組織病理学

組織病理学 · H2-072A

男性生殖器:セミノーマ

MALE GENITALIA Seminoma

描出疾患
精巣腫瘍

🧠 全体像:は若年〜中年男性に多い悪性で、均一な明調細胞、、の組合せが典型である。純粋ではは上昇せず、治療はまずを行い、その後は病期と再発リスクで経過観察・薬物療法・放射線療法を選ぶ。

発生と臨床像

  • 多くはを背景に発生する1。
  • 典型的には無痛性の片側精巣腫大・腫瘤で発見される。
  • 肉眼的には灰白色〜淡褐色、均質で比較的境界明瞭なとなる。
  • 純粋例では出血・壊死は少ない。目立つ出血・壊死やがあれば、成分を検索する。

💡 の呼び名と分類の枠組みは2016年に変わった。 2016年分類はの推奨用語を(GCNIS)に統一し、を「GCNIS由来群」と「GCNIS非関連群」という根本的に異なる2群に分けた。古い実習書にある精巣内(IGCNU)やは同じ病変を指す旧称で、試験では旧称で問われうる。もと改称され、GCNIS非関連群へ移されたので、通常のとは別物として扱う1。

組織像

所見 診断上の意味
大型で均一な腫瘍細胞 円形核、明瞭な核小体、細胞境界が明瞭
明るい細胞質 グリコーゲンを多く含む
胞巣・小葉状配列 で区画される
隔壁球 主体で、形質細胞を伴うことがある
一部で産生の原因となる
周囲の萎縮 腫瘍による圧迫や背景病変を反映しうる
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germ cell neoplasia in situ (GCNIS)'>胚細胞腫瘍性上皮内病変</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seminoma'>セミノーマ</span>"]
    B --> C["均一な明調細胞"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous septa'>線維性隔壁</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic infiltration'>リンパ球浸潤</span>"]
    C --> F["形態と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Immunophenotype'>免疫表現型</span>を統合"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["病期・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor markers'>腫瘍マーカー</span>評価"]

ではOCT3/4、、SOX17、KITなどが診断を補助する。形態に合わない場合は、、リンパ腫などを含めてパネルで評価する。

腫瘍マーカー

マーカー での解釈
純粋では上昇しない。明らかな上昇は成分を疑う
β- を伴う一部で上昇しうる
の補助指標だが特異的ではない

正常値でも腫瘍を除外できない。マーカーはの前後に測定し、半減期に沿った低下を病期評価へ組み込む。病理報告では、、精巣門軟部組織、精巣上体、精索、脈管への進展も評価する。

進展と治療

後腹膜リンパ節へ進展し、進行すると縦隔・頸部リンパ節や肺などへ広がる。遠隔転移はより遅い傾向があるが、に限るという意味ではない。

flowchart TD
    A["精巣内腫瘤を疑う"] --> B["超音波・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha-fetoprotein'>AFP</span>・β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactate dehydrogenase'>LDH</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>アプローチの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radical inguinal orchiectomy'>高位精巣摘除術</span>"]
    C --> D["病理・術後マーカー・胸腹骨盤画像で病期決定"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical stage (cTNM)'>臨床病期</span>"}
    E -->|"I期"| F["原則は厳密な経過観察<br>選択例で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carboplatin'>カルボプラチン</span>"]
    E -->|"IIA〜IIB期"| G["化学療法または放射線療法を個別選択"]
    E -->|"IIC期以上"| H["国際胚細胞癌共同分類に沿うシスプラチン併用療法"]

⚠️ がであることは重要だが、「手術後は一律に放射線療法」とはしない。I期ではを避けるため経過観察が標準的選択で2、は再発リスク、本人の希望、追跡可能性を踏まえて決める。腫瘍径4cm超と浸潤は再発リスクを高めるが(それぞれ1.59〜2.8、1.4〜1.7)、危険因子があっても大多数はだけで治癒するため、これらだけでの適応を機械的に決めない3。を疑う場合、経陰嚢生検は行わない。詳しくはを参照する。

の基本的な組織像は、本病変との形態比較はも参照する。

まとめ

  • 均一な明調細胞、、が典型像である。
  • 純粋では上昇しないが、β-は一部で上昇しうる。
  • 最初の治療・確定診断はアプローチのである。
  • だけで治療を固定せず、病期とを含めて選択する。

出典

  1. 1.The 2016 WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part A: Renal, Penile, and Testicular Tumours(European Urology(WHO 2015年チューリッヒ合意会議の要約)・2016)2016年WHO分類で、浸潤性胚細胞腫瘍の前駆病変の推奨用語が胚細胞腫瘍性上皮内病変(GCNIS)に統一され、精巣胚細胞腫瘍はGCNIS由来群とGCNIS非関連群という根本的に異なる2群に分けられた。精上皮腫(spermatocytic seminoma)は精母細胞性腫瘍(spermatocytic tumour)と改称され、GCNIS非関連群に移された。閲覧 2026-08-24
  2. 2.A nationwide cohort study of stage I seminoma patients followed on a surveillance program(European Urology・2014)デンマーク全国のI期セミノーマ1954例を追跡(追跡期間中央値15.1年)した結果、369例が中央値13.7か月で再発したが15年疾患特異的生存率は99.3%で、経過観察は補助療法に代わる安全な選択肢であった。腫瘍径が再発の有意な因子で、脈管侵襲または精巣上体浸潤も一方を除くと有意だった。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Testicular Tumour Size and Rete Testis Invasion as Prognostic Factors for the Risk of Relapse of Clinical Stage I Seminoma Testis Patients Under Surveillance: a Systematic Review by the Testicular Cancer Guidelines Panel(European Urology(EAU精巣腫瘍ガイドラインパネル)・2018)20研究の系統的レビューで、腫瘍径4cm超の再発ハザード比は1.59〜2.8(5年無再発生存率は4cm以下86.6〜95.5%に対し4cm超73.0〜82.6%)、精巣網浸潤ありのハザード比は1.4〜1.7(5年無再発生存率は非浸潤86.0〜92.0%に対し浸潤74.9〜79.5%)。ただし4cmというカットオフを正当化する根拠は乏しく、危険因子があっても大多数は高位精巣摘除術のみで治癒するため、これらを補助療法の適応判断へ日常的に用いることには慎重さが必要とされた。閲覧 2026-08-24