)で覆われており、膀胱の伸展時には紡錘形小胞が頂端膜に融合しうること閲覧 2026-08-24
  2. 2.Role of membrane proteins in permeability barrier function: uroplakin ablation elevates urothelial permeability(American Journal of Physiology. Renal Physiology・2002)ウロプラキンIII欠損マウスの尿路上皮は経上皮電気抵抗(正常2,024±122、欠損2,322±114 Ω·cm²)が保たれる一方、頂端膜の水透過性が約2倍(0.91±0.06→1.83±0.14 ×10⁻⁵ cm/s)に上昇する。バリア機能は密着結合だけでなく頂端膜の膜タンパク質にも依存する閲覧 2026-08-24