Histopathology

Histopathology · H2-125A

多発脳転移(組織像・鑑別編)

Metastasis multiplex cerebri

描出疾患
中枢神経系腫瘍(成人・小児)

🧠 全体像:多発脳転移の頻度・代表的な・単発/多発によるH2-139:多発脳転移悪性黒色腫による脳転移の肉眼・所見はH1-088:悪性黒色腫の脳転移で扱った。本項目では、標本を顕微鏡で観察したときに「これはである」と判断するための組織学的な手がかりと、との鑑別を整理する。

転移巣を示唆する低倍率所見

所見 解釈
境界明瞭な結節性病変 周囲しながら発育し、浸潤性境界に乏しいというに典型的な
への分布 血管径が急に変化する部位でが捕捉されやすいという、に特徴的な分布様式
多発性・両側性の病変 単一の播種イベントではなく、繰り返すを示唆する
病変周囲の による二次的な浮腫
病変内の出血・壊死 急速な増殖や血流の不均衡に伴う変化で、悪性黒色腫・などの転移で目立ちやすい
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発腫瘍</span>からの腫瘍細胞の血管内侵入"] --> B["動脈血流で脳へ到達"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gray-white matter junction'>灰白質・白質境界</span>の細い血管で捕捉"]
    C --> D["複数部位での結節性増殖"]
    D --> E["境界明瞭な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>性腫瘤"]
    E --> F["周囲<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vasogenic Edema'>血管原性浮腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>占拠効果</span>"]

原発性脳腫瘍との組織学的鑑別

多発性の造影増強病変を顕微鏡で確認する際、原発性の(とくに)や中枢神経系リンパ腫を区別する必要がある。

所見 原発性など)
腫瘍境界 周囲との境界が比較的明瞭 正常へ連続的に浸潤し境界が不明瞭
細胞形態 上皮性の胞巣・腺管様構造、によっては角化や色素産生を伴う 由来の、線維性突起を伴う
壊死パターン 壊死が多い 壊死が特徴的
サイト陽性、GFAP陰性が典型的 GFAP陽性、サイト陰性が典型的
周囲でも生じうるが、糸球体様の異常でより特徴的 が特徴的

⚠️ 「境界明瞭=転移」と単純化しない。のように境界明瞭にみえる原発性腫瘍もあり、逆にでも辺縁にわずかな浸潤性変化を示すことがある。既知の悪性腫瘍の既往、病変分布、を組み合わせて判断する。

頻度についての注意

剖検シリーズなどでは、のおよそ半数が転移性であるとされ、肺癌・乳癌・悪性黒色腫・消化管/大腸癌が代表的なとして挙げられる。ただしこの割合はや統計の取り方で変動しうる目安であり、個々の症例の確率を直接示すものではない。別の頻度・単発/多発によるH2-139:多発脳転移を参照する。

まとめ

  • に好発する境界明瞭な結節性病変として、周囲しながら発育する。
  • 病変周囲の、病変内の出血・壊死はで目立ちやすい所見である。
  • 原発性との鑑別は、腫瘍境界、壊死パターン( vs 偽柵状)、(サイト vs GFAP)を組み合わせて行う。
  • の約半数が転移性」という目安は集団統計であり、個々の症例の確定診断の代わりにはならない。
  • 別の頻度・治療アルゴリズムはH2-139:多発脳転移、悪性黒色腫の詳しい所見はH1-088:悪性黒色腫の脳転移を参照する。