Internal Medicine

Internal Medicine · H-10

抗リン脂質抗体症候群

Antiphospholipid syndrome

前提:病態
凝固系の過剰活性化に関連する病態
前提:正常
補体系
疾患
抗リン脂質抗体症候群

🧠 全体像は、持続する病原性(antiphospholipid antibody:)と、静脈・動脈・微小血管血栓または特徴的妊娠合併症を組み合わせて診断する自己免疫性血栓症である。抗体陽性だけではAPSではない。2023年ACR/EULAR基準は研究用分類基準であり、個々の患者の臨床診断を置き換えない。

病態と分類

はリン脂質そのものより、(β2-glycoprotein I:β2GPI)やなどリン脂質を標的とする。内皮細胞、単球、血小板、補体を活性化し、を形成する。

病型 定義
原発性APS 他の全身性自己免疫疾患を伴わない
二次性APS (SLE)などに合併
血栓性APS 静脈、動脈、または微小血管血栓を主体とする
産科APS 、胎児死亡、胎盤機能不全関連早産を主体とする
(CAPS) 短期間に多臓器の小血管血栓を来す生命危機

臨床像

抗体検査

検査 特徴
(LA) で検出。との関連が強い
IgG/IgM 中〜高力価の持続陽性を重視する
抗β2GPI抗体 IgG/IgM 免疫測定

感染などで一過性に陽性となるため、陽性は12週以上あけて再確認する。LA、aCL、抗β2GPIがすべて持続陽性の、LA陽性、高力価持続は高リスクプロファイルである。DOAC、ヘパリン、VKAはLA検査へ干渉するため、検査室・血液専門医と採血時期を調整する。

分類基準と臨床診断

flowchart TD
    A["血栓または特徴的妊娠合併症"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiphospholipid antibody'>aPL</span> 3項目を測定"]
    B --> C["陽性"]
    C --> D["12週以上あけて再検"]
    D --> E["持続陽性"]
    E --> F["画像・病理・妊娠歴と代替原因を評価"]
    F --> G["臨床的にAPSを診断"]
    G --> H["研究参加時は対応する分類基準を別途適用"]

2006年改訂Sapporo基準

歴史的に広く用いられ、研究分類では少なくとも1つの臨床項目と1つの検査項目を必要とする。

臨床項目 内容
血栓 画像または病理で確認された1回以上の動脈・静脈・小血管血栓
胎児死亡 形態正常胎児の妊娠10週以降の原因不明死亡1回以上
早産 重症・胎盤機能不全による34週未満の早産1回以上
早期流産 妊娠10週未満の原因不明流産3回以上

検査項目はLA、aCL IgG/IgM中〜高力価、抗β2GPI IgG/IgMのいずれかが12週以上の間隔で持続陽性であることを求める。

2023年ACR/EULAR分類基準

陽性と臨床事象の時間関係を入口とし、臨床・検査領域を重み付けして研究集団の特異度を高めた。これは「」ではなく、基準未達でも臨床的APSはあり得る。一方、基準を満たしても代替原因の検討は必要である。

治療

無症候性aPL陽性

喫煙、高血圧、脂質異常、エストロゲンなどなリスクを管理する。は、SLEや高リスクプロファイルなどで出血リスクを考慮して選択し、全陽性者へ一律投与しない。

血栓性APS

状況 原則
初回非誘発性静脈血栓 VKA、目標INR 2.0〜3.0で長期治療を基本に検討
動脈血栓 VKAを用い、INR強度や併用を再発・出血リスクで個別化
再発 服薬・INRを確認し、目標強度変更、アスピリン追加、LMWHなどを専門医と検討
・動脈APS DOAC、とくにを避け、VKAを選ぶ

DOACをAPS全体へ一律に使用しない。単一・低リスク抗体の静脈血栓でVKAが実行困難な例などは、エビデンスの限界を説明して専門医が個別判断する。

産科APS

妊娠を希望する場合は妊娠前から産科・血液・リウマチ診療を連携する。典型的産科APSではと予防量LMWHを用い、血栓既往があればを考える。VKAはのため妊娠中を避け、を継続する。

劇症型APS

CAPSはを要する。誘因治療、、副腎皮質ステロイドに加え、またはを組み合わせ、難治例では専門的免疫療法を検討する。

まとめ

  • APSは臨床事象と持続性を組み合わせて診断し、抗体陽性だけでは診断しない。
  • 陽性は12週以上あけて確認し、抗凝固薬によるLA検査干渉に注意する。
  • 2023年ACR/EULAR基準は研究用分類基準であり、臨床診断とは区別する。
  • 血栓性APSではVKAが中心で、・動脈APSではDOACを避ける。
  • 産科APSはとLMWH、CAPSは多面的な緊急治療を行う。